フリーランス新法の対象「特定受託事業者」とは?自分が該当するか・発注者の義務・トラブル対策をわかりやすく解説

はじめに

フリーランスとして仕事を受けていると、「自分はフリーランス新法の対象になるのか」「発注者にどこまで求めてよいのか」「報酬未払い・突然の契約終了にどう対応すべきか」と迷う場面があります。特に重要なのが、法律上の保護対象を示す「特定受託事業者」という言葉です。

フリーランス新法は、個人や一人会社などで業務委託を受けるフリーランスと、発注事業者との間に生じやすい取引条件の不明確さ、報酬未払い、買いたたき、ハラスメントなどを防ぐための法律です。令和6年11月1日に施行され、取引条件の明示、報酬支払期日の設定、ハラスメント対策などが発注者に義務付けられています。mhlw.go.jp+1

この記事では、「特定受託事業者」とは誰を指すのか、自分が該当するかを判断するチェックポイント、発注者の義務、トラブル時の対応までをわかりやすく整理します。

1. フリーランス新法と「特定受託事業者」の基本をわかりやすく解説

1-1. フリーランス新法とは何か

フリーランス新法とは、フリーランスと発注事業者の間の業務委託取引を適正化し、フリーランスが安心して働ける環境を整えるための法律です。

ポイントは大きく2つあります。1つ目は「取引の適正化」です。発注者に対して、業務内容、報酬、支払期日などの取引条件を明示させ、報酬の減額や受領拒否などを防ぎます。2つ目は「就業環境の整備」です。募集情報の正確な表示、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策、一定期間続く契約の中途解除時の予告などを求めます。公正取引委員会+1

1-2. 正式名称は「フリーランス・事業者間取引適正化等法」

一般には「フリーランス新法」と呼ばれることが多いですが、法律名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。厚生労働省などでは「フリーランス・事業者間取引適正化等法」という名称でも案内されています。mhlw.go.jp+1

つまり、「フリーランス新法」「フリーランス・事業者間取引適正化等法」「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」は、基本的に同じ法律を指して使われます。検索するときは、これらの名称をあわせて確認すると情報を見つけやすくなります。

1-3. フリーランス新法ができた背景

フリーランスは、働く時間や場所を柔軟に選べる一方で、発注者との交渉力や情報量に差が生じやすい立場です。そのため、報酬が支払われない、契約内容があいまいなまま追加作業を求められる、発注が一方的に取り消される、ハラスメントを受けるといったトラブルが起きやすいとされています。公正取引委員会+1

フリーランス新法は、こうした不利な状況を改善し、個人が事業者として安定的に業務へ従事できる環境をつくることを目的としています。

1-4. フリーランス新法で守られる人・義務を負う人の全体像

フリーランス新法で守られる側の中心が「特定受託事業者」です。簡単にいうと、業務委託を受ける事業者で、従業員を使用していない個人または一定の一人法人を指します。

一方、義務を負う側は「業務委託事業者」または「特定業務委託事業者」です。業務委託事業者は、特定受託事業者に業務委託をする事業者を指します。特定業務委託事業者は、そのうち従業員を使用する個人事業者や、2人以上の役員がいる法人、または従業員を使用する法人などを指します。公正取引委員会+1

1-5. 「特定受託事業者」を理解することが重要な理由

「フリーランス」と名乗っているだけでは、必ずフリーランス新法の保護対象になるとは限りません。法律上は「特定受託事業者」に該当するかどうかが重要です。

たとえば、従業員を雇っている個人事業主、複数役員の法人、消費者向けに商品を販売しているだけの人は、一般的にはフリーランスと呼ばれることがあっても、取引内容によってはフリーランス新法の対象外になります。自分が特定受託事業者に該当するかを知っておくことで、発注者に取引条件の明示や適正な支払いを求める根拠を整理しやすくなります。

2. 特定受託事業者とは?法律上の定義をわかりやすく整理

2-1. 特定受託事業者の意味

特定受託事業者とは、「業務委託の相手方である事業者」であり、次のいずれかに該当する人・法人をいいます。

区分特定受託事業者に該当する条件
個人従業員を使用しない個人事業主など
法人代表者が1人で、他に役員がなく、従業員を使用しない法人

この定義からわかるように、特定受託事業者は個人だけではありません。一人社長の法人やマイクロ法人でも、要件を満たせば対象になります。公正取引委員会+1

2-2. 個人事業主・一人社長・法人フリーランスは対象になる?

個人事業主は、従業員を使用せず、事業者から業務委託を受けていれば、特定受託事業者に該当する可能性が高いです。

一人社長や法人フリーランスも、代表者以外に役員がおらず、従業員を使用していなければ対象になります。たとえば、法人化しているWebデザイナー、エンジニア、ライター、コンサルタント、映像制作者なども、業務委託の相手方として仕事を受けている場合は、特定受託事業者に該当し得ます。

ただし、法人に代表者以外の取締役や監査役などがいる場合は、原則としてこの要件から外れます。

2-3. 「従業員を使用しない」とはどういう意味か

「従業員を使用する」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上継続して雇用される見込みの労働者を雇うことをいいます。短時間・短期間だけ雇う人は、ここでいう「従業員」には含まれません。公正取引委員会

