フリーランス法パンフレット最新版をわかりやすく解説|対象者・発注者の義務・禁止行為まとめ
フリーランス法パンフレット最新版をわかりやすく解説|対象者・発注者の義務・禁止行為まとめ
はじめに
フリーランスとして仕事を受ける人や、フリーランスへ業務を発注する企業は、「フリーランス法パンフレット」で制度の基本を確認できます。
フリーランス法は、報酬の未払い、一方的な減額、突然の契約解除、ハラスメントなどのトラブルを防ぎ、フリーランスが安定して働ける環境を整えるための法律です。正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、2024年11月1日に施行されました。中小企業庁+1
2026年6月時点では、厚生労働省の公式ページに掲載されているパンフレットは2026年4月28日更新です。法令や指針、Q&Aは随時更新されるため、古いPDFを保存している場合は、公式サイトに掲載されている最新版と照合することが大切です。厚生労働省
本記事では、フリーランス法パンフレット最新版をもとに、対象者、発注者の義務、禁止行為、実務上の注意点をわかりやすく解説します。
1. フリーランス法パンフレット最新版でわかること
1-1. フリーランス法パンフレットは誰向けの資料か
フリーランス法パンフレットは、主に次の人を対象とする資料です。
フリーランスとして企業や個人事業主から仕事を受ける人は、自分がどのように保護されるのかを確認できます。企業や個人事業主などの発注者は、契約時に明示すべき条件や、してはいけない行為を把握できます。
企業の法務、総務、経理、購買、制作、採用担当者にとっても重要です。実際の発注は現場担当者がメールやチャットで行うことが多いため、法務担当者だけでなく、フリーランスへ直接依頼する担当者まで内容を共有する必要があります。
1-2. パンフレットで確認できる主な内容
公式パンフレットでは、主に次の内容を確認できます。
法律上のフリーランスと発注者の定義
対象となる業務委託取引
取引条件の明示方法
報酬の支払期日に関するルール
発注者に禁止される7つの行為
募集情報の表示ルール
育児、介護等への配慮
ハラスメント対策
契約解除や不更新時の事前予告
違反が疑われる場合の申出先
重要なのは、すべての発注者に同じ義務が課されるわけではない点です。発注者が従業員を使用しているか、業務委託期間が1か月以上または6か月以上かによって、適用される義務や禁止行為が変わります。公正取引委員会+1
1-3. フリーランス法の正式名称と施行日
フリーランス法の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。「フリーランス・事業者間取引適正化等法」とも呼ばれます。
法律は2023年5月12日に公布され、2024年11月1日に施行されました。法律上、フリーランスは「特定受託事業者」、一定の条件を満たす発注者は「特定業務委託事業者」と表現されます。厚生労働省+1
1-4. まず押さえるべき「取引適正化」と「就業環境整備」の2つの目的
フリーランス法には、大きく分けて2つの目的があります。
「取引の適正化」は、取引条件を明確にし、報酬の支払遅延や減額などを防ぐためのルールです。取引条件の明示、支払期日の設定、7つの禁止行為などが該当します。
「就業環境の整備」は、フリーランスが安心して業務を続けられる環境をつくるためのルールです。募集情報の的確な表示、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策、契約解除時の事前予告などが含まれます。公正取引委員会+1
2. フリーランス法パンフレット最新版の入手方法
2-1. 公式パンフレットをダウンロードできる場所
フリーランス法パンフレットは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の公式サイトからダウンロードできます。
検索する際は、「フリーランス法 パンフレット 公正取引委員会」「フリーランス法 厚生労働省」など、行政機関名を含めると公式資料を見つけやすくなります。
検索結果に古い資料が表示される場合もあるため、PDFだけを直接開くのではなく、公式の案内ページに記載された更新日を確認しましょう。2026年6月時点で、厚生労働省のパンフレットは2026年4月28日更新、Q&Aは2025年12月26日更新となっています。厚生労働省
