フリーランスの振込手数料は誰が負担?請求書の書き方・経費処理・損しない対策を解説

はじめに

フリーランスとして仕事をしていると、請求書どおりの金額が入金されず、「振込手数料が差し引かれていた」という場面に出会うことがあります。数百円の差額であっても、毎月・複数社で発生すれば年間では無視できない金額になります。

特にフリーランスの場合、会社員のように給与が自動で支払われるわけではなく、請求書の発行、入金確認、記帳、確定申告まで自分で管理しなければなりません。そのため、「振込手数料は誰が負担するのか」「請求書にどう書けばよいのか」「差し引かれた場合の売上や経費はどう処理するのか」を理解しておくことが大切です。

この記事では、フリーランスの振込手数料について、負担者の考え方、請求書の書き方、差し引かれたときの対応、経費処理、損しないための対策までわかりやすく解説します。

1. フリーランスの振込手数料は誰が負担する?まず結論

フリーランスの報酬を銀行振込で受け取る場合、振込手数料は原則として「支払う側」、つまり取引先・発注者が負担するのが基本です。

ただし、実務では契約書や発注書、取引条件によって扱いが変わることがあります。また、フリーランス保護の観点から、取引先が報酬から振込手数料を差し引くことが問題になるケースもあります。

まずは、基本的な考え方を整理しておきましょう。

1-1. 原則は取引先・発注者側が負担する

報酬を支払う義務があるのは取引先です。請求書に記載された金額をフリーランスの口座へ支払うために発生する振込手数料は、一般的には支払う側が負担する費用と考えられます。

たとえば、請求金額が税込55,000円であれば、フリーランス側としては55,000円が入金されることを前提に請求しています。ここから取引先が勝手に振込手数料330円を差し引き、54,670円だけを振り込むと、請求額に対して不足が生じます。

民法上も、弁済に要する費用は原則として債務者が負担する考え方があり、報酬の支払いに置き換えると、支払う側である取引先が振込手数料を負担するのが基本です。 ロボットペイメント

1-2. 契約書や発注書で取り決めがある場合の考え方

一方で、契約書や発注書、見積書、メールなどで「振込手数料は受注者負担」と明記されている場合は、その取り決めに従って処理されることがあります。

たとえば、契約書に次のような文言があるケースです。

「報酬の支払いにかかる振込手数料は受注者の負担とする」

このような条件に事前に合意している場合、一般的な取引ではフリーランス側が振込手数料を負担する扱いになることがあります。ただし、フリーランス保護法や取適法などの対象となる取引では、合意の有無にかかわらず、報酬から振込手数料を差し引くことが問題になる場合があります。

つまり、「契約書に書いてあるから必ず有効」と単純には言い切れません。取引の内容、発注者の立場、報酬の定め方、法令の適用関係を確認する必要があります。

1-3. フリーランス側が負担してよいケース・注意すべきケース

フリーランス側が振込手数料を負担してもよいケースとしては、次のようなものがあります。

たとえば、フリーランス側から「振込手数料を差し引いていただいて構いません」と明確に伝えている場合や、報酬額を決める段階で手数料負担を前提に単価を調整している場合です。

また、長期的に良好な関係があり、少額の振込手数料よりも取引継続を優先したいと判断することもあります。

ただし、注意すべきなのは、取引先が一方的に振込手数料を差し引くケースです。特に、請求書に「振込手数料は貴社負担でお願いいたします」と記載しているにもかかわらず差し引かれた場合や、契約時に説明がなかった場合は、単なる事務処理ではなく報酬の減額にあたる可能性があります。

1-4. 報酬から振込手数料を勝手に差し引かれた場合は要注意

請求額から振込手数料を勝手に差し引かれた場合、まず「少額だから仕方ない」と流さないことが重要です。

フリーランスに対する業務委託では、報酬の支払いに関するルールが整備されています。公正取引委員会のフリーランス法Q&Aでも、金融機関口座へ報酬を振り込む際の手数料をフリーランスに負担させ、報酬額から差し引くことは、報酬の減額として問題になるとされています。 日本貿易委員会