また、派遣先としてこの基準を満たす派遣労働者を受け入れる場合も、「従業員を使用」に該当します。一方、事業に同居親族のみを使用している場合は、「従業員を使用」に該当しないとされています。公正取引委員会

2-4. 「業務委託の相手方である事業者」が対象になる

特定受託事業者は、あくまで「業務委託の相手方である事業者」です。事業者から事業のために仕事を委託される取引が対象であり、単なる消費者向け販売や、個人の消費目的の依頼は対象外になりやすいです。

たとえば、企業が宣材写真の撮影をフリーランスカメラマンに依頼する場合は対象になり得ます。一方、一般消費者が家族写真の撮影を依頼する場合は、事業者からの委託ではないため対象外と整理されています。また、フリーランスが自作の写真集をネットで販売するような取引は、委託ではなく売買に近いため対象外です。公正取引委員会

2-5. 特定受託業務従事者との違い

「特定受託事業者」と似た言葉に「特定受託業務従事者」があります。

特定受託事業者は、業務委託を受ける事業者そのものを指します。個人事業主であればその個人、法人であればその法人です。一方、特定受託業務従事者は、特定受託事業者である個人、または特定受託事業者である法人の代表者を指します。公正取引委員会

たとえば、一人会社が仕事を受ける場合、契約主体としての会社が「特定受託事業者」、実際に業務に従事する代表者が「特定受託業務従事者」です。ハラスメント対策や育児・介護等への配慮では、この「業務に従事する人」の保護が重要になります。

2-6. 一般的な「フリーランス」と法律上の「特定受託事業者」の違い

一般的な意味のフリーランスは、会社に雇用されずに独立して仕事をする人を広く指します。しかし、法律上の特定受託事業者は、より限定された概念です。

比較項目一般的なフリーランス法律上の特定受託事業者
意味独立して働く人の総称フリーランス新法の対象となる受注事業者
従業員の有無従業員がいても呼ばれることがある原則として従業員を使用しない
法人化法人も個人も含めて呼ばれることがある一人法人など一定要件を満たす法人のみ
取引相手消費者向け取引も含まれやすい事業者からの業務委託が中心

この違いを押さえると、「フリーランスなのに対象外になるケース」「法人化していても対象になるケース」を判断しやすくなります。

3. 自分は特定受託事業者に該当する?ケース別チェックリスト

3-1. 個人事業主として仕事を受けている場合

個人事業主として、企業や個人事業者から業務委託で仕事を受けており、従業員を使用していない場合は、特定受託事業者に該当する可能性が高いです。

たとえば、ライター、デザイナー、エンジニア、動画編集者、カメラマン、翻訳者、講師、配送員、一人親方、美容師、コンサルタントなどは、業種に関係なく対象になり得ます。法律上、対象業種に限定はありません。公正取引委員会

3-2. 副業フリーランスの場合

会社員として本業がある人でも、副業として他の事業者から業務委託を受けている場合、その副業の範囲では特定受託事業者に該当し得ます。公正取引委員会

たとえば、平日は会社員として働き、夜や休日に企業からWeb制作や記事作成を請け負う場合です。ただし、副業先との関係で実態が雇用に近い場合は、フリーランス新法ではなく労働関係法令の問題として判断されることがあります。

3-3. 一人会社・マイクロ法人で仕事を受けている場合

一人会社やマイクロ法人で仕事を受けている場合も、代表者以外に役員がなく、従業員を使用していなければ特定受託事業者に該当し得ます。

たとえば、合同会社や株式会社を設立していても、実態として代表者1人で業務を行い、従業員も他の役員もいない場合です。法人化しているからといって、自動的にフリーランス新法の対象外になるわけではありません。

3-4. 従業員や役員がいる場合

従業員を使用している個人事業主は、特定受託事業者には該当しません。法人の場合も、代表者以外に役員がいる、または従業員を使用している場合は、原則として特定受託事業者から外れます。

ただし、短時間・短期間の一時的な雇用や、同居親族のみを使用している場合など、法律上の「従業員を使用」に当たらないケースもあります。判断に迷う場合は、雇用時間、雇用見込み期間、雇用関係の有無を確認しましょう。公正取引委員会

3-5. クラウドソーシング・業務委託契約で仕事を受ける場合

クラウドソーシングやマッチングサービスを通じて仕事を受ける場合も、実質的に誰が業務を委託しているかによって判断されます。

プラットフォームが単に発注者と受注者を仲介しているだけなら、発注者が業務委託事業者になります。一方、プラットフォーム側が実質的に業務内容、受注者の選定、報酬決定などに関与し、受注者に業務委託していると評価される場合は、プラットフォームが業務委託事業者になることがあります。公正取引委員会

3-6. 業務委託ではなく雇用契約の場合

雇用契約で働いている場合は、フリーランス新法ではなく、労働基準法などの労働関係法令が中心になります。

また、契約書に「業務委託」「請負」「準委任」と書かれていても、実態として勤務時間・場所の拘束が強い、業務指示に従う関係がある、報酬が労務提供の対価といえるなど、労働者性が認められる場合は、労働関係法令の適用が問題になります。契約名だけで判断されるわけではありません。公正取引委員会

