フリーランスの経費率はいくらが目安?職種別平均・経費にできるもの・節税の注意点を解説
はじめに
フリーランスとして働いていると、「経費率はどのくらいが普通なのか」「自分の経費は多すぎるのではないか」と不安になることがあります。特に確定申告の時期になると、売上に対してどこまで経費にしてよいのか、税務署に疑われない範囲はあるのかが気になる人も多いでしょう。
フリーランスの経費率は、職種や働き方によって大きく異なります。在宅で働くITエンジニアやWebライターは経費率が低くなりやすい一方、カメラマン、動画編集者、物販、出張サービス業などは機材費・仕入費・交通費がかかるため、経費率が高くなる傾向があります。
この記事では、フリーランスの経費率の目安、計算方法、職種別の考え方、経費にできるもの・できないもの、節税時の注意点まで解説します。経費率を正しく把握すれば、納税額の予測や資金繰りの改善にも役立ちます。
1. フリーランスの経費率はいくらが目安?
1-1. 経費率の一般的な目安は売上の30〜50%程度
フリーランスの経費率は、一般的には売上の30〜50%程度がひとつの目安とされます。
たとえば、年間売上が500万円で経費が150万円なら、経費率は30%です。経費が250万円なら、経費率は50%になります。
ただし、この30〜50%という数字はあくまで目安です。実際には、パソコン1台で仕事ができる職種と、仕入れや設備投資が必要な職種では、適正な経費率がまったく異なります。
1-2. 経費率に法律上の上限はない
フリーランスの経費率には、「何%までなら経費にしてよい」という法律上の明確な上限はありません。
重要なのは、支出が事業に必要なものであるかどうかです。国税庁は、必要経費について「売上を得るために直接必要な費用」や「業務上必要な費用」を基本としており、家事関連費については業務に必要な部分を明確に区分できる場合に限り、必要経費にできるとしています。国税庁
つまり、経費率が何%かだけで判断されるのではなく、「その支出が事業に関係しているか」「金額に合理性があるか」「証拠書類を保存しているか」が重要です。
1-3. 経費率は職種・働き方・事業規模で大きく変わる
フリーランスの経費率は、次のような要素によって変わります。
・自宅で働くか、事務所や店舗を借りるか
・仕入れが必要なビジネスか
・高額な機材やソフトを使うか
・外注を活用しているか
・広告宣伝費をかけているか
・出張や移動が多いか
・売上規模が大きいか小さいか
同じWebデザイナーでも、在宅で一人で制作している人と、外注スタッフを使って制作案件を回している人では経費率が変わります。同じライターでも、取材費や出張費が多い人は経費率が高くなります。
1-4. 「経費率が高い=悪い」とは限らない理由
経費率が高いからといって、必ずしも問題があるわけではありません。
たとえば、売上を伸ばすために広告費を使った、撮影機材を購入した、外注費をかけて大型案件を受注したという場合、経費率が一時的に高くなることがあります。事業拡大のための投資であれば、経費率が高くても合理的に説明できます。
一方で、売上に関係のないプライベート支出を経費に入れている場合や、毎年赤字が続いているのに生活費のような支出が多い場合は注意が必要です。経費率そのものよりも、事業との関連性を説明できるかどうかが大切です。
2. フリーランスの経費率の計算方法
2-1. 経費率は「経費÷売上×100」で計算する
フリーランスの経費率は、次の計算式で求めます。
経費率=経費÷売上×100
ここでいう売上は、事業で得た収入の合計です。経費は、事業に必要な支出の合計です。
たとえば、売上が500万円、経費が150万円なら、150万円÷500万円×100=30%となります。
2-2. 売上500万円・経費150万円の場合の計算例
売上500万円、経費150万円の場合は、次のように計算します。
売上:500万円
経費:150万円
所得:350万円
経費率:150万円÷500万円×100=30%