もちろん、すぐに強い言い方で抗議する必要はありません。まずは契約内容と請求書を確認し、取引先に丁寧に確認するのが現実的です。

2. 振込手数料の負担でトラブルが起きやすい理由

振込手数料は1回あたり数百円程度であることが多いため、取引開始時に細かく確認されないことがあります。しかし、そのあいまいさが後からトラブルにつながります。

2-1. 「振込手数料は差し引くもの」と考える取引先がある

企業によっては、昔からの社内ルールや経理処理の慣習として、「振込手数料は受取人負担」と考えている場合があります。

特に、外注先や業務委託先への支払いについて、経理担当者が自動的に手数料を差し引く運用をしていることもあります。担当者本人に悪意がなくても、フリーランス側から見ると請求額より少ない金額しか入金されないため、トラブルの原因になります。

2-2. 請求書に負担者を明記していない

請求書に「振込手数料は貴社負担でお願いいたします」と記載していない場合、取引先が自社のルールで手数料を差し引いてしまうことがあります。

もちろん、請求書に書いていないからといって、必ずフリーランス側が負担しなければならないわけではありません。しかし、明記しておくことで認識違いを防ぎやすくなります。

請求書は単に金額を知らせる書類ではなく、支払条件を確認するための書類でもあります。振込手数料の負担者を毎回記載しておくことは、実務上とても有効です。

2-3. 契約時に支払条件を確認していない

契約時に確認すべきなのは、報酬額だけではありません。

支払期日、支払方法、源泉徴収の有無、消費税の扱い、振込手数料の負担者も重要な支払条件です。

たとえば、月額10万円の業務委託契約でも、毎月振込手数料が差し引かれれば、年間では数千円の差になります。少額に見えても、継続案件では積み重なります。

契約前に「振込手数料は御社負担でよろしいでしょうか」と一言確認しておくだけで、後のトラブルをかなり防げます。

2-4. 少額だからとフリーランス側が我慢しやすい

振込手数料は数百円程度であることが多いため、フリーランス側も「わざわざ言うほどではない」と我慢しがちです。

しかし、フリーランスにとって報酬は事業収入です。請求した金額が正しく入金されることは、事業運営の基本です。

また、一度差し引きを認めると、その後も毎回同じ処理が続く可能性があります。小さな金額でも、最初の段階でルールを確認することが大切です。

3. 請求書に振込手数料を書くときの正しい書き方

振込手数料を差し引かれないためには、請求書に負担者を明記することが効果的です。ここでは、請求書に入れるべき基本項目と、実際に使える文言例を紹介します。

3-1. 請求書に記載すべき基本項目

請求書には、少なくとも次の項目を記載しましょう。

請求書番号、発行日、宛先、請求者名、住所または連絡先、取引内容、請求金額、消費税額、源泉徴収税額、合計請求額、支払期限、振込先口座、振込手数料の負担者です。

フリーランスの場合、源泉徴収の対象となる報酬かどうかによって入金額が変わることもあります。そのため、請求額、源泉徴収税額、差引請求額を分けて記載すると、取引先の経理担当者にも伝わりやすくなります。