3-7. 企業ではなく個人から依頼を受ける場合

個人から依頼を受けた場合でも、その個人が「事業者として」依頼しているなら、フリーランス新法の対象になり得ます。たとえば、個人事業主が自分の店舗のロゴ制作を依頼する場合は、事業のための委託と考えられます。

一方、一般消費者が私的な目的で依頼する場合は、対象外になりやすいです。たとえば、個人が自宅用のイラストや家族写真を依頼するようなケースです。公正取引委員会+1

3-8. 該当するか迷いやすいケース一覧

ケース特定受託事業者に該当する可能性
従業員なしの個人事業主が企業から制作業務を受ける高い
会社員が副業で企業から業務委託を受ける高い
一人法人で代表者以外の役員・従業員がいない高い
アルバイトを週20時間以上・31日以上雇う見込み低い
短期・短時間の手伝いだけを依頼している判断余地あり
同居親族のみが事業を手伝っている対象になり得る
消費者から私的な依頼を受ける低い
実態が雇用に近い労働法の対象になり得る

迷ったときは、「誰から」「何のために」「どの契約形態で」「従業員や役員がいるか」を順番に確認しましょう。

4. フリーランス新法の対象になる取引・ならない取引

4-1. 対象になる「業務委託」とは

フリーランス新法の対象になる業務委託とは、事業者がその事業のために、他の事業者へ物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供を委託することです。公正取引委員会

ポイントは、発注者が「事業者」であり、「事業のため」に委託することです。契約書のタイトルが「業務委託契約」かどうかだけではなく、実際の取引内容で判断します。

4-2. 物品の製造・加工の委託

物品の製造・加工の委託とは、発注者が仕様、品質、性能、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、物品の製造や加工を依頼することです。

たとえば、オリジナルグッズの制作、部品加工、店舗什器の製作、特注商品の製造などが考えられます。既製品をそのまま購入するだけなら原則として委託ではありませんが、既製品に加工や仕様変更を依頼する場合は委託に該当し得ます。公正取引委員会

4-3. 情報成果物の作成委託

情報成果物の作成委託とは、ソフトウェア、映像、音声、文章、デザイン、図面、イラスト、楽曲などの作成を依頼することです。

たとえば、Webサイト制作、アプリ開発、記事執筆、ロゴ制作、動画編集、広告バナー制作、研修資料作成などが該当します。既存のパッケージソフトを購入するだけなら原則として委託ではありませんが、自社向けに仕様変更を依頼する場合は委託に該当し得ます。公正取引委員会

4-4. 役務提供の委託

役務提供の委託とは、サービスや作業を提供してもらうことです。たとえば、配送、清掃、修理、コンサルティング、講師業務、営業代行、事務代行、撮影、翻訳、保守運用などが考えられます。

発注者が自社で利用するためのサービスであっても、事業のために役務内容を指定して依頼する場合は、フリーランス新法上の業務委託に該当し得ます。公正取引委員会

4-5. 対象外になりやすい取引

対象外になりやすいのは、次のような取引です。

対象外になりやすい取引理由
一般消費者からの私的な依頼事業者からの委託ではない
自作商品を不特定多数に販売する委託ではなく売買に近い
既製品をそのまま販売する製造・作成・役務提供の委託ではない
車やスペースの単純な貸出し仕様を指定した業務委託ではない
純粋な無償活動事業のための委託といえない場合がある
雇用契約労働関係法令の対象になる

ただし、実際の判断は取引内容によります。名目が販売や紹介でも、実質的に発注者が仕様や内容を指定して成果物や役務を求めている場合は、業務委託と判断される可能性があります。

4-6. 下請法・独占禁止法・労働基準法との違い

フリーランス新法は、フリーランスと発注事業者の業務委託取引に特化した法律です。

下請法は2026年1月1日から改正法が施行され、現在は「中小受託取引適正化法」、通称「取適法」として案内されています。取適法は、一定の委託取引における中小受託事業者の保護を目的とする法律です。一方、フリーランス新法は、従業員を使用しない個人や一人法人など、特定受託事業者との取引を対象にしています。公正取引委員会+1

独占禁止法は、優越的地位の濫用などを幅広く規制する法律です。労働基準法は、労働者を保護する法律です。フリーランスであっても実態が労働者に当たる場合は、フリーランス新法だけでなく労働関係法令の問題になります。公正取引委員会

4-7. 契約書がなくてもフリーランス新法の対象になる?

契約書がないからといって、フリーランス新法の対象外になるわけではありません。発注者が特定受託事業者に業務委託をした場合、取引条件を直ちに書面またはメール、SNSメッセージなどの電磁的方法で明示する義務があります。口頭だけの明示は適切ではありません。公正取引委員会

つまり、契約書がない取引ほど、発注者には条件を明確に示す必要があります。フリーランス側も、口約束だけで進めず、メールやチャットで業務内容、報酬、納期、支払日を残しておくことが重要です。

5. 発注者の種類と義務の範囲

5-1. 業務委託事業者とは

業務委託事業者とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者です。法人だけでなく、個人事業者も含まれます。

業務委託事業者に当たる場合、まず重要なのが取引条件の明示義務です。たとえ発注者自身も従業員を使用しない小規模な個人事業者であっても、特定受託事業者に業務委託をするなら、取引条件を明示する必要があります。公正取引委員会+1