この場合、売上から経費を差し引いた350万円が、事業所得のベースになります。青色申告特別控除や社会保険料控除などは、このあと所得計算・税額計算の中で反映されます。
2-3. 所得・利益・手取りとの違い
経費率を理解するには、「売上」「経費」「所得」「手取り」の違いを押さえておく必要があります。
売上は、取引先から受け取る報酬や販売代金です。経費は、売上を得るために使った事業上の支出です。所得は、売上から経費を差し引いた金額です。
一方、手取りは所得とは異なります。所得から所得税、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料などを支払ったあとに、実際に自由に使えるお金が手取りです。所得が多くても、税金や社会保険料の支払い時期を考えて資金を残しておかないと、資金繰りが苦しくなることがあります。
2-4. 経費率を把握すると納税額や資金繰りを予測しやすい
毎月の経費率を把握しておくと、年間所得や納税額を予測しやすくなります。
たとえば、毎月の売上が40万円、経費率が30%なら、月の経費は約12万円、所得は約28万円と見込めます。これを年間に換算すれば、おおよその事業所得を予測できます。
フリーランスは会社員と違い、税金や社会保険料を自分で管理しなければなりません。経費率を把握しておけば、「思ったより税金が高い」「納税資金が足りない」といった事態を防ぎやすくなります。
3. 職種別|フリーランスの経費率の目安
3-1. ITエンジニア・プログラマーの経費率
ITエンジニアやプログラマーの経費率は、10〜30%程度が目安です。
主な経費は、パソコン、モニター、キーボード、通信費、サーバー代、開発ツール、クラウドサービス、技術書、学習費、コワーキングスペース代などです。
在宅で案件を受けている場合、仕入れがほとんどないため経費率は低めになりやすいです。一方で、高性能なPCを定期的に買い替える、複数の有料ツールを使う、外注やチーム開発を行う場合は経費率が高くなることがあります。
3-2. Webデザイナー・イラストレーターの経費率
Webデザイナーやイラストレーターの経費率は、20〜40%程度が目安です。
主な経費には、デザインソフト、フォント、素材サイト、ペンタブレット、パソコン、モニター、ポートフォリオサイト制作費、印刷費、広告宣伝費などがあります。
制作環境に投資する職種のため、開業初年度や機材更新の年は経費率が高くなりがちです。ただし、継続的な仕入れが少ない場合は、売上が安定するにつれて経費率が下がることもあります。
3-3. Webライター・編集者の経費率
Webライターや編集者の経費率は、10〜30%程度が目安です。
主な経費は、パソコン、通信費、取材交通費、録音機材、書籍代、新聞・雑誌購読料、校正ツール、クラウドサービス、セミナー費などです。
在宅で執筆する案件が中心であれば、経費率は低めになります。ただし、取材案件、インタビュー記事、専門記事、撮影同行などが多い場合は、交通費や資料費が増えるため経費率が高くなることがあります。
3-4. 動画編集者・カメラマンの経費率
動画編集者やカメラマンの経費率は、30〜60%程度が目安です。
主な経費は、カメラ、レンズ、照明、マイク、三脚、編集用PC、ストレージ、編集ソフト、撮影スタジオ代、移動交通費、外注費などです。
特にカメラマンは機材費が高額になりやすく、動画編集者も高性能PCやストレージへの投資が必要です。案件によってはアシスタント費、モデル費、ロケ費、音源・素材費なども発生するため、他の在宅系フリーランスより経費率は高くなりやすいです。
3-5. コンサルタント・講師・士業の経費率
コンサルタント、講師、士業系フリーランスの経費率は、10〜35%程度が目安です。
主な経費は、交通費、会議費、資料作成費、専門書、セミナー参加費、広告宣伝費、Webサイト運営費、会計ソフト、税理士報酬、事務所費などです。