2-2. 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の資料の違い
公正取引委員会と中小企業庁は、主に取引条件の明示、報酬の支払い、禁止行為など「取引の適正化」に関する部分を担当しています。
厚生労働省は、募集情報、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策、契約解除の事前予告など「就業環境の整備」に関する部分を担当しています。中小企業庁+1
基本となる共同パンフレットの内容は共通していますが、各省庁のサイトでは、担当分野に応じたリーフレット、申出方法、解説資料などが追加掲載されています。
2-3. パンフレット・Q&A・ガイドラインの使い分け
パンフレットは、法律の全体像を短時間で把握するための資料です。最初に読む資料として適しています。
Q&Aは、「副業でも対象か」「チャットで発注してよいか」「契約期間をどう数えるか」といった具体的な疑問を調べるときに役立ちます。
ガイドラインや「法律の考え方」は、法律上の判断基準や具体例を詳しく確認するための資料です。契約内容を変更するとき、違反の可能性を判断するとき、社内ルールを整備するときは、パンフレットだけでなくQ&Aやガイドラインまで確認しましょう。公式ガイドラインは、取適法の施行を受けて2026年1月1日付で改定されています。厚生労働省+1
2-4. 古いパンフレットと最新版を見分けるポイント
古い資料と最新版を見分けるには、次の点を確認します。
まず、「2024年11月に施行予定」と書かれている資料は施行前のものです。現在は「2024年11月1日に施行」と記載された資料を使用します。
次に、掲載ページの更新日を確認します。PDFのファイル名が同じまま差し替えられる場合もあるため、保存日ではなく公式ページの更新日を見ることが重要です。
また、2026年1月1日から旧下請法は「中小受託取引適正化法」、通称「取適法」に名称と制度内容が変更されています。取適法との関係を確認する場合は、2026年以降の資料を参照しましょう。公正取引委員会+1
3. フリーランス法の対象者
3-1. 法律上の「フリーランス」とは
フリーランス法における「特定受託事業者」は、業務委託を受ける事業者のうち、次のいずれかに該当する者です。
個人の場合は、従業員を使用していないことが要件です。法人の場合は、代表者以外に役員がおらず、従業員を使用していないことが要件となります。公正取引委員会+1
ここでいう「従業員を使用」とは、原則として、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことです。短時間、短期間だけ臨時スタッフを雇う場合は、直ちに対象外になるとは限りません。厚生労働省+1
3-2. 対象となる業務委託の範囲
対象となるのは、事業者が自らの事業のために、フリーランスへ業務を委託するBtoB取引です。
具体的には、物品の製造や加工、デザイン・記事・映像・ソフトウェアなどの情報成果物の作成、運送・撮影・講師・コンサルティングなどの役務提供が含まれます。
一方、完成済みの商品を単純に購入する売買、事業目的ではない一般消費者からの依頼、車両やスペースを貸すだけの取引などは、原則としてフリーランス法上の業務委託には該当しません。公正取引委員会+1
3-3. 個人事業主・一人社長・副業フリーランスは対象になるか
従業員を使用していない個人事業主は、業種を問わず対象になり得ます。
一人社長も、代表者以外の役員がおらず、従業員を使用していなければ対象です。法人化しているだけで対象外になるわけではありません。
会社員が副業として業務委託を受ける場合も、委託先との関係ではフリーランス法の対象になり得ます。本業の勤務先に雇用されていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。厚生労働省+1
3-4. 対象外となるケース
主な対象外のケースは、次のとおりです。
受注者が法令上の基準を満たす従業員を使用している場合や、法人に代表者以外の役員がいる場合は、原則として「特定受託事業者」には該当しません。