5-2. 特定業務委託事業者とは

特定業務委託事業者とは、業務委託事業者のうち、次のいずれかに該当する発注者です。

区分特定業務委託事業者に該当する条件
個人従業員を使用している
法人2人以上の役員がいる、または従業員を使用している

特定業務委託事業者になると、取引条件の明示に加えて、報酬支払期日の設定、報酬減額などの禁止、募集情報の正確な表示、ハラスメント対策など、より広い義務が課されます。公正取引委員会+1

5-3. 発注者の規模や契約期間で義務が変わる

フリーランス新法では、発注者の属性や業務委託期間によって義務の範囲が変わります。

たとえば、取引条件の明示は、特定受託事業者に業務委託をするすべての業務委託事業者に求められます。一方、7つの禁止行為は、特定業務委託事業者が1か月以上の業務委託をする場合に問題になります。育児・介護等への配慮や中途解除の事前予告は、6か月以上の継続的な業務委託で特に重要になります。公正取引委員会+1

5-4. すべての発注者に求められる義務

特定受託事業者に業務委託をする発注者に広く求められるのが、取引条件の明示です。

発注者は、業務委託をしたら直ちに、書面または電磁的方法で、給付・役務の内容、報酬額、支払期日、委託日、納期、場所などを明示する必要があります。メールやチャットで明示することは可能ですが、口頭だけでは不十分です。公正取引委員会

5-5. 一定の発注者に追加で求められる義務

特定業務委託事業者には、追加で次のような義務が課されます。

義務・禁止事項主な内容
報酬支払期日の設定・支払い受領日から原則60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定め、期日内に支払う
禁止行為受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な利益提供要請、不当な変更・やり直し
募集情報の的確表示虚偽表示や誤解表示をせず、正確・最新に保つ
育児・介護等への配慮6か月以上の継続的業務委託では申出に応じて必要な配慮を行う
ハラスメント対策相談体制の整備など必要な措置を講じる
中途解除等の予告6か月以上の継続的業務委託では原則30日前までに予告する

これらの義務は、発注者側の社内体制や契約管理にも大きく関わります。公正取引委員会+1

5-6. フリーランス側が確認すべき発注者情報

フリーランス側は、契約前に次の情報を確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。

確認項目確認する理由
発注者の正式名称・所在地・連絡先請求・連絡・相談時に必要
契約主体企業本体、代理店、プラットフォームなどを明確にする
担当者名と権限合意した相手が契約権限を持つか確認する
従業員や役員の有無発注者が特定業務委託事業者に当たるか判断しやすい
支払担当部署請求書送付先や支払日を確認する
相談窓口ハラスメントや契約トラブル時の連絡先になる

特にクラウドソーシングや紹介経由の案件では、誰が発注者なのかがあいまいになりやすいため、契約主体を明確にしておきましょう。

6. 発注者に課される主な義務をわかりやすく解説

6-1. 取引条件を明示する義務

発注者は、特定受託事業者へ業務委託をした場合、直ちに取引条件を明示しなければなりません。明示すべき主な事項は、業務委託事業者と特定受託事業者の名称、業務委託日、給付・役務の内容、納期・提供日、場所、報酬額、支払期日、検査をする場合の検査完了日、現金以外で支払う場合の支払方法などです。公正取引委員会+1

フリーランス側は、契約前にこれらの項目が書面、メール、チャットなどで明示されているかを確認しましょう。

6-2. 報酬の支払期日を定めて期日内に支払う義務

特定業務委託事業者は、発注した物品や成果物を受け取った日、または役務提供を受けた日から起算して原則60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、期日までに報酬を支払う必要があります。公正取引委員会+1

再委託の場合には、一定の条件を満たすと元委託者の支払期日から30日以内とする例外もあります。ただし、いずれの場合も、支払日をあいまいにしたり、検収を理由に不当に支払いを先延ばしにしたりすることはトラブルの原因になります。

6-3. 報酬の減額・買いたたき・受領拒否などの禁止

特定業務委託事業者が1か月以上の業務委託をする場合、次の7つの行為が禁止されています。

禁止行為内容
受領拒否注文した成果物などの受領を不当に拒む
報酬の減額あらかじめ決めた報酬を不当に減らす
返品受け取った物品を不当に返品する
買いたたき通常より著しく低い報酬を不当に定める
購入・利用強制指定する商品やサービスを強制的に買わせる・使わせる
不当な利益提供要請金銭や労務などを不当に提供させる
不当な変更・やり直し費用負担なしに内容変更ややり直しをさせる

「品質に納得できない」「クライアント都合で不要になった」といった理由があっても、フリーランスに責任がないのに一方的に減額・受領拒否・無償修正を求める対応は問題になり得ます。公正取引委員会

6-4. 募集情報を正確に表示する義務

発注者が広告、求人サイト、SNS、クラウドソーシングなどでフリーランスを募集する場合、虚偽表示や誤解を生じさせる表示をしてはいけません。また、募集情報は正確かつ最新の内容に保つ必要があります。公正取引委員会

たとえば、「月額30万円」と表示していたのに実際は成果報酬のみだった、「フルリモート」と書いていたのに常駐必須だった、「発注者名が実際と違っていた」といったケースはトラブルになりやすいです。