知識や経験を提供するビジネスのため、仕入れは少なめです。ただし、対面営業やセミナー開催が多い場合は、会場費、移動費、資料印刷費が増えることがあります。
3-6. 物販・ハンドメイド・小売系フリーランスの経費率
物販、ハンドメイド、小売系フリーランスの経費率は、50〜80%程度になることもあります。
主な経費は、商品仕入れ、材料費、梱包資材、送料、販売手数料、倉庫代、撮影費、広告費、ECサイト利用料などです。
物販系は売上に対して仕入れ原価が大きいため、経費率が高くなるのは自然です。経費率が高くても、粗利が残り、在庫管理や資金繰りが適切であれば問題とは限りません。
3-7. 美容師・セラピスト・出張サービス系の経費率
フリーランス美容師、セラピスト、整体師、出張サービス系の経費率は、30〜60%程度が目安です。
主な経費は、施術道具、消耗品、材料費、レンタルサロン代、交通費、ユニフォーム、広告宣伝費、予約システム利用料、保険料などです。
店舗やサロンを借りている場合は、家賃や水道光熱費が大きくなります。出張型の場合は、交通費や車両費が増えやすくなります。
3-8. 職種別の経費率を見るときの注意点
職種別の経費率は、あくまで目安です。同じ職種でも、働き方や案件単価によって適正な経費率は変わります。
重要なのは、同業他者と完全に同じ経費率にすることではありません。自分の事業に必要な支出を正しく記録し、売上に対して利益がどのくらい残っているかを把握することです。
4. フリーランスが経費にできるもの
4-1. 通信費・インターネット代
仕事で使うスマホ代、インターネット回線、Wi-Fi、クラウド電話などは、通信費として経費にできます。
ただし、プライベートでも使っている場合は、事業で使っている割合だけを経費にします。たとえば、スマホを仕事と私用で半分ずつ使っているなら、50%を経費にするなど、合理的な家事按分が必要です。
4-2. パソコン・スマホ・周辺機器
仕事に使うパソコン、スマホ、タブレット、モニター、プリンター、キーボード、マウス、外付けSSDなども経費の対象になります。
高額な機器は、購入した年に全額を経費にするのではなく、減価償却の対象になる場合があります。金額や制度によって処理方法が変わるため、購入時には会計ソフトや税理士に確認すると安心です。
4-3. ソフトウェア・クラウドサービス利用料
デザインソフト、動画編集ソフト、会計ソフト、チャットツール、オンラインストレージ、サーバー代、ドメイン代、予約システムなどは、事業に使っていれば経費にできます。
サブスクリプション型のサービスは毎月発生するため、固定費として管理しておくと経費率を把握しやすくなります。
4-4. 家賃・水道光熱費・家事按分
自宅で仕事をしているフリーランスは、家賃や水道光熱費の一部を経費にできる場合があります。
ただし、自宅の家賃や電気代をすべて経費にすることはできません。生活費と事業費が混ざる支出は家事関連費にあたり、業務に必要な部分を明確に区分できる金額だけが必要経費になります。国税庁
たとえば、仕事部屋の面積割合、使用時間、コンセントの使用状況などをもとに按分します。「なんとなく半分」ではなく、説明できる根拠を残しておくことが大切です。
4-5. 交通費・出張費
取引先との打ち合わせ、取材、撮影、セミナー登壇、出張などにかかった交通費は経費にできます。
電車代、バス代、タクシー代、飛行機代、宿泊費、レンタカー代などが対象です。交通系ICカードを使う場合は、利用履歴を保存し、どの案件のための移動だったか分かるようにしておきましょう。
4-6. 打ち合わせ費・接待交際費
取引先との打ち合わせに使ったカフェ代や会食費は、事業に関係していれば経費にできます。
ただし、単なる友人との食事やプライベートな飲食代は経費にできません。誰と、いつ、どの案件のために使ったのかを領収書やメモに残しておくと、事業との関連性を説明しやすくなります。
4-7. 書籍・セミナー・研修費
仕事に必要な書籍、専門誌、オンライン講座、セミナー参加費、資格更新費、研修費などは経費にできます。