3-2. 振込先欄に入れる文言例

振込先欄には、銀行名や口座番号だけでなく、振込手数料についての文言も入れておくと安心です。

たとえば、次のように記載します。

「恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担くださいますようお願いいたします。」

または、より簡潔にするなら次の文言でも問題ありません。

「振込手数料は貴社負担にてお願いいたします。」

振込先のすぐ下に記載しておくと、支払い処理をする担当者の目に入りやすくなります。

3-3. 備考欄・特記事項に入れる文言例

備考欄や特記事項に入れる場合は、少し丁寧な表現にすると角が立ちにくくなります。

「お振込みの際の手数料につきましては、貴社にてご負担いただけますと幸いです。」

「請求金額満額でのお振込みをお願いいたします。なお、振込手数料は貴社にてご負担ください。」

「お手数をおかけいたしますが、振込手数料は貴社負担にてお手続きくださいますようお願い申し上げます。」

取引先との関係性に応じて、やわらかい表現と明確な表現を使い分けるとよいでしょう。

3-4. 「振込手数料は貴社負担でお願いします」の書き方

「振込手数料は貴社負担でお願いします」という表現は意味としては問題ありませんが、ビジネス文書では少し直接的に見えることがあります。

請求書に記載するなら、次のような表現がおすすめです。

「振込手数料は貴社ご負担にてお願いいたします。」

「誠に恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担をお願いいたします。」

「請求金額から振込手数料を差し引かず、満額でのお振込みをお願いいたします。」

特に、過去に手数料を差し引かれたことがある取引先には、「満額でのお振込み」という文言を入れると意図が伝わりやすくなります。

3-5. 角が立たない丁寧な請求書文言

取引先との関係を壊さずに伝えたい場合は、次のような文言が使いやすいです。

「恐れ入りますが、お振込みにかかる手数料は貴社にてご負担いただけますようお願い申し上げます。」

「お手数をおかけいたしますが、請求金額満額でのお振込みをお願いいたします。」

「振込手数料につきましては、貴社ご負担にてお手続きいただけますと幸いです。」

ポイントは、「負担してください」と強く言い切るのではなく、「お願いいたします」「ご負担いただけますと幸いです」と表現することです。ただし、あいまいにしすぎると伝わらないため、「貴社負担」「満額でのお振込み」というキーワードは入れておきましょう。

3-6. 振込手数料を差し引かれない請求書テンプレート例

請求書には、次のような形で記載するとわかりやすくなります。

請求金額:55,000円
源泉徴収税額:5,105円
差引請求額:49,895円
お振込期限:2026年7月31日
振込先:〇〇銀行 〇〇支店 普通 1234567 ヤマダ タロウ
備考:恐れ入りますが、振込手数料は貴社ご負担にて、上記差引請求額の満額をお振込みくださいますようお願いいたします。

源泉徴収がない場合は、次のようにシンプルで構いません。

請求金額:55,000円
お振込期限:2026年7月31日
振込先:〇〇銀行 〇〇支店 普通 1234567 ヤマダ タロウ
備考:振込手数料は貴社ご負担にてお願いいたします。

重要なのは、取引先が支払処理をするときに迷わないよう、入金してほしい金額と手数料の負担者を明確にすることです。

4. 振込手数料を差し引かれたときの対応方法

実際に振込手数料を差し引かれて入金された場合は、感情的に反応するのではなく、事実確認から始めましょう。

4-1. まず契約書・発注書・メールの取り決めを確認する

最初に確認すべきなのは、契約書や発注書、見積書、メールのやり取りです。

「振込手数料は受注者負担」と書かれていないか、「支払手数料を差し引く」といった文言がないかを確認します。

また、請求書に「振込手数料は貴社負担」と記載していたかも確認しましょう。請求書に明記していた場合は、取引先に説明しやすくなります。

4-2. 入金額と請求額の差額を確認する

次に、請求書の金額と実際の入金額を照合します。

たとえば、請求額が110,000円で、入金額が109,670円であれば、差額は330円です。この差額が銀行の振込手数料と一致しているか確認しましょう。

源泉徴収がある場合は、源泉徴収税額を差し引いた後の金額と入金額を比べます。源泉徴収と振込手数料が混在すると計算を誤りやすいため、請求書、入金明細、支払通知書を並べて確認するのがおすすめです。

4-3. 取引先へ確認メールを送る

差額を確認したら、まずは取引先へ丁寧に確認メールを送りましょう。

文面例は次のとおりです。

件名:ご入金額の確認について

〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
〇月〇日付でご入金いただきました下記請求分につきまして、請求金額との差額がございましたため確認のご連絡です。

請求金額:〇〇円
ご入金額:〇〇円
差額:〇〇円

恐れ入りますが、振込手数料分を差し引いてのお振込みとなっておりますでしょうか。
請求書にも記載のとおり、振込手数料は貴社ご負担にてお願いしておりますため、ご確認いただけますと幸いです。

何卒よろしくお願いいたします。

最初から「不足しています」「違反です」と強く言うよりも、まずは確認の形にすると、相手も対応しやすくなります。

4-4. 不足分を追加請求する場合の文言例

不足分を追加で支払ってもらう場合は、次のように伝えます。

「ご確認いただきありがとうございます。今回差し引かれておりました振込手数料〇〇円につきまして、請求書記載のとおり貴社ご負担にてお願いしております。恐れ入りますが、不足分〇〇円を次回お支払い時にあわせてお振込みいただけますでしょうか。」