6-5. 育児・介護等への配慮義務

特定業務委託事業者が6か月以上の業務委託をしている場合、フリーランスから申出があれば、妊娠、出産、育児、介護と業務を両立できるよう必要な配慮をしなければなりません。6か月未満の場合も、配慮するよう努めることが求められています。公正取引委員会+1

具体的には、打ち合わせ時間の調整、オンライン対応、納期や業務量の調整などが考えられます。ただし、フリーランス側も早めに事情を伝え、代替案を提示すると話し合いが進みやすくなります。

6-6. ハラスメント対策に関する義務

特定業務委託事業者は、フリーランスの就業環境がハラスメントによって害されないよう、相談対応体制の整備など必要な措置を講じる義務があります。対象となるのは、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント、取引上の優越的な関係を背景とした言動によるハラスメントなどです。公正取引委員会+1

発注者は、相談窓口を設ける、担当者に周知する、相談したことを理由に契約解除などの不利益な扱いをしない、といった対応が必要です。

6-7. 中途解除・契約不更新時の事前予告義務

6か月以上の継続的業務委託について、発注者が契約を中途解除したり、契約期間満了後に更新しなかったりする場合、原則として少なくとも30日前までに予告しなければなりません。フリーランスが理由の開示を求めた場合、発注者は遅滞なく理由を開示する必要があります。公正取引委員会+1

突然の契約終了は、フリーランスの収入や稼働計画に大きな影響を与えます。継続案件では、契約更新の条件や終了時のルールをあらかじめ確認しておきましょう。

6-8. 義務違反になりやすい発注者の対応例

義務違反になりやすい対応には、次のようなものがあります。

発注者の対応例問題になり得る理由
報酬や納期を口頭だけで伝える取引条件の明示義務に反する可能性
納品後に一方的に報酬を減らす報酬減額の禁止に反する可能性
検収を引き延ばして支払いを遅らせる支払期日義務に反する可能性
無償で大幅な追加修正を求める不当な変更・やり直しに当たる可能性
募集内容と実際の条件が違う募集情報の的確表示義務に反する可能性
相談したフリーランスを契約終了にする不利益取扱いに当たる可能性
継続案件を突然打ち切る事前予告義務に反する可能性

フリーランス側は、違和感を覚えた時点で記録を残し、早めに条件確認を行うことが大切です。

7. フリーランスが直面しやすいトラブルと対策

7-1. 報酬が支払われない・支払いが遅れる

報酬未払い・支払遅延は、フリーランスが直面しやすい代表的なトラブルです。フリーランス・トラブル110番でも、報酬未払い、支払遅延、減額に関する相談事例が多数紹介されています。フリーランス・トラブル110番〖厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営〗

対策としては、契約前に支払期日を明確にする、納品日や検収日を記録する、請求書を期限どおり送付する、支払予定日を過ぎたら早めに書面で催促することが重要です。

7-2. 契約後に一方的に報酬を減額される

「予算が減った」「クライアントから支払いがない」「期待した品質ではない」などの理由で、発注者が一方的に報酬を減額してくるケースがあります。

事前に合意した業務を完了しているにもかかわらず、フリーランスに責任がない理由で報酬を減らすことは問題になり得ます。減額を求められたら、すぐに了承せず、減額理由、根拠、対象範囲を書面で確認しましょう。

7-3. 仕様変更や追加作業を無償で求められる

「少しだけ修正してほしい」「ついでに追加してほしい」という依頼が重なると、当初の業務範囲を大きく超えることがあります。

契約前に、修正回数、軽微な修正の範囲、追加費用が発生する条件を決めておきましょう。契約後に仕様変更が発生した場合は、作業前に追加見積りを提示し、合意を得てから着手することが大切です。

7-4. 納品物の受領を拒否される

納品したにもかかわらず、発注者が受領や検収を拒むケースもあります。フリーランスに責任がないのに成果物を受け取らない対応は、受領拒否として問題になり得ます。公正取引委員会

納品時は、納品物、納品日時、納品方法、相手の受領状況を記録しましょう。クラウドストレージ、メール、チャットなどで納品した場合も、送信履歴やURL共有履歴を保存しておくと証拠になります。

7-5. 契約を突然打ち切られる

継続案件で突然契約を打ち切られると、収入計画に大きな影響が出ます。6か月以上の継続的業務委託では、原則として30日前までの予告や理由開示が問題になります。公正取引委員会

突然打ち切られた場合は、契約期間、更新条件、過去の更新状況、終了連絡の日時、終了理由を確認しましょう。口頭で言われた場合も、メールで「本日ご連絡いただいた契約終了について確認です」と記録化しておくとよいです。

7-6. ハラスメントや不当な扱いを受ける

発注者や担当者から暴言、人格否定、過度な叱責、性的な言動、育児・介護等を理由とする不利益な扱いを受けることもあります。

ハラスメントを受けた場合は、日時、場所、発言内容、関係者、スクリーンショット、録音の有無などを記録します。発注者に相談窓口がある場合は利用し、改善が見込めない場合は外部相談窓口も検討しましょう。

7-7. 口約束・チャットだけで契約した場合の注意点

口約束でも契約が成立することはありますが、後から「言った・言わない」になりやすいです。チャットだけで進める場合も、重要な条件が流れてしまい、確認しにくくなることがあります。