たとえば、ライターが文章術や専門分野の書籍を購入する、エンジニアが技術書を買う、デザイナーがデザイン講座を受けるといった支出は、業務との関連性を説明しやすい経費です。
4-8. 広告宣伝費・ポートフォリオ制作費
Web広告、SNS広告、チラシ、名刺、ポートフォリオサイト、LP制作費、ロゴ制作費などは広告宣伝費として経費にできます。
フリーランスは営業活動も自分で行う必要があります。新規顧客獲得のための広告宣伝費は、将来の売上につながる投資として重要な経費です。
4-9. 外注費・業務委託費
案件の一部を他のフリーランスや専門家に依頼した場合、外注費や業務委託費として経費にできます。
たとえば、Web制作案件でコーディングを外注する、ライターが校正者に依頼する、動画編集者がナレーターに依頼する場合などです。契約書、請求書、振込記録を保存しておくと、経費としての根拠が明確になります。
4-10. 税理士報酬・会計ソフト利用料
税理士に確定申告を依頼した費用、記帳代行費、会計ソフトの利用料なども経費にできます。
フリーランスは、経理や税務を後回しにすると申告時に大きな負担になります。会計ソフトや税理士を活用することで、経費率の管理や節税対策もしやすくなります。
5. フリーランスが経費にできないもの・判断に迷いやすいもの
5-1. 事業に関係ないプライベート支出
事業に関係のないプライベート支出は、経費にできません。
たとえば、私的な旅行、家族との外食、趣味の買い物、日用品、個人的な美容代などは、原則として経費にはなりません。たとえ領収書があっても、事業との関連性を説明できなければ経費として認められない可能性があります。
5-2. 所得税・住民税は経費にできない
フリーランス本人にかかる所得税や住民税は、事業の必要経費にはできません。
これらは事業活動のために直接支払う費用ではなく、個人の所得に対して課される税金です。事業用口座から支払った場合でも、経費ではなく事業主貸などで処理します。
5-3. 国民健康保険料・国民年金は経費ではなく所得控除
国民健康保険料や国民年金保険料は、事業の経費ではありません。ただし、社会保険料控除の対象になります。
国税庁は、国民健康保険料・国民年金保険料などを社会保険料控除の対象として示しています。国税庁
つまり、経費率の計算には含めませんが、確定申告で所得控除として差し引くことで税負担を軽くできます。
5-4. スーツ・服・美容代は経費にできるケースが限られる
スーツ、普段着、美容院代、メイク代などは、経費にできるケースが限られます。
理由は、仕事でも使う一方で、私生活でも使える支出だからです。たとえば、講師業で撮影用の衣装を購入した、舞台・撮影・イベント出演のために特殊な衣装を用意したなど、業務専用であることを説明できる場合は経費にできる可能性があります。
一方、普段も着られるスーツや日常的な美容代は、経費として認められにくい支出です。
5-5. カフェ代・飲食代を経費にする際の注意点
カフェ代や飲食代は、目的によって経費にできるかどうかが変わります。
取引先との打ち合わせ、面談、商談、取材などで使った飲食代は、会議費や接待交際費として処理できる場合があります。一方、一人で作業するために入ったカフェ代は判断が分かれやすく、すべてを経費にするのは慎重に考えるべきです。
経費にする場合は、領収書に「誰と」「何のために」利用したかをメモしておきましょう。
5-6. 家族への支払いを経費にする場合の注意点
家族に仕事を手伝ってもらい、報酬を支払う場合は注意が必要です。
生計を一にする配偶者や親族に支払う給与は、原則として必要経費にできません。ただし、青色事業専従者給与など一定の要件を満たす場合は、必要経費にできる制度があります。国税庁
家族への支払いを経費にしたい場合は、事前の届出や勤務実態、金額の妥当性が重要です。安易に家族名義へ支払うと、税務上問題になる可能性があります。
6. 経費率が高すぎると税務調査の対象になる?