今回だけ個別に振り込んでもらうと、取引先側にも追加の振込手数料が発生することがあります。そのため、継続取引であれば「次回支払い時に合算」で依頼するとスムーズです。

単発案件で今後の取引がない場合は、不足分のみの追加振込を依頼してもよいでしょう。

4-5. 今後の取引で同じことを防ぐ伝え方

一度差し引かれた場合は、次回以降の請求書やメールで明確に伝えることが大切です。

たとえば、請求書送付時のメールに次の一文を入れます。

「なお、恐れ入りますが、振込手数料は貴社ご負担にて、請求金額満額のお振込みをお願いいたします。」

また、継続案件の場合は、次回契約更新時に支払条件として明記してもらうと安心です。

「今後のご請求分につきまして、振込手数料は貴社ご負担にてお手続きいただく形でお願いできますでしょうか。」

やわらかく伝えつつも、負担者を明確にすることがポイントです。

4-6. 法令違反の可能性がある場合の相談先

取引先が一方的に報酬から振込手数料を差し引き、確認しても対応してくれない場合は、法令違反の可能性があります。

フリーランスとの取引では、フリーランス法の対象となる場合があります。公正取引委員会のQ&Aでは、報酬を金融機関口座へ振り込む際の手数料をフリーランスに負担させ、報酬額から差し引くことは問題になると説明されています。 日本貿易委員会

また、取引内容や事業者の規模によっては、取適法の対象となる可能性もあります。2026年1月1日から下請法は中小受託取引適正化法、いわゆる取適法として新たに施行され、委託取引のルールが見直されています。 政府オンライン

相談先としては、公正取引委員会、中小企業庁、フリーランス・トラブル110番、税理士、弁護士などが考えられます。法的な判断が必要な場合は、専門家に相談しましょう。

5. フリーランスが振込手数料を負担した場合の経費処理

振込手数料をフリーランス側が負担した場合、会計処理も正しく行う必要があります。ここでは、個人事業主のフリーランスを前提に、基本的な考え方を解説します。

5-1. 振込手数料は経費にできるのか

事業に関係する振込手数料であれば、経費として処理できます。

たとえば、取引先から報酬を受け取る際に振込手数料が差し引かれた場合や、自分が外注先・仕入先へ代金を振り込む際に手数料を支払った場合です。

ただし、プライベートな送金にかかる振込手数料は事業経費にはできません。事業用と私用を分けて記帳することが重要です。

5-2. 勘定科目は「支払手数料」で処理するのが一般的

フリーランスが振込手数料を負担した場合、勘定科目は「支払手数料」で処理するのが一般的です。

たとえば、銀行振込の手数料、決済サービスの手数料、送金手数料などは、支払手数料として処理されることが多いです。

ただし、会計ソフトや税理士の方針によっては、「雑費」など別の科目を使う場合もあります。大切なのは、毎回同じルールで継続して処理することです。

5-3. 報酬から差し引かれて入金された場合の仕訳

請求額55,000円に対して、振込手数料330円が差し引かれ、54,670円が入金された場合を考えます。

この場合、売上は原則として請求額の55,000円で計上し、差し引かれた330円を支払手数料として処理します。

仕訳例は次のとおりです。

普通預金 54,670円/売上高 55,000円
支払手数料 330円/

このように処理すれば、売上は請求書どおりに計上され、差し引かれた振込手数料は経費として反映されます。

一方、消費税の処理では、振込手数料相当額を売上値引きとして扱う考え方もあります。インボイス制度では、売手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理する場合、原則として返還インボイスの論点が出ますが、税込1万円未満の少額な返還については返還インボイスの交付義務が免除されます。 国税庁

