フリーランスは厚生年金に加入できる?会社員との違い・老後資金の不安を解消する年金対策

はじめに

フリーランスとして働き始めると、「会社員時代のように厚生年金に加入できるのか」「国民年金だけで老後資金は足りるのか」と不安になる方は少なくありません。特に、会社を退職して独立した人は、給与天引きで自動的に加入していた年金制度から、自分で手続き・納付する仕組みに変わるため、制度の違いを理解しておくことが大切です。

結論からいうと、個人事業主として働く一般的なフリーランスは、原則として厚生年金に任意加入することはできません。基本的には国民年金に加入し、必要に応じて国民年金基金、付加年金、iDeCo、小規模企業共済、新NISAなどを組み合わせて老後資金を準備していくことになります。日本の公的年金は、20歳以上60歳未満の人が加入する国民年金を土台に、会社員・公務員などが厚生年金にも加入する2階建て構造です。年金機構

この記事では、フリーランスが厚生年金に加入できるケース、会社員との年金制度の違い、退職後に必要な手続き、老後資金を増やすための具体的な対策までわかりやすく解説します。

1. フリーランスは厚生年金に加入できる?まず結論を解説

1-1. 個人事業主のフリーランスは原則として厚生年金に加入できない

個人事業主として働くフリーランスは、原則として厚生年金に加入できません。厚生年金は、会社などの適用事業所に使用される人が加入する制度であり、個人で事業を営むフリーランス本人は、通常「事業所に使用される者」には該当しないためです。日本年金機構も、個人事業所の事業主は通常、健康保険・厚生年金保険の被保険者にはならないと説明しています。年金機構

そのため、「フリーランスになったが厚生年金加入を続けたい」と思っても、個人事業主のまま自分の意思だけで厚生年金に入ることはできません。会社員時代に加入していた厚生年金は、退職によって資格を失い、その後は国民年金への切り替えが必要になります。

1-2. フリーランスが加入する基本の年金は国民年金

フリーランスが加入する基本の年金は、国民年金です。日本国内に住む20歳以上60歳未満の自営業者、学生、無職の人などは国民年金の第1号被保険者に該当します。厚生年金や共済組合に加入しておらず、第3号被保険者にも該当しないフリーランスは、原則として第1号被保険者として国民年金保険料を自分で納めます。年金機構

令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円です。会社員のように給与から自動で天引きされるのではなく、納付書、口座振替、クレジットカード、電子決済などを使って自分で納付する点が大きな違いです。年金機構

1-3. 厚生年金に加入できるフリーランスの例外パターン

フリーランスでも、働き方によっては厚生年金に加入できるケースがあります。たとえば、会社員として勤務しながら副業でフリーランス収入を得ている場合、本業の会社で厚生年金に加入します。また、個人事業を法人化して会社を設立し、役員報酬を受け取る場合は、法人事業所として社会保険の適用対象になる可能性があります。

株式会社などの法人事業所は、事業主のみの場合も厚生年金保険の適用事業所になります。さらに、従業員を常時5人以上使用する一定の個人事業所も、業種によっては適用事業所となります。年金機構

つまり、フリーランスという働き方そのものではなく、「会社に使用されているか」「法人の役員として報酬を受けているか」「勤務先が社会保険の適用事業所か」といった条件によって、厚生年金加入の可否が決まります。

1-4. 「厚生年金に入りたい」と考える人が多い理由

フリーランスが厚生年金に入りたいと考える大きな理由は、将来の年金額に差が出やすいからです。国民年金は老後の基礎部分を支える制度ですが、厚生年金は報酬に応じた上乗せ部分があります。会社員は国民年金と厚生年金の2階建てで老後資金を準備できますが、個人事業主のフリーランスは基本的に国民年金のみです。

令和8年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの人で月額70,608円です。一方、厚生年金の標準的な年金額の例では、平均的な収入で40年間就業した夫と専業主婦の夫婦2人分の老齢基礎年金を含め、月額237,279円とされています。年金機構

もちろん、実際の年金額は加入期間や収入、納付状況によって変わります。それでも、厚生年金があるかどうかは老後の収入に大きく影響するため、フリーランスにとって年金対策は早めに考えておきたいテーマです。