6-1. 同業種と比べて不自然に高い経費率は疑われやすい
経費率が高いだけで、必ず税務調査の対象になるわけではありません。
ただし、同業種と比べて明らかに経費率が高い、売上に対して利益が極端に少ない、プライベート支出が多く混ざっているように見える場合は、内容を確認される可能性があります。
特に、家賃、車両費、接待交際費、旅費交通費、消耗品費などは、私的利用と事業利用の区分が曖昧になりやすい項目です。
6-2. 売上に対して経費が多すぎる場合のリスク
売上に対して経費が多すぎると、「本当に事業に必要な支出なのか」「生活費を経費に入れていないか」と見られやすくなります。
たとえば、売上300万円に対して経費290万円という状態が毎年続いている場合、事業として利益を出す意思があるのか、プライベート支出が混ざっていないかを説明できるようにしておく必要があります。
ただし、開業初年度、設備投資をした年、広告費を集中的に使った年などは、一時的に経費率が高くなることもあります。その場合は、支出の目的と事業計画を説明できるようにしておきましょう。
6-3. 領収書・請求書・契約書を保存しておく
経費として計上する支出については、領収書、レシート、請求書、納品書、契約書、クレジットカード明細、振込記録などを保存しておきます。
国税庁は、個人事業者の帳簿や書類について保存期間を定めており、法定帳簿は7年、任意帳簿や請求書・領収書などの書類は原則5年の保存が必要です。また、消費税の課税事業者が仕入税額控除のために保存する請求書等や、インボイス発行事業者が交付した適格請求書の写し等は7年間保存が必要とされています。国税庁
保存していない経費は、あとから説明が難しくなるため、日頃から整理しておくことが大切です。
6-4. 事業との関連性を説明できる状態にしておく
経費で最も重要なのは、事業との関連性です。
「なぜその支出が必要だったのか」「どの売上につながるのか」「誰との取引に関係するのか」を説明できる状態にしておきましょう。
たとえば、飲食代なら同席者と打ち合わせ内容、交通費なら訪問先と案件名、書籍代なら業務との関係、外注費なら依頼内容と成果物を記録しておくと安心です。
6-5. 赤字が続く場合に注意すべきポイント
フリーランスは、開業直後や事業転換期に赤字になることがあります。赤字そのものが直ちに問題というわけではありません。
ただし、何年も赤字が続いている場合は、事業の継続性や経費の妥当性を見直す必要があります。売上を増やすための投資なのか、単に生活費を経費に入れているだけなのかで、税務上の見られ方は大きく変わります。
赤字が続く場合は、経費削減だけでなく、単価改善、集客方法、固定費、外注費、価格設定も見直しましょう。
7. フリーランスが経費率を適正に保つコツ
7-1. 毎月の経費を記録して経費率を確認する
経費率は、年に一度の確定申告時だけでなく、毎月確認するのが理想です。
月ごとに売上、経費、利益を確認すれば、「今月は広告費が多い」「機材購入で経費率が上がった」「固定費が増えている」といった変化に早く気づけます。
経費率を定期的に見ることで、無駄な支出を抑えながら、必要な投資にはお金を使えるようになります。
7-2. 家事按分のルールを明確にする
自宅兼事務所で働くフリーランスは、家事按分のルールを明確にしておきましょう。
家賃は仕事部屋の面積割合、電気代は使用時間や作業スペース、通信費は業務利用時間など、合理的な基準で按分します。
一度決めたルールは、毎月大きく変えずに継続することが大切です。根拠が曖昧だと、税務調査で説明しにくくなります。
7-3. 勘定科目を統一して管理する
同じ支出は、できるだけ同じ勘定科目で処理しましょう。
たとえば、毎月のインターネット代をある月は通信費、別の月は雑費にしていると、年間の経費を正確に把握しにくくなります。
勘定科目を統一すれば、どの経費が増えているのか、どの費用を見直すべきかが分かりやすくなります。
7-4. 領収書・レシートを整理する
領収書やレシートは、月ごと・勘定科目ごとに整理しておきましょう。
紙の領収書はファイルや封筒で保管し、電子データはフォルダや会計ソフトに保存します。クレジットカード明細や銀行明細と照合できるようにしておくと、申告作業がスムーズになります。
領収書がたまってから整理しようとすると、何の支出だったか思い出せなくなることがあります。できれば週1回、少なくとも月1回は整理しましょう。
7-5. 会計ソフトを使って経費を可視化する
会計ソフトを使えば、売上、経費、利益、経費率を自動で集計しやすくなります。