5-4. 自分が取引先へ振り込む場合の仕訳

フリーランス自身が外注先や仕入先へ代金を振り込む場合、振込手数料は自分が支払う側として負担することが多いです。

たとえば、外注費50,000円を支払い、振込手数料330円が発生した場合は次のように処理します。

外注費 50,000円/普通預金 50,330円
支払手数料 330円/

この場合、外注費と振込手数料を分けて記帳しておくと、後から経費の内訳を確認しやすくなります。

5-5. 消費税・インボイス制度との関係

振込手数料の処理で注意したいのが、消費税とインボイス制度です。

自分が銀行に支払った振込手数料を課税仕入れとして処理する場合は、インボイスの保存が必要になることがあります。一方、報酬から差し引かれた振込手数料相当額を売上値引きとして処理する場合は、売上に係る対価の返還として扱うことがあります。

国税庁は、売手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとする場合の取り扱いについて説明しており、実務上は金額や処理方法によって対応が変わります。 国税庁

免税事業者か課税事業者か、簡易課税か原則課税かによっても影響が変わるため、不安がある場合は税理士に確認しましょう。

5-6. 確定申告でミスしないための記帳ポイント

確定申告でミスしないためには、請求書、入金明細、通帳、会計ソフトの記録を一致させることが大切です。

特に、報酬から振込手数料が差し引かれた場合、入金額だけを売上にしてしまうと売上が少なく計上されることがあります。

請求額を売上として計上し、差し引かれた手数料を経費または売上値引きとして処理するなど、自分の会計方針に沿って記帳しましょう。

また、源泉徴収がある報酬では、源泉徴収税額、振込手数料、実際の入金額を混同しやすいため、請求書に内訳を明記しておくと管理しやすくなります。

6. フリーランスが振込手数料で損しないための対策

振込手数料による損を防ぐには、請求後に対応するよりも、契約前・請求前の準備が重要です。

6-1. 契約時に振込手数料の負担者を明確にする

最も効果的なのは、契約時に振込手数料の負担者を明確にしておくことです。

契約書や発注書に次のような文言を入れてもらいましょう。

「報酬の支払いにかかる振込手数料は、発注者の負担とする。」

または、

「受注者指定口座への振込手数料は、発注者が負担するものとする。」

契約書を交わさない小規模案件でも、メールやチャットで確認しておくだけで証拠になります。

6-2. 請求書に毎回文言を入れる

契約時に確認していても、請求書には毎回振込手数料の文言を入れておきましょう。

経理担当者が契約時のやり取りを把握していないこともあるため、請求書上で明示することが重要です。

おすすめの文言は次のとおりです。

「振込手数料は貴社ご負担にてお願いいたします。」

「請求金額満額でのお振込みをお願いいたします。」

「恐れ入りますが、お振込みにかかる手数料は貴社にてご負担ください。」

毎回同じ文言をテンプレート化しておけば、記載漏れも防げます。

6-3. 報酬額・見積金額に手数料分を考慮する

どうしてもフリーランス側が振込手数料を負担する取引先の場合は、報酬額や見積金額に手数料分を考慮する方法もあります。

たとえば、毎月330円の振込手数料を負担するなら、月額報酬を数百円から1,000円程度上乗せして見積もることも検討できます。

ただし、請求書上で「振込手数料」として別途上乗せする場合は、取引先の了承を得ておく必要があります。勝手に加算すると、別のトラブルにつながる可能性があります。

6-4. 振込手数料が安い銀行口座を使う

振込手数料の負担を減らすには、手数料が安い銀行口座を使うことも有効です。

ネット銀行や一部の銀行では、同一銀行間の振込手数料が無料または安く設定されていることがあります。取引先が利用している銀行と同じ銀行の口座を持っておくと、手数料を抑えやすくなります。