また、契約書上は業務委託でも、仕事の進め方、指揮命令、勤務時間や場所の拘束などから、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合があります。その場合はフリーランス法ではなく、労働基準法などの労働関係法令が適用されます。厚生労働省+1
一般消費者が自宅の修理や写真撮影をフリーランスへ直接依頼するような、消費者と事業者の取引も原則として対象外です。
3-5. 下請法や労働関係法令との違い
旧下請法は2026年1月1日から取適法へ改正されました。取適法は、発注者と受注者の規模、委託する業務の種類などを基準に適用されます。
これに対し、フリーランス法は、受注者が従業員を使用しない個人や一人会社であることを主な基準としています。取引によっては、フリーランス法と取適法の両方が適用対象となることがあります。公正取引委員会+1
労働関係法令は、受注者が実質的に「労働者」といえる場合に適用されます。契約名が「業務委託契約」「請負契約」であっても、実態によって判断される点に注意が必要です。
4. 発注者に義務付けられること
発注者の義務は、発注者の組織体制と委託期間によって異なります。
すべての業務委託事業者には、取引条件の明示義務があります。従業員を使用する個人事業主や、複数の役員または従業員がいる法人には、報酬支払、募集情報、ハラスメント対策などの義務も課されます。
さらに、1か月以上の委託では7つの禁止行為、6か月以上の委託では育児・介護等への配慮と中途解除等の事前予告が適用されます。公正取引委員会+1
4-1. 取引条件の明示義務
発注者は、フリーランスへ業務委託をした場合、直ちに書面または電子メール、チャット、SNSのメッセージなどの電磁的方法で取引条件を明示しなければなりません。口頭だけの発注では不十分です。公正取引委員会+1
明示事項には、業務内容、報酬額、支払期日、当事者名、発注日、納期、納品場所、検査完了日などが含まれます。
委託時点で決められない事項がある場合は、決められない理由と決定予定日を明示し、内容が決まったら直ちに追加で明示する必要があります。公正取引委員会
4-2. 報酬支払期日の設定と60日以内の支払い
一定の組織要件を満たす発注者は、成果物を受領した日や役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を設定し、その日までに報酬を支払わなければなりません。
検収や社内処理が終わっていないことを理由に、支払期日を60日より後へ延ばすことはできません。
元請事業者から受けた業務をフリーランスへ再委託する場合は、所定の事項を明示することで、元委託の支払期日から30日以内に支払期日を設定できる例外があります。ただし、元委託者からの入金が遅れたことを理由に、フリーランスへの支払いを遅らせることはできません。公正取引委員会+1
4-3. 募集情報の的確表示義務
広告、Webサイト、SNS、クラウドソーシングサービスなどでフリーランスを募集する場合、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示は禁止されています。掲載内容は、正確かつ最新の状態に保つ必要があります。公正取引委員会+1
SNSなどを通じて募集する場合は、少なくとも次の6項目を記載しなければなりません。
募集者の氏名または名称
住所または所在地
連絡先
業務内容
業務に従事する場所
報酬
これらを欠く募集情報は、誤解を生じさせる表示として法違反になると厚生労働省が示しています。厚生労働省+1
4-4. 育児・介護等への配慮義務
6か月以上の業務委託では、フリーランスから妊娠、出産、育児または介護との両立について申出があった場合、発注者は必要な配慮をしなければなりません。
例えば、打ち合わせ日の変更、納期の調整、オンライン作業への切り替えなどが考えられます。希望どおりの配慮が困難な場合でも、申出内容を確認し、対応可能な選択肢を検討したうえで、実施できない理由を説明する必要があります。
6か月未満の委託でも、必要な配慮を行うよう努める義務があります。公正取引委員会+1
4-5. ハラスメント対策に関する体制整備
発注者は、フリーランスに対するセクシュアルハラスメント、妊娠・出産に関するハラスメント、優越的な関係を背景とした言動などを防ぐため、必要な体制を整備しなければなりません。
具体的には、ハラスメントを許さない方針の明確化、相談窓口の設置と周知、相談があった場合の事実確認、行為者への対応、再発防止、相談者のプライバシー保護などが求められます。