銀行口座やクレジットカードを連携すれば、入力の手間を減らせます。勘定科目ごとの支出も確認できるため、通信費、広告費、外注費、消耗品費などの増減を把握しやすくなります。
フリーランスにとって、会計ソフトは単なる確定申告ツールではなく、経営状況を確認するためのツールでもあります。
7-6. 経費を増やすより利益を残す視点を持つ
節税のために経費を増やそうと考える人もいますが、不要な支出を増やすと手元資金は減ります。
たとえば、税率が20%の人が10万円の不要な買い物をしても、税金が10万円減るわけではありません。節税効果は一部にとどまり、残りのお金は手元から出ていきます。
大切なのは、必要な経費を正しく計上し、不要な支出を抑え、利益を残すことです。フリーランスの経費率は、低ければよいわけでも高ければよいわけでもありません。事業を継続できる利益が残っているかを重視しましょう。
8. フリーランスができる節税対策
8-1. 青色申告特別控除を活用する
フリーランスが節税を考えるなら、まず青色申告を検討しましょう。
青色申告では、一定の要件を満たすことで最大65万円、55万円、または10万円の青色申告特別控除を受けられます。65万円控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存などが必要です。国税庁+1
青色申告は帳簿付けの手間がありますが、会計ソフトを使えば対応しやすくなります。
8-2. 小規模企業共済を活用する
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者などが将来の退職金を準備するための制度です。
掛金は月1,000円から70,000円まで設定でき、全額を所得控除できます。中小企業庁+1
経費ではなく所得控除ですが、課税所得を下げる効果があります。将来の廃業・退職時の資金準備にもなるため、利益が安定してきたフリーランスは検討する価値があります。
8-3. iDeCoを活用する
iDeCoは、自分で掛金を出して老後資金を準備する私的年金制度です。
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象とされており、所得税や住民税の負担軽減につながります。mhlw.go.jp
ただし、原則として老後資金を目的とした制度であり、途中で自由に引き出せるものではありません。節税効果だけでなく、資金拘束や運用リスクも理解したうえで利用しましょう。
8-4. 経営セーフティ共済を検討する
経営セーフティ共済は、取引先の倒産などによる連鎖倒産リスクに備える制度です。
個人事業主の場合、納付した掛金は事業所得の必要経費に算入できます。ただし、事業所得以外の収入については必要経費算入が認められない点や、解約後の再加入時に一定期間の掛金が必要経費にできない場合がある点に注意が必要です。共済サポート navi
節税目的だけで加入するのではなく、取引先リスクへの備えとして自分の事業に必要かを考えましょう。
8-5. 減価償却を正しく行う
高額なパソコン、カメラ、車両、設備などは、購入した年に全額を経費にするのではなく、原則として耐用年数に応じて少しずつ経費化する減価償却の対象になります。
減価償却を正しく行わないと、ある年だけ経費が過大になったり、逆に経費計上が漏れたりする可能性があります。
購入金額、使用開始日、事業利用割合、耐用年数を記録し、会計ソフトや税理士に確認しながら処理しましょう。
8-6. 消費税・インボイス制度の影響を確認する
フリーランスは、所得税だけでなく消費税の影響も確認する必要があります。
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった人は、一定の要件を満たす場合に2割特例の対象になります。また、国税庁は個人事業者について、令和9年・令和10年分の申告で3割特例を適用できる場合があると案内しています。国税庁+1
消費税の納税が必要になると、手取りや資金繰りに影響します。売上規模、取引先の要望、インボイス登録の有無、簡易課税制度との比較を確認しておきましょう。
8-7. 節税目的だけの不要な支出は避ける
節税対策で最も避けたいのは、不要な支出を増やして手元資金を減らすことです。
必要な経費を正しく計上することは大切ですが、「税金を減らしたいから何か買う」という考え方は危険です。利益が残らなければ、生活費、事業投資、納税資金、将来資金が不足します。
節税は、青色申告、小規模企業共済、iDeCo、減価償却、家事按分などを正しく活用することが基本です。
9. フリーランスの経費率に関するよくある質問
9-1. フリーランスの経費率は何%までなら安全?