事業用口座を選ぶ際は、振込手数料、入出金手数料、会計ソフトとの連携、屋号口座の可否なども確認しましょう。

6-5. 同一銀行間の振込を提案する

継続取引で毎月入金がある場合は、取引先に同一銀行間での振込を提案するのも一つの方法です。

たとえば、取引先が〇〇銀行を使っているなら、自分も〇〇銀行の口座を用意することで、振込手数料が安くなる可能性があります。

ただし、取引先の経理ルールによっては振込先の変更に手続きが必要な場合もあります。無理に求めるのではなく、「もし可能であれば」という形で提案するとよいでしょう。

6-6. 支払い方法や入金サイクルを見直す

少額案件が多い場合、毎回振込手数料が発生すると負担が大きくなります。

その場合は、月末締め翌月払いにまとめる、複数案件分をまとめて請求する、一定額に達した時点で請求するなど、入金サイクルを見直す方法があります。

たとえば、1件5,000円の案件を毎回振り込んでもらうより、月末にまとめて30,000円を振り込んでもらう方が、手数料負担を抑えやすくなります。

6-7. 少額案件では手数料負担も含めて採算を確認する

少額案件では、振込手数料の影響が相対的に大きくなります。

たとえば、3,000円の案件で330円の振込手数料を負担すると、報酬の1割以上が手数料で消えることになります。

少額案件を受けるときは、作業時間だけでなく、振込手数料、プラットフォーム手数料、源泉徴収、消費税、連絡コストも含めて採算を確認しましょう。

7. ケース別|振込手数料の負担はどう判断する?

ここからは、実際によくあるケースごとに、振込手数料の負担をどう判断すべきか解説します。

7-1. 請求書に「貴社負担」と書いたのに差し引かれた場合

請求書に「振込手数料は貴社負担」と書いたにもかかわらず差し引かれた場合は、まず取引先に確認しましょう。

経理担当者が見落としていた、社内システムで自動的に差し引かれた、過去の設定が残っていたなど、単純なミスの可能性もあります。

文面では、請求書に記載していたこと、請求額と入金額に差額があること、今後は満額で振り込んでほしいことを丁寧に伝えます。

7-2. 契約書に「振込手数料は受注者負担」とある場合

契約書に「振込手数料は受注者負担」と書かれている場合は、まずその契約条件を確認する必要があります。

ただし、フリーランス法や取適法の対象となる取引では、たとえ合意があっても報酬から振込手数料を差し引くことが問題になる可能性があります。

そのため、単に「契約書に書いてあるから仕方ない」と判断せず、取引の性質や法令の適用を確認しましょう。特に、発注者側が事業者で、フリーランス個人に業務委託している場合は注意が必要です。

7-3. 取引先から「手数料を引いて振り込む」と言われた場合

取引先から事前に「振込手数料を引いて振り込みます」と言われた場合は、その場で確認することが重要です。

次のように伝えるとよいでしょう。

「恐れ入りますが、報酬のお振込みにかかる手数料は貴社ご負担にてお願いできますでしょうか。請求書にもその旨を記載いたします。」

それでも取引先が受注者負担を求める場合は、報酬額の見直しや契約条件の再確認を行いましょう。少額案件で手数料負担が大きい場合は、受注自体を見直す判断も必要です。

7-4. 源泉徴収ありの報酬から手数料も引かれた場合

源泉徴収がある報酬では、入金額が請求額より少なくなるため、振込手数料の差し引きに気づきにくいことがあります。

たとえば、原稿料やデザイン料などで源泉徴収が必要な場合、請求書には報酬額、消費税、源泉徴収税額、差引請求額を明記します。

その差引請求額からさらに振込手数料が引かれている場合は、源泉徴収とは別の差額として確認が必要です。

記帳では、売上、源泉徴収税額、振込手数料、入金額を分けて処理しましょう。

7-5. クラウドソーシング・業務委託サイトを利用する場合

クラウドソーシングや業務委託サイトを利用する場合は、銀行の振込手数料だけでなく、システム利用料や出金手数料が発生することがあります。

この場合、手数料の負担ルールはプラットフォームの規約に従うことが一般的です。

たとえば、報酬からシステム手数料が差し引かれ、さらに出金時に振込手数料がかかることがあります。受注前に、表示されている契約金額と実際に受け取れる金額を確認しましょう。

会計処理では、プラットフォーム手数料や出金手数料を支払手数料として処理することが多いです。

7-6. 継続案件で毎月手数料を引かれている場合

継続案件で毎月振込手数料を差し引かれている場合は、早めに取引先へ確認しましょう。

長期間放置すると、「これまで問題なかった」と受け取られる可能性があります。

伝える際は、過去分をすべて返してほしいといきなり求めるのではなく、まずは今後の処理を見直してもらうのが現実的です。

「次回以降のご請求分につきましては、請求書記載のとおり、振込手数料を差し引かず満額でのお振込みをお願いできますでしょうか。」

必要に応じて、過去分の不足額についても一覧にして相談しましょう。

8. フリーランスの振込手数料に関するよくある質問

最後に、フリーランスの振込手数料についてよくある質問に回答します。

8-1. 振込手数料を請求金額に上乗せしてもよい?