2. フリーランスと会社員の年金制度の違い

2-1. 会社員は国民年金+厚生年金の2階建て

会社員や公務員は、国民年金の第2号被保険者として厚生年金に加入します。厚生年金に加入している人は、同時に国民年金にも加入している扱いになります。つまり、会社員の年金は、1階部分の老齢基礎年金と、2階部分の老齢厚生年金で構成されます。年金機構

厚生年金は、給与や賞与に基づく標準報酬をもとに保険料や将来の年金額が計算されます。収入が高く、加入期間が長いほど、将来受け取る老齢厚生年金も増えやすくなります。

2-2. フリーランスは国民年金のみの1階建て

個人事業主のフリーランスは、基本的に国民年金のみの1階建てです。会社員のような厚生年金の報酬比例部分がないため、国民年金だけに頼ると老後の収入が限られやすくなります。

ただし、フリーランスは厚生年金に加入できない代わりに、国民年金基金、付加年金、iDeCo、小規模企業共済など、自分で上乗せする制度を選ぶことができます。会社員のように自動的に制度が整っているわけではないため、自分で情報を集め、必要な対策を選ぶ姿勢が重要です。

2-3. 保険料の負担方法の違い

会社員の厚生年金保険料は、毎月の給与や賞与をもとに計算され、事業主と本人が半分ずつ負担します。保険料率は18.3%で固定されており、本人負担分は給与から天引きされます。年金機構

一方、フリーランスが加入する国民年金は定額制です。所得が多い月も少ない月も、原則として同じ保険料を自分で納めます。収入が不安定なフリーランスにとっては、売上が落ちた月でも保険料負担が発生するため、資金繰りに注意が必要です。

2-4. 将来受け取れる年金額の違い

会社員は、国民年金に加えて厚生年金を受け取れるため、フリーランスよりも公的年金の受給額が多くなりやすい傾向があります。フリーランスは国民年金のみの場合、満額を受け取っても生活費のすべてをまかなうには不足する可能性があります。

ここで大切なのは、「フリーランスは年金が少ないから不利」と考えるだけでなく、「不足分をどう補うか」を早めに設計することです。年金制度だけでなく、事業収入、貯蓄、投資、退職金代わりの制度、保険などを組み合わせて、老後のキャッシュフローを作る必要があります。

2-5. 扶養・配偶者の年金の扱いの違い

会社員や公務員に扶養される配偶者は、一定条件を満たすと国民年金の第3号被保険者になります。第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、原則として年収130万円未満などの要件があります。年金機構

一方、フリーランス本人が国民年金第1号被保険者の場合、その配偶者も原則として第1号被保険者となり、それぞれが国民年金保険料を納める必要があります。会社員世帯では配偶者が第3号被保険者になれるケースがありますが、フリーランス世帯では夫婦それぞれの年金保険料が必要になる点に注意しましょう。

3. フリーランスが厚生年金に加入できるケース

3-1. 会社員として働きながら副業フリーランスをしている場合

会社員として勤務しながら、休日や平日の夜に副業フリーランスとして活動している場合、勤務先で厚生年金に加入します。この場合、副業収入があっても、個人事業主として別途厚生年金に加入するわけではありません。

たとえば、平日は会社で働き、土日にWeb制作やライティング、動画編集、コンサルティングなどを受注している人は、本業の会社で厚生年金に加入し、副業収入は確定申告で事業所得または雑所得として申告する形になります。

3-2. 法人化して役員報酬を受け取る場合

フリーランスが法人化し、自分の会社から役員報酬を受け取る場合、厚生年金に加入できる可能性があります。法人事業所は、事業主のみの場合でも厚生年金保険の適用事業所になります。日本年金機構のQ&Aでも、法人事業所で常時雇用される者が1人以上、事業主を含めて存在する場合は、社会保険への加入が必要とされています。年金機構

ただし、法人化すれば必ず有利になるとは限りません。役員報酬を設定すれば、厚生年金保険料だけでなく健康保険料も発生します。また、法人の会計処理、税務申告、社会保険手続きなどの事務負担も増えます。厚生年金加入を目的に法人化を検討する場合は、税理士や社会保険労務士に相談し、税金・社会保険料・事業規模を総合的に判断することが大切です。