相談したことを理由に、契約を解除したり、発注を減らしたりする不利益な取扱いも認められません。公正取引委員会
4-6. 中途解除・契約不更新時の事前予告と理由開示
6か月以上の継続的な業務委託を中途解除する場合や、更新しない場合、発注者は原則として解除日または契約満了日の30日前までに予告しなければなりません。
予告後から契約満了までの間にフリーランスが理由の開示を求めた場合、発注者は原則として遅滞なく理由を開示する必要があります。
予告や理由開示は、書面、ファックス、電子メール、相手を特定して送信できるSNSのメッセージなどで行います。災害などの例外事由がある場合を除き、口頭だけで済ませることはできません。公正取引委員会
5. フリーランス法で禁止される発注者の行為
7つの禁止行為は、原則として、従業員を使用する発注者などがフリーランスへ1か月以上の業務委託をする場合に適用されます。
フリーランスが同意していたとしても、法律上禁止される行為が適法になるわけではありません。発注者に違反の認識がなくても問題になる可能性があります。公正取引委員会
5-1. 受領拒否
フリーランスに責任がないのに、納品された物品や情報成果物を受け取らない行為です。
発注者の顧客からキャンセルされた、企画が中止になった、不要になったといった発注者側の事情による拒否も含まれます。一方的に納期を延期し、本来の納期に受け取らない行為も受領拒否に該当する可能性があります。公正取引委員会
5-2. 報酬の減額
フリーランスに責任がないのに、発注時に定めた報酬から金額を差し引く行為です。
「協力金」「事務手数料」など名称を変えても、実質的に報酬を減らせば違反になり得ます。発注者側が負担すべき振込手数料を、一方的に報酬から差し引く行為にも注意が必要です。公正取引委員会+1
5-3. 返品
フリーランスに責任がないのに、一度受領した物品や情報成果物を引き取らせる行為です。
売れ残った、発注者の顧客がキャンセルした、企画が終了したといった事情だけでは、正当な返品理由になりません。公正取引委員会+1
5-4. 買いたたき
通常支払われる対価と比べて、著しく低い報酬を不当に定める行為です。
単に相場より安いだけで直ちに違反となるわけではありませんが、十分な協議があったか、業務内容や納期に見合っているか、原材料費や人件費の変動を考慮しているかなどから総合的に判断されます。
短納期や追加作業を求めながら報酬を据え置く場合も、買いたたきに該当する可能性があります。公正取引委員会+1
5-5. 購入・利用強制
正当な理由がないのに、発注者が指定する商品やサービスをフリーランスへ購入・利用させる行為です。
自社商品の購入、イベントチケットの買い取り、有料サービスへの加入などを、取引上の立場を利用して事実上断れない状態で求めることも含まれます。公正取引委員会+1
5-6. 不当な経済上の利益提供要請
発注者のために、金銭、労務、知的財産権などを無償または不当に提供させ、フリーランスの利益を害する行為です。
契約に含まれていない作業を無料で行わせる、採用しなかった制作物の著作権まで無償で譲渡させる、協賛金を負担させるといったケースが考えられます。公正取引委員会+1
5-7. 不当な給付内容の変更・やり直し
フリーランスに責任がないのに、発注内容を変更したり、納品後にやり直しを求めたりして、その費用を負担しない行為です。
発注者側の顧客の意向や企画変更によって修正が必要になった場合は、追加作業に要する費用を発注者が適切に負担する必要があります。一方的な発注取消しで、すでに発生した作業費や材料費を支払わない行為も問題になります。公正取引委員会
6. フリーランスがパンフレットで確認すべきポイント
6-1. 契約前に確認すべき取引条件
業務を始める前に、少なくとも次の内容を確認しましょう。
業務内容、成果物の仕様、修正回数、納期、納品方法、検収基準、報酬額、消費税の扱い、経費負担、支払期日、著作権などの知的財産権、契約解除条件です。
「詳細は後で決める」「報酬は完成後に相談」といった状態で作業を始めると、トラブルが起きやすくなります。発注者から明示がない場合は、メールやチャットで確認し、回答を保存しておきましょう。
6-2. 報酬未払い・減額があった場合の確認事項
報酬が支払われない場合は、納品日または役務提供日、支払期日、請求書の送付日、発注者が成果物を受領した日を確認します。