取引先と合意していれば、振込手数料相当額を請求金額に含めることは可能です。

ただし、事前の説明なく勝手に上乗せすると、取引先から不信感を持たれる可能性があります。

見積書や契約書の段階で、「振込手数料相当額を含む」「振込手数料は発注者負担」と明記しておくと安心です。

8-2. 振込手数料だけを後から請求できる?

請求書に「振込手数料は貴社負担」と明記していたにもかかわらず差し引かれた場合、不足分として後から請求することは考えられます。

ただし、数百円だけを個別に振り込んでもらうと、取引先側にも手間や手数料が発生します。継続取引であれば、次回請求分に合算してもらう方法が現実的です。

単発取引であっても、まずは丁寧に確認し、相手の対応を見て判断しましょう。

8-3. 振込手数料を引かれたら売上はいくらで計上する?

基本的には、請求書に記載した金額を売上として計上し、差し引かれた振込手数料を支払手数料などで処理します。

たとえば、請求額55,000円、入金額54,670円、差額330円の場合、売上は55,000円、支払手数料は330円とする処理が一般的です。

ただし、消費税の処理では売上値引きとして扱う方法もあるため、課税事業者の場合は税理士や会計ソフトの設定に合わせて処理しましょう。

8-4. 振込手数料に領収書は必要?

銀行振込の手数料については、銀行の利用明細、通帳の記録、ネットバンキングの取引明細などが証拠になります。

紙の領収書が必ず必要というわけではありませんが、確定申告や税務調査に備えて、手数料の発生が確認できる資料を保存しておきましょう。

ネット銀行を利用している場合は、取引明細をPDFで保存しておくと安心です。

8-5. 振込手数料を負担してくれない取引先とはどう付き合う?

振込手数料を負担してくれない取引先でも、報酬額が十分で、取引条件全体として納得できるなら継続する選択肢もあります。

一方で、報酬が低い、支払いが遅い、手数料を一方的に差し引く、相談しても対応しないといった取引先は注意が必要です。

振込手数料だけで判断するのではなく、単価、支払期日、修正対応、連絡のしやすさ、契約条件などを総合的に見て、継続すべきか判断しましょう。

8-6. 個人事業主と法人で扱いは変わる?

振込手数料の基本的な考え方は、個人事業主でも法人でも大きくは変わりません。

ただし、法人の場合は経理処理や消費税処理がより厳密に管理されることが多く、社内規程や会計方針に従う必要があります。

個人事業主の場合も、事業として報酬を受け取っている以上、請求書、入金額、手数料、源泉徴収、消費税の扱いを正しく管理することが大切です。

不安がある場合は、税理士に相談し、自分の事業に合った処理ルールを決めておきましょう。

まとめ

フリーランスの振込手数料は、原則として報酬を支払う取引先・発注者側が負担するのが基本です。請求書に記載した金額から振込手数料を勝手に差し引かれた場合は、報酬の不足や減額にあたる可能性があるため、契約書や請求書、入金額を確認したうえで、取引先に丁寧に確認しましょう。

トラブルを防ぐには、契約時に振込手数料の負担者を明確にし、請求書にも毎回「振込手数料は貴社負担でお願いいたします」と記載することが大切です。

また、もしフリーランス側が振込手数料を負担した場合は、支払手数料として経費処理するのが一般的です。源泉徴収や消費税、インボイス制度が関係する場合は、売上や経費の計上方法を誤らないよう注意しましょう。

振込手数料は1回あたり数百円でも、継続案件や複数の取引先で積み重なると大きな負担になります。小さな金額だからと我慢せず、請求書の文言、契約条件、銀行口座、入金サイクルを見直し、フリーランスとして損をしない仕組みを整えておきましょう。