3-3. 一定条件を満たすパート・アルバイトとして働く場合

フリーランスとして活動しながら、パート・アルバイトとして一定時間以上働く場合、その勤務先で厚生年金に加入することがあります。短時間労働者の社会保険加入は適用拡大が進んでおり、勤務時間、賃金、学生でないこと、勤務先の規模などの条件を満たすと、パート・アルバイトでも厚生年金や健康保険の対象になります。厚生労働省

また、短時間労働者の社会保険加入については、企業規模要件や賃金要件の見直しも進められています。フリーランス収入だけでは不安定な時期に、一定の雇用契約で働きながら厚生年金に加入するという選択肢もあります。厚生労働省

3-4. 配偶者の扶養に入る場合は厚生年金ではなく国民年金第3号被保険者

配偶者が会社員や公務員で、その扶養に入る場合、フリーランス本人は厚生年金に加入するのではなく、国民年金第3号被保険者になる可能性があります。第3号被保険者は、厚生年金に加入している配偶者に扶養されている人が対象です。年金機構

ここで注意したいのは、「扶養に入る=厚生年金に加入する」ではないことです。第3号被保険者は国民年金の種別の一つであり、本人が老齢厚生年金を積み上げるわけではありません。また、フリーランス収入が一定以上になると扶養から外れる可能性があるため、売上や所得の見込みをこまめに確認しましょう。

4. フリーランスが厚生年金に加入できない場合に必要な手続き

4-1. 会社を退職したら国民年金への切り替えが必要

会社を退職してフリーランスになる場合、厚生年金の資格を失うため、国民年金への切り替え手続きが必要です。日本国内に住む20歳以上60歳未満で厚生年金に加入していない人は、国民年金の第1号被保険者または第3号被保険者になります。第1号被保険者の加入手続きは、住所地の市区町村役場で行います。年金機構

退職後に手続きを忘れると、未加入や未納の期間が発生することがあります。退職日が決まったら、離職票や資格喪失証明書、基礎年金番号がわかる書類、本人確認書類など、必要なものを確認して早めに手続きしましょう。

4-2. 国民健康保険への切り替えも忘れずに行う

フリーランスになると、年金だけでなく健康保険の切り替えも必要です。会社の健康保険を失った場合、国民健康保険に加入する、任意継続を利用する、家族の健康保険の扶養に入るなどの選択肢があります。

国民健康保険に加入する場合、国民健康保険の被保険者になったときや脱退するときは、14日以内に住んでいる市町村の窓口へ届け出る必要があります。厚生労働省

年金と健康保険は別の制度ですが、退職後はどちらも生活を守る重要な手続きです。独立準備では、開業届や銀行口座、会計ソフトの準備に目が向きがちですが、社会保険の切り替えも優先度高く進めましょう。

4-3. 未加入・未納を放置するリスク

国民年金の未納を放置すると、将来の老齢基礎年金が少なくなるだけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の受給に影響する可能性があります。保険料免除・納付猶予を受けた期間は、一定の要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間に算入されますが、未納期間は老齢基礎年金の受給資格期間や年金額への反映がありません。年金機構

「今は若いから年金は関係ない」と考えるのは危険です。国民年金は老後だけでなく、病気やけがで障害が残ったとき、家族に万一のことがあったときの保障にも関係します。支払いが難しいときほど、未納のまま放置せず、免除や猶予の申請を検討しましょう。

4-4. 保険料の支払いが難しい場合の免除・猶予制度

収入が減ったときや開業直後で資金繰りが厳しいときは、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を利用できる場合があります。免除や猶予は、申請して承認されることで、未納とは異なる扱いになります。全額免除の期間は、老齢基礎年金を受け取る際に、全額納付した場合の2分の1が反映されます。年金機構

また、令和8年10月からは、国民年金第1号被保険者を対象とした育児免除制度も始まります。1歳になるまでの子を養育する実父母・養父母が対象で、一定の要件を満たす場合に国民年金保険料が免除されます。年金機構

フリーランスは収入変動が大きい働き方です。苦しい時期に無理をして未納にするのではなく、利用できる制度を確認することが重要です。

5. フリーランスが老後資金に不安を感じやすい理由

5-1. 厚生年金がないため年金受給額が少なくなりやすい

フリーランスが老後資金に不安を感じやすい最大の理由は、厚生年金がないことです。国民年金だけでは、会社員と比べて将来受け取れる公的年金が少なくなりやすくなります。

もちろん、国民年金は老後の大切な土台です。しかし、家賃、食費、医療費、介護費、税金、保険料などを考えると、国民年金だけで安心して暮らすのは簡単ではありません。特に単身者や賃貸住まいの人は、老後も固定費がかかるため、早めの上乗せ対策が必要です。