最低限、業務内容、納期、報酬、支払期日、修正範囲、著作権や利用範囲、キャンセル時の扱いは、1つのメッセージや発注書にまとめて確認しましょう。合意内容が変わった場合も、その都度、変更後の条件を記録することが大切です。

8. トラブルを防ぐために契約前・契約中に確認すべきこと

8-1. 契約前に確認すべき取引条件

契約前には、次の条件を必ず確認しましょう。

確認項目確認内容
業務内容何をどこまで行うか
成果物納品物の形式、数量、品質基準
納期中間納品、最終納品、検収期限
報酬金額、税別・税込、源泉徴収の有無
支払期日納品後何日以内、月末締め翌月末払いなど
支払方法銀行振込、振込手数料の扱い
修正対応回数、範囲、追加費用
権利関係著作権、利用範囲、実績公開可否
解除・キャンセル中止時の報酬、費用精算
連絡方法担当者、連絡ツール、返信期限

発注者から条件が明示されない場合は、フリーランス側から確認リストを送ると、後のトラブルを防ぎやすくなります。

8-2. 業務内容・納期・成果物の範囲を明確にする

業務内容があいまいなままだと、追加作業や修正対応が無制限になりやすいです。

たとえば、記事制作なら文字数、構成作成の有無、画像選定の有無、入稿作業の有無を決めます。Web制作ならページ数、対応ブラウザ、デザイン案の数、実装範囲、公開作業の有無を決めます。コンサルティングなら、会議回数、資料作成、チャット相談の範囲を明確にしましょう。

8-3. 報酬額・支払期日・支払方法を確認する

報酬は、金額だけでなく、支払期日と支払方法まで確認する必要があります。

「納品後支払い」だけでは不十分です。「納品月末締め翌月末払い」「検収完了後30日以内」など、具体的な日付がわかる形にしましょう。振込手数料をフリーランス負担として差し引くことは、報酬の減額として問題になる場合があります。公正取引委員会

8-4. 修正対応・追加費用・キャンセル時の扱いを決める

修正対応は、トラブルになりやすい項目です。契約前に、無料修正の回数、無料修正の範囲、発注者都合の仕様変更、追加費用の計算方法を決めておきましょう。

また、発注者都合で案件が中止になった場合のキャンセル料、途中までの作業費、外注費や素材費の精算も重要です。特に長期案件や高額案件では、着手金やマイルストーン払いを設定するとリスクを抑えられます。

8-5. 契約書・発注書・メール・チャットを証拠として残す

トラブル時に重要なのは、合意内容を示す証拠です。契約書がなくても、発注書、見積書、請求書、メール、チャット、タスク管理ツールの履歴、オンライン会議後の確認メッセージなどが証拠になります。

口頭で決まった内容は、その日のうちに「本日の打ち合わせ内容を確認します」とメッセージで送る習慣をつけましょう。

8-6. 請求書・納品記録・やり取りの管理方法

請求書と納品記録は、案件ごとに整理しておくと支払遅延時に対応しやすくなります。

おすすめは、案件フォルダを作り、契約書、発注書、見積書、納品データ、請求書、検収連絡、支払確認をまとめて保存する方法です。ファイル名には日付と案件名を入れると、後から探しやすくなります。

8-7. 不利な契約条件を提示されたときの対応

不利な条件を提示された場合は、すぐに拒否するのではなく、まずリスクを具体的に整理しましょう。

たとえば、「無制限修正」は「無料修正は2回まで、以降は1回○円」と提案できます。「支払いはクライアント入金後」は「納品月末締め翌月末払い」などに変更を求めます。「著作権をすべて無償譲渡」は「報酬に権利譲渡分を含める」「利用範囲を限定する」といった交渉が考えられます。

条件交渉は、感情的に反発するよりも、「この条件では追加工数が読めないため、範囲を明確にしたい」と業務上の理由を示すと進めやすくなります。

9. トラブルが起きたときの相談先と解決までの流れ

9-1. まず確認すべき契約内容と証拠

トラブルが起きたら、まず契約内容と証拠を確認します。

確認すべきものは、契約書、発注書、見積書、請求書、納品記録、検収連絡、メール、チャット、通話メモ、作業ログなどです。報酬未払いであれば、請求日、支払期日、催促履歴、相手の回答も整理します。

9-2. 発注者へ連絡する際のポイント

発注者へ連絡するときは、感情的な表現を避け、事実と希望する対応を明確に伝えます。

たとえば、報酬未払いの場合は、「○月○日に納品し、○月○日に請求書を送付しました。支払期日は○月○日でしたが、現時点で入金を確認できていません。○月○日までにお支払い予定をご連絡ください」と書きます。

証拠を残すため、電話だけでなくメールやチャットでも送ることが重要です。

9-3. フリーランス・トラブル110番に相談する

フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省委託事業として第二東京弁護士会が運営する相談窓口です。フリーランスや個人事業主などが、発注事業者から業務委託を受けた際に発生した契約上・仕事上のトラブルについて相談できます。相談は無料で、匿名相談やメール相談にも対応しています。フリーランス・トラブル110番〖厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営〗