フリーランスの経費率に「何%までなら絶対に安全」という基準はありません。
目安としては30〜50%程度に収まる人が多いですが、職種によっては10〜20%程度の人もいれば、物販のように70%以上になる人もいます。
安全かどうかは、経費率ではなく、事業との関連性、金額の妥当性、証拠書類の有無で判断されます。
9-2. 経費率が低すぎると損をする?
経費率が低いこと自体は悪いことではありません。利益率が高い事業であれば、経費率が低いのは自然です。
ただし、本来経費にできる支出を計上していない場合は、所得が過大になり、税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。
通信費、会計ソフト、書籍代、家事按分、交通費など、事業に関係する支出が漏れていないか確認しましょう。
9-3. 売上が少ない年は経費率が高くても問題ない?
売上が少ない年は、固定費や設備投資の影響で経費率が高くなることがあります。
たとえば、開業初年度にパソコンやソフトを購入した場合、売上がまだ少ないため経費率が高く見えることがあります。このような場合でも、事業に必要な支出であり、証拠書類が残っていれば説明しやすいです。
ただし、売上が少ない状態で不要な支出を増やすと資金繰りが苦しくなります。経費率だけでなく、手元資金も確認しましょう。
9-4. 領収書がない支出は経費にできる?
領収書がない支出でも、事業に必要であることを説明でき、支払いの事実を証明できる場合は経費にできる可能性があります。
たとえば、電車代は領収書が出ないこともあります。その場合は、日付、行き先、目的、金額を記録した出金伝票や交通費精算メモを残します。クレジットカード払いや銀行振込であれば、明細も証拠になります。
ただし、領収書や請求書がある方が説明しやすいため、可能な限り保存しておきましょう。
9-5. 開業前に使った費用は経費にできる?
開業準備のために使った費用は、開業費として処理できる場合があります。
開業費は繰延資産として扱われ、60か月の均等償却または任意償却ができるとされています。任意償却の場合、未償却残高を任意のタイミングで必要経費に算入できます。国税庁
たとえば、開業前に購入した名刺、Webサイト制作費、広告費、打ち合わせ費、セミナー費などが対象になる可能性があります。ただし、パソコンなどの固定資産は別の処理が必要になる場合があるため注意しましょう。
9-6. 税理士に相談すべき経費率の目安は?
次のような場合は、税理士に相談することをおすすめします。
・経費率が毎年70%を超えている
・赤字が何年も続いている
・家事按分の割合に自信がない
・外注費や家族への支払いが多い
・インボイス登録後の消費税負担が分からない
・売上が1,000万円前後になってきた
・税務調査に備えて帳簿を整えたい
税理士に相談すれば、経費にできるもの・できないものの判断だけでなく、青色申告、消費税、節税制度、資金繰りまで含めてアドバイスを受けられます。
まとめ
フリーランスの経費率は、一般的には売上の30〜50%程度が目安ですが、職種や働き方によって大きく変わります。ITエンジニアやWebライターのように経費率が低くなりやすい職種もあれば、物販、カメラマン、出張サービスのように経費率が高くなりやすい職種もあります。
経費率に法律上の上限はありません。大切なのは、支出が事業に必要なものか、金額に合理性があるか、領収書や請求書などの証拠を保存しているかです。
経費率を適正に保つには、毎月の売上と経費を記録し、家事按分のルールを明確にし、会計ソフトなどで可視化することが重要です。また、節税を考えるなら、不要な支出を増やすのではなく、青色申告特別控除、小規模企業共済、iDeCo、減価償却、インボイス制度への対応などを正しく活用しましょう。
フリーランスにとって経費率は、税金を減らすためだけの数字ではありません。利益を残し、事業を継続し、将来に備えるための重要な経営指標です。