5-2. 収入が不安定で老後資金を計画しにくい

フリーランスは、会社員のように毎月決まった給与が入るとは限りません。案件が多い月もあれば、売上が落ちる月もあります。取引先の都合、景気、体調、スキルの陳腐化などによって収入が変動しやすく、長期的な積立計画を立てにくいのが現実です。

老後資金対策では、毎月大きな金額を積み立てることよりも、収入が少ない月でも続けられる仕組みを作ることが大切です。まずは生活防衛資金を確保し、そのうえで無理のない範囲で年金や資産形成制度を活用しましょう。

5-3. 退職金がない・少ないケースが多い

会社員は勤務先によって退職金制度や企業年金制度がある場合があります。一方、フリーランスには会社から支給される退職金がありません。事業をやめるときにまとまった資金が必要になっても、自分で準備していなければ老後資金が不足する可能性があります。

そのため、フリーランスは「自分で退職金を作る」という発想が重要です。小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者・役員などのための積み立てによる退職金制度で、掛金は全額所得控除の対象になります。中小企業基盤整備機構

5-4. 病気や働けなくなったときの保障が会社員より薄い

フリーランスは、自分が働けなくなると収入が止まりやすい働き方です。会社員であれば、健康保険の傷病手当金や勤務先の休職制度、有給休暇などを利用できる場合がありますが、フリーランスは自分で備えなければなりません。

老後資金対策を考えるときは、65歳以降の資金だけでなく、現役時代に病気やけがで働けなくなるリスクも考慮しましょう。生活防衛資金、所得補償保険、医療保険、障害年金の受給要件を満たすための保険料納付など、複数の備えが必要です。

6. フリーランスができる年金対策・老後資金対策

6-1. 国民年金基金で年金を上乗せする

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど国民年金第1号被保険者のために、老齢基礎年金へ上乗せする公的な年金制度です。国民年金基金連合会は、国民年金基金について、自営業・フリーランスなどのために老齢基礎年金へ上乗せする公的な年金制度と説明しています。npfa.or.jp

国民年金基金のメリットは、終身年金として老後の収入を増やせること、掛金が社会保険料控除の対象になることです。一方で、原則として途中解約ができない、掛金を長期間払い続ける必要がある、付加年金と併用できないといった注意点もあります。

安定した老後の年金収入を増やしたい人、長生きリスクに備えたい人に向いている制度です。

6-2. 付加年金で少額から将来の年金を増やす

付加年金は、国民年金第1号被保険者や任意加入被保険者が、定額保険料に月額400円を上乗せして納付することで、将来の老齢基礎年金を増やせる制度です。付加年金額は「200円×付加保険料を納付した月数」で計算されます。年金機構

たとえば、40年間付加保険料を納めると、200円×480月で年額96,000円が老齢基礎年金に上乗せされます。少額から始められるため、まず年金対策を始めたいフリーランスにとって取り組みやすい選択肢です。

ただし、国民年金基金に加入している人は付加保険料を納付できません。国民年金基金と付加年金のどちらを選ぶかは、掛金負担、将来の受取額、資金拘束の強さを比較して判断しましょう。

6-3. iDeCoで節税しながら老後資金を作る

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選び、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。フリーランスや自営業者など国民年金第1号被保険者も加入対象です。iDeCo公式サイト

iDeCoの大きな魅力は、掛金が全額所得控除になること、運用益が非課税で再投資されること、受取時にも一定の税制優遇があることです。第1号被保険者の拠出限度額は、国民年金基金や付加保険料との合算枠で月額6.8万円です。iDeCo公式サイト

一方で、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。また、投資信託などで運用する場合は元本割れの可能性があります。節税効果が大きいからといって生活資金まで拠出するのではなく、余裕資金の範囲で積み立てることが重要です。

6-4. 新NISAで長期的な資産形成を行う

新NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。2024年から制度が拡充され、つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円、合計で年間360万円まで利用できます。1人あたりの非課税保有限度額は1,800万円です。日本証券業協会

iDeCoと違い、新NISAは必要に応じて売却して現金化しやすい点が特徴です。そのため、老後資金だけでなく、住宅資金、教育資金、事業資金の予備など、幅広い目的に使いやすい制度です。