電話相談の番号は0120-532-110で、受付時間は9:30〜16:30、土日祝日を除く平日です。フリーランス・トラブル110番〖厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営〗+1

9-4. 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の窓口を確認する

フリーランス新法では、取引条件の明示、報酬支払、禁止行為など取引適正化に関する部分は主に公正取引委員会・中小企業庁が担当し、募集情報、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策、中途解除等の就業環境整備に関する部分は主に厚生労働省が担当します。mhlw.go.jp

違反が疑われる場合は、内容に応じて各機関の申出窓口を確認しましょう。フリーランス・トラブル110番では、フリーランス法違反と考えられる場合の申出に関するアドバイスも受けられます。フリーランス・トラブル110番〖厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営〗

9-5. 弁護士に相談すべきケース

次のようなケースでは、早めに弁護士へ相談することを検討しましょう。

相談すべきケース理由
未払い額が大きい交渉・法的手続の検討が必要
相手が支払いを明確に拒否している内容証明や訴訟等を検討する可能性
損害賠償を請求されている反論や責任範囲の整理が必要
契約解除で大きな損害が出ている損害額や請求可能性の検討が必要
ハラスメントが深刻証拠整理と安全確保が必要
契約書の条項が複雑法的リスクの判断が必要

無料相談や弁護士会の法律相談を活用する方法もあります。

9-6. 相談前に準備しておく資料

相談前には、次の資料を準備しておくとスムーズです。

資料内容
契約書・発注書契約条件の確認
見積書・請求書報酬額・請求内容の確認
納品記録納品日・納品内容の確認
メール・チャット合意内容・やり取りの確認
支払履歴入金有無・遅延状況の確認
トラブル経緯メモ時系列で整理
相手方情報会社名、住所、担当者、連絡先

時系列メモは、「いつ」「誰が」「何を言った・した」「こちらがどう対応した」を簡潔にまとめると相談しやすくなります。

9-7. 泣き寝入りしないための対応手順

トラブル時は、次の順番で対応すると整理しやすいです。

  1. 契約内容と証拠を確認する

  2. トラブルの内容を時系列で整理する

  3. 発注者へ書面で確認・催促する

  4. 回答期限を決める

  5. 改善しない場合は相談窓口を利用する

  6. 必要に応じて行政機関への申出や弁護士相談を検討する

  7. 今後の契約条件や取引継続の可否を見直す

重要なのは、早い段階で記録を残すことです。時間が経つほど証拠が散逸し、相手の主張も変わる可能性があります。

10. 発注者側が注意すべきフリーランス新法対応

10-1. 発注前に整備すべき社内ルール

発注者側は、フリーランスに発注する前に社内ルールを整備する必要があります。

最低限、発注申請のフロー、取引条件明示のテンプレート、支払期日の管理方法、検収手続、追加発注のルール、契約解除時の確認手順、ハラスメント相談窓口を整えましょう。担当者任せにすると、条件の伝え漏れや支払遅延が起きやすくなります。

10-2. 取引条件の明示で記載すべき項目

取引条件の明示では、次の項目を漏れなく記載します。

項目記載例
当事者名発注会社名、フリーランス名
業務委託日発注日・契約日
業務内容制作物、作業内容、仕様
納期・提供日納品日、役務提供日
場所納品場所、作業場所、オンライン可否
報酬額税込・税別、源泉徴収の有無
支払期日受領日から60日以内の具体日
検査完了日検収がある場合
支払方法銀行振込など

発注のたびに同じ情報を手入力すると漏れが出やすいため、発注書やメールテンプレートを用意しておくと安全です。

10-3. 支払期日管理と報酬トラブルの防止

支払期日は、成果物の受領日や役務提供日を起点に管理する必要があります。社内の経理締め日だけを優先すると、60日以内の支払いに反するリスクがあります。公正取引委員会+1

検収が必要な場合でも、検収を不当に長引かせないよう、検収期限と担当者を決めましょう。請求書が届いていない場合も、発注者側から確認する運用にすると未払いトラブルを防ぎやすくなります。

10-4. 募集情報・求人情報の表示で注意すべき点

フリーランス募集では、報酬、業務内容、稼働日数、勤務地、リモート可否、契約期間、必要スキル、選考方法などを正確に表示します。

特に、業務委託なのに雇用の求人のように表示する、実際より高い報酬を見せる、曖昧な成果報酬を固定報酬のように見せる、発注者名を明らかにしないといった表示はトラブルにつながります。募集後に条件が変わった場合は、速やかに情報を更新しましょう。

10-5. ハラスメント相談体制の整備

発注者は、フリーランスが相談できる体制を整える必要があります。既存の従業員向けハラスメント相談窓口をフリーランスにも利用可能にする、外部窓口を設ける、相談先を契約時に案内するなどの方法が考えられます。

また、相談を受けた担当者が不適切な対応をしないよう、発注部門や現場責任者への研修も重要です。相談したことを理由に契約終了や発注停止をすることは、不利益取扱いとして問題になる可能性があります。公正取引委員会

10-6. 契約解除・不更新時の対応

6か月以上の継続的業務委託を解除・不更新にする場合は、原則30日前までの予告が必要です。予告は、口頭だけでなく、書面、メールなど記録に残る方法で行いましょう。公正取引委員会