減額された場合は、当初合意した報酬額と、実際の入金額の差額、減額理由、発注者からの説明を記録しましょう。
請求書の不備や検収の遅れだけでなく、発注者側の資金繰りや顧客からの未入金を理由に支払いが遅れている場合も、フリーランス法違反となる可能性があります。
6-3. 突然の契約解除・更新拒否への備え
継続取引では、基本契約書、個別発注書、契約更新履歴、過去の発注間隔を保存しておきましょう。
6か月以上続いている取引を突然解除された場合は、30日前の予告があったかを確認します。更新拒否の理由が不明な場合は、書面やメールで理由の開示を求めます。
発注者の都合で作業途中に契約が打ち切られた場合は、それまでに行った作業、購入した材料、外注費などの記録も整理しておくことが重要です。
6-4. ハラスメントや募集条件の相違がある場合の対応
募集広告と実際の報酬や業務内容が異なる場合は、募集ページのスクリーンショットを保存し、どの条件が変更されたのかを発注者へ確認します。
ハラスメントがあった場合は、発言内容、日時、場所、関係者、業務への影響をできるだけ具体的に記録しましょう。発注者に相談窓口が設置されている場合は、記録が残る方法で相談します。
相談したことを理由に契約解除や報酬減額などの不利益な取扱いを受けた場合も、その経緯を保存してください。
6-5. 相談・申出をする前に準備しておきたい証拠
行政機関や弁護士に相談するときは、次の資料が役立ちます。
契約書、基本契約書、発注書
メールやチャットの履歴
募集広告のスクリーンショット
見積書、請求書、納品書
成果物と納品記録
修正や仕様変更の指示
入金履歴や銀行口座の明細
契約解除通知
ハラスメントの日時や内容を記したメモ
事実関係を時系列に整理し、「いつ、誰が、何を発注し、どのような問題が起きたか」を説明できる状態にしておくと、相談が進みやすくなります。
7. 発注者がパンフレットで確認すべき実務対応
7-1. 業務委託時に明示すべき項目
発注者は、原則として次の9項目を明示します。
発注者とフリーランスの名称
業務委託をした日
業務や成果物の内容
成果物を受領する日、または役務提供を受ける日
受領場所または役務提供場所
検査を行う場合の検査完了日
報酬額
支払期日
現金以外で支払う場合の支払方法に関する事項
著作権などを譲渡または利用許諾させる場合は、その範囲と対価も明確にします。報酬額を委託時に確定できない場合は、客観的に金額が決まる算定方法を示す必要があります。公正取引委員会+1
7-2. 契約書・発注書・メールでの明示方法
すべての条件を1通の契約書にまとめる必要はありません。基本契約書と個別発注書、見積書と発注メールなど、複数の文書を組み合わせることも可能です。
ただし、どの文書がどの発注に対応しているのかが明確でなければなりません。「前回と同じ条件」とだけ記載するのではなく、参照する契約書や条件の名称、日付、有効期間を特定します。
チャットでの明示も可能ですが、メッセージを後から確認・保存できる状態にしておく必要があります。口頭で発注した後にメールで確認内容を送る運用でも、業務委託時に直ちに明示することが重要です。
7-3. 社内で整備すべき発注フロー
発注者は、次のような流れを社内で統一すると、違反リスクを抑えられます。
まず、受注者がフリーランス法上の対象者かを確認します。次に、委託期間が1か月以上または6か月以上になるかを判定します。
そのうえで、所定の発注書を発行し、発注条件を保存します。仕様変更や追加作業が発生した場合は、変更内容、追加報酬、納期を改めて明示します。
納品後は受領日を記録し、その日を基準に支払期限を管理します。契約解除や不更新を行う場合は、30日前予告が必要かを確認します。
7-4. 禁止行為を防ぐチェックリスト
発注担当者は、発注や契約変更の前に、次の点を確認しましょう。
発注条件を口頭だけで伝えていないか
支払期日が受領日から60日を超えていないか
振込手数料などを一方的に差し引いていないか
追加作業を無償で依頼していないか
発注者都合のキャンセル費用を負担しているか
市場価格や作業量を考慮せず報酬を決めていないか
自社商品やサービスの購入を求めていないか
募集情報が実際の条件と一致しているか
ハラスメント相談窓口をフリーランスへ周知しているか
契約解除の予告期間を確認したか