ただし、新NISAも投資である以上、元本保証はありません。短期間で大きく増やそうとするのではなく、長期・分散・積立を意識し、リスクを抑えながら資産形成に取り組みましょう。

6-5. 小規模企業共済で退職金代わりの資金を準備する

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者・役員などが、廃業や退職時に備えて資金を積み立てる制度です。いわばフリーランスの退職金づくりに使える制度で、掛金は月額1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、全額が所得控除の対象になります。中小企業基盤整備機構

フリーランスにとって、退職金がないことは大きな不安要素です。小規模企業共済を活用すれば、事業をやめるときや老後にまとまった資金を受け取れる可能性があります。

ただし、短期間で解約すると受取額が掛金合計を下回る場合があります。節税目的だけで加入するのではなく、長期的に掛金を払い続けられるかを確認してから利用しましょう。

6-6. 民間の個人年金保険を活用する

民間の個人年金保険は、保険会社に保険料を払い込み、将来、年金形式で受け取る商品です。一定の条件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を付加した契約であれば、個人年金保険料控除の対象になります。公益財団法人 生命保険文化センター

個人年金保険は、投資が苦手な人や、計画的に老後資金を準備したい人に向いています。一方で、途中解約時に元本割れする可能性、インフレに弱い商品があること、外貨建てや変額タイプでは為替リスクや運用リスクがあることに注意が必要です。

国民年金基金、iDeCo、新NISA、小規模企業共済などと比較し、自分の目的に合う場合のみ検討しましょう。

7. 厚生年金加入を目的に法人化するメリット・デメリット

7-1. 法人化すると社会保険に加入できる可能性がある

フリーランスが厚生年金に加入する方法として、法人化は有力な選択肢です。法人事業所は、事業主のみの場合でも厚生年金保険の適用事業所になるため、役員報酬を受け取る形にすれば社会保険加入の対象になります。年金機構

個人事業主のままでは厚生年金に加入できない人でも、法人化によって自分が会社から報酬を受け取る立場になれば、厚生年金の仕組みに入れる可能性があります。

7-2. 将来の年金額を増やせる可能性がある

法人化して厚生年金に加入すると、国民年金だけでなく老齢厚生年金も積み上がります。将来の年金額を増やしたい人にとっては大きなメリットです。

また、厚生年金は老後だけでなく、障害厚生年金や遺族厚生年金にも関係します。保障の幅を広げたい人にとって、法人化による社会保険加入は検討する価値があります。

7-3. 社会保険料の会社負担が発生する

法人化の注意点は、社会保険料の負担が増えることです。厚生年金保険料は本人と事業主が半分ずつ負担しますが、自分が設立した法人の場合、会社負担分も実質的には自分の事業コストになります。年金機構

個人事業主時代の国民年金保険料と国民健康保険料より、法人化後の社会保険料の方が重くなるケースもあります。役員報酬を高く設定すれば将来の年金額は増えやすくなりますが、その分、毎月の社会保険料も増えます。

7-4. 事務手続きや税務負担が増える

法人化すると、社会保険手続きだけでなく、法人税申告、役員報酬の設定、源泉所得税、年末調整、法定調書、社会保険の算定基礎届など、さまざまな事務負担が発生します。

また、税理士費用、社会保険労務士費用、法人住民税の均等割、登記費用なども考える必要があります。売上が十分でない段階で法人化すると、厚生年金加入のメリットよりも固定費や事務負担の方が重くなる可能性があります。

7-5. 法人化すべきか判断するポイント

法人化を検討する際は、厚生年金加入だけで判断しないことが大切です。主な判断ポイントは、年間所得、事業の継続性、取引先からの信用、消費税や所得税・法人税の負担、社会保険料、家族構成、将来の働き方です。

特に、法人化後は「会社負担分の社会保険料」も事業の固定費になります。売上が不安定なフリーランスは、役員報酬を無理に高く設定すると資金繰りが厳しくなることがあります。法人化は、税理士や社会保険労務士にシミュレーションを依頼し、複数年の視点で判断しましょう。

8. フリーランスが年金対策を考えるときの注意点

8-1. 年金制度だけで老後資金をまかなおうとしない

フリーランスの老後資金対策では、公的年金だけに頼らないことが大切です。国民年金は老後の基礎収入になりますが、それだけで生活費をすべてまかなうのは難しい可能性があります。