解除理由を求められた場合に備えて、業務量の減少、案件終了、品質上の問題、契約違反など、客観的に説明できる理由を整理しておくことも大切です。

10-7. 違反リスクを下げるチェックリスト

発注者側は、次のチェックリストで対応状況を確認しましょう。

チェック項目確認
発注先が特定受託事業者に該当するか確認した
取引条件を発注時に書面・メール等で明示した
報酬額・支払期日を明確にした
支払期日が受領日から原則60日以内になっている
追加作業時に追加報酬を協議している
募集情報を正確・最新に保っている
ハラスメント相談窓口を案内している
6か月以上の契約解除・不更新時に30日前予告を確認した
契約書・発注書・検収記録を保存している

フリーランス新法への対応は、単なる法務部門の仕事ではありません。発注部門、経理部門、人事・労務部門、現場管理者が共通理解を持つことが重要です。

11. 特定受託事業者に関するよくある質問

11-1. フリーランスなら全員が特定受託事業者になる?

いいえ。一般的にフリーランスと呼ばれる人でも、従業員を使用している場合や、消費者向け取引だけを行っている場合などは、フリーランス新法上の特定受託事業者に該当しないことがあります。

判断の軸は、「事業者から業務委託を受けているか」「従業員を使用していないか」「個人または一人法人の要件を満たすか」です。

11-2. 副業でも特定受託事業者に該当する?

該当し得ます。会社員として雇用されていても、副業で他の事業者から業務委託を受けている場合、その副業の範囲では特定受託事業者に該当する可能性があります。公正取引委員会

ただし、副業先との関係で実態が雇用に近い場合は、労働者性の問題として判断される可能性があります。

11-3. 法人化していても対象になる?

対象になります。代表者が1人で、他に役員がなく、従業員を使用していない法人であれば、特定受託事業者に該当し得ます。公正取引委員会

一方、代表者以外に取締役や監査役などがいる場合、または従業員を使用している場合は、原則として対象外です。

11-4. アルバイトを雇っている場合は対象外?

アルバイトを雇っているからといって、必ず対象外になるわけではありません。「従業員を使用する」とは、週20時間以上かつ31日以上継続して雇用される見込みの労働者を雇うことを指します。短時間・短期間の一時的な雇用であれば、「従業員を使用」に含まれない場合があります。公正取引委員会

ただし、実態によって判断されるため、継続的に人を雇っている場合は慎重に確認しましょう。

11-5. 口頭契約でもフリーランス新法は適用される?

適用される可能性があります。契約書がないことだけで対象外にはなりません。

むしろ、発注者には取引条件を直ちに書面または電磁的方法で明示する義務があります。口頭だけでは不十分なため、フリーランス側も、契約内容をメールやチャットで確認し、記録を残しましょう。公正取引委員会

11-6. 個人の依頼者から仕事を受けた場合も対象になる?

依頼者が個人でも、その人が事業者として事業のために依頼している場合は対象になり得ます。たとえば、個人事業主が店舗のチラシ制作を依頼する場合などです。

一方、一般消費者が私的な目的で依頼する場合は、フリーランス新法の対象外になりやすいです。

11-7. 下請法の対象外でもフリーランス新法は使える?

使える可能性があります。フリーランス新法と取適法は、対象となる事業者や取引の範囲が異なります。取適法の対象外であっても、フリーランス新法上の特定受託事業者との業務委託であれば、取引条件明示や報酬支払などのルールが適用される可能性があります。公正取引委員会+1

逆に、取適法とフリーランス新法の両方が関係する取引もあります。その場合は、両方のルールを確認する必要があります。

11-8. 発注者が義務を守らない場合はどうすればいい?

まずは契約内容と証拠を整理し、発注者へ書面で確認・是正を求めましょう。それでも改善しない場合は、フリーランス・トラブル110番、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の窓口、弁護士への相談を検討します。

フリーランス新法では、違反がある場合に行政機関へ申出を行う仕組みがあり、申出をしたことを理由とする不利益な取扱いも禁止されています。公正取引委員会+1

まとめ

特定受託事業者とは、フリーランス新法で保護対象となる受注側の事業者です。個人事業主だけでなく、代表者1人で従業員を使用しない一人法人も対象になり得ます。一方、従業員を使用している個人事業主や、代表者以外の役員がいる法人、消費者向けの私的取引などは対象外になることがあります。

フリーランス新法のポイントは、発注者に対して取引条件の明示、報酬の適正な支払い、減額・買いたたき・受領拒否などの禁止、募集情報の正確な表示、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策、契約解除時の予告などを求めていることです。

フリーランス側は、契約前に業務内容、報酬、支払期日、修正範囲、解除条件を確認し、メールやチャットで証拠を残すことが重要です。発注者側は、発注書や契約テンプレート、支払管理、相談体制を整備し、担当者任せにしない運用が求められます。

報酬未払い、突然の契約終了、ハラスメントなどのトラブルが起きた場合は、早めに証拠を整理し、発注者への確認、フリーランス・トラブル110番、行政機関、弁護士相談へと段階的に対応しましょう。フリーランスとして安心して働くためには、自分が特定受託事業者に該当するかを理解し、契約前からリスクを防ぐ姿勢が大切です。