フリーランス本人が同意していることだけで、禁止行為の問題が解消されるとは限りません。
7-5. 違反リスクが高い契約変更・検収・支払い対応
特にリスクが高いのは、業務開始後の仕様変更です。作業範囲を増やす場合は、追加報酬と納期を協議し、書面やメールで明示します。
検収基準を納品後に厳しくしたり、明確な基準を示さず何度も修正させたりすることも避けなければなりません。
支払期日は、請求書を受け取った日ではなく、原則として給付を受領した日などを基準に管理します。「月末締め、翌々月末払い」の運用では、受領日によって60日を超える可能性があるため注意が必要です。
実際に公正取引委員会は、契約書や発注書の記載、発注方法、支払期日の定め方などについて、フリーランスとの取引が多い事業者へ是正指導を行っています。公正取引委員会
8. フリーランス法パンフレットに関するよくある質問
8-1. 契約書があれば取引条件の明示は十分か
契約書に法律上必要な事項がすべて記載され、業務委託時にフリーランスへ交付されていれば、明示義務を満たせる可能性があります。
ただし、具体的な業務内容、納期、報酬などが個別発注ごとに決まる場合、基本契約書だけでは不十分です。個別の発注書やメールで不足する事項を明示する必要があります。
8-2. 口頭発注やチャットでの依頼は問題ないか
口頭だけの発注は、取引条件の明示義務を満たしません。
チャットやSNSのメッセージは、発注者と受注者を特定でき、内容を保存して確認できる方法であれば、電磁的方法による明示として利用できます。公正取引委員会+1
ただし、「これお願い」「金額はいつもどおり」といった曖昧なメッセージでは、必要事項を明示したことにならない可能性があります。
8-3. 継続取引だけでなく単発依頼も対象になるか
単発の依頼でも、取引条件の明示義務や、発注者の要件によっては報酬支払義務、募集情報の的確表示義務、ハラスメント対策が適用されます。
一方、7つの禁止行為は原則として1か月以上の業務委託、育児・介護等への配慮と契約解除の事前予告は6か月以上の業務委託が対象です。
そのため、「単発だからフリーランス法は関係ない」と判断するのは誤りです。公正取引委員会+1
8-4. 発注者が個人事業主の場合も対象になるか
発注者が個人事業主でも、事業のためにフリーランスへ業務委託をすれば、取引条件の明示義務が課されます。
その個人事業主が従業員を使用している場合は、「特定業務委託事業者」として、報酬支払、禁止行為、募集情報、ハラスメント対策など、より広い義務の対象となります。公正取引委員会+1
従業員を使用していないフリーランス同士の取引でも、発注する側には取引条件の明示義務があります。
8-5. トラブルが起きたときはどこに相談すればよいか
取引条件の不明示、報酬未払い、減額、受領拒否など、取引の適正化に関する問題は、公正取引委員会または中小企業庁が担当します。
募集情報、育児・介護等への配慮、ハラスメント、契約解除の事前予告など、就業環境の整備に関する問題は、都道府県労働局の雇用環境・均等部または雇用環境・均等室が担当します。
フリーランス法違反が疑われる場合は、行政機関の共通オンライン窓口から申出ができます。ただし、行政機関は当事者間の損害賠償や和解を直接仲介する窓口ではありません。中小企業庁+1
契約上、仕事上のトラブルについて弁護士へ相談したい場合は、厚生労働省委託事業の「フリーランス・トラブル110番」を無料で利用できます。厚生労働省
まとめ
フリーランス法パンフレットは、フリーランスと発注者の双方が、取引ルールを確認するための基本資料です。
発注者は、まず取引条件を書面やメールなどで明示し、受領日から原則60日以内に報酬を支払う必要があります。一定期間以上の委託では、受領拒否、減額、返品、買いたたきなどの7つの行為が禁止され、育児・介護等への配慮や契約解除の事前予告も求められます。
フリーランスは、契約書だけでなく、発注メール、チャット、納品記録、請求書、入金履歴などを保存しておくことが重要です。発注者は、契約書を整備するだけでなく、現場担当者が正しい手順で発注、変更、検収、支払いを行える社内フローを構築する必要があります。
公式パンフレットやQ&Aは更新されるため、過去に保存した資料だけに頼らず、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の公式ページで最新版を確認しましょう。