年金対策は、国民年金をきちんと納めることを土台に、国民年金基金、付加年金、iDeCo、小規模企業共済、新NISA、預貯金、事業収入などを組み合わせて考えましょう。

8-2. 節税効果だけで制度を選ばない

iDeCoや小規模企業共済は節税効果が大きい制度ですが、節税だけを目的に加入すると失敗することがあります。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、小規模企業共済も短期解約では不利になる場合があります。

節税はあくまでメリットの一つです。資金拘束、元本割れリスク、受取時の税金、手数料、途中で収入が減った場合の対応なども含めて判断しましょう。

8-3. 途中解約や資金拘束の有無を確認する

老後資金対策の制度には、すぐに現金化できるものと、長期間引き出せないものがあります。iDeCoは原則60歳まで引き出せません。国民年金基金も原則として任意脱退ができません。小規模企業共済も退職金目的の制度であり、短期解約には注意が必要です。

一方、新NISAは比較的現金化しやすい制度です。緊急資金までiDeCoなどに入れてしまうと、急な病気、売上減少、設備投資、税金支払いに対応できなくなる可能性があります。まずは生活費の数カ月分を預貯金で確保し、その後に長期資金を積み立てましょう。

8-4. 収入や家族構成に合わせて制度を組み合わせる

最適な年金対策は、人によって異なります。単身のフリーランス、配偶者が会社員のフリーランス、子育て中のフリーランス、法人化を検討しているフリーランスでは、必要な保障や資金計画が違います。

たとえば、収入がまだ不安定な人は付加年金や少額の新NISAから始めるのも一案です。所得が安定してきた人は、iDeCoや小規模企業共済の掛金を増やすことで節税と老後資金準備を両立できます。老後に終身で受け取れる年金を増やしたい人は、国民年金基金も検討候補になります。

8-5. 迷ったら年金事務所や専門家に相談する

年金や社会保険の制度は複雑で、家族構成、働き方、収入、年齢によって最適な選択が変わります。会社を退職してフリーランスになるとき、法人化するとき、配偶者の扶養に入るか迷うときは、年金事務所、市区町村の窓口、税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどに相談しましょう。

特に、法人化や扶養の判断は、年金だけでなく健康保険、税金、事業収支にも影響します。インターネット上の一般論だけで決めず、自分の状況に合ったシミュレーションを行うことが大切です。

9. フリーランスの厚生年金加入に関するよくある質問

9-1. フリーランスでも任意で厚生年金に加入できる?

個人事業主のフリーランスが、自分の意思だけで任意に厚生年金へ加入することはできません。厚生年金は、原則として適用事業所に使用される人が加入する制度です。個人事業主本人は通常、事業所に使用される者には該当しないため、被保険者になりません。年金機構

厚生年金に加入したい場合は、会社員として働く、一定条件を満たすパート・アルバイトとして勤務する、法人化して役員報酬を受け取るなどの方法を検討する必要があります。

9-2. 個人事業主が従業員を雇ったら厚生年金は必要?

個人事業主が従業員を雇った場合、従業員数や業種によっては厚生年金の適用事業所になることがあります。常時5人以上の従業員を使用する一定の個人事業所は、農林漁業や一部サービス業などを除き、厚生年金保険の適用事業所になります。年金機構

ただし、個人事業所が適用事業所になっても、個人事業主本人は通常、厚生年金の被保険者にはなりません。従業員の社会保険加入義務と、事業主本人の年金制度は分けて考えましょう。

9-3. 副業フリーランスの場合、年金はどうなる?

会社員として厚生年金に加入しながら副業フリーランスをしている場合、年金は勤務先の厚生年金が基本です。副業で開業届を出していても、本業の会社で厚生年金に加入していれば、国民年金第1号被保険者に切り替える必要はありません。

ただし、副業ではなく複数の会社で勤務し、それぞれで社会保険の加入要件を満たす場合は、2カ所以上勤務の手続きが必要になることがあります。働き方が複雑な場合は、勤務先や年金事務所に確認しましょう。

9-4. 配偶者の扶養に入れば年金保険料は不要?

会社員や公務員の配偶者の扶養に入り、国民年金第3号被保険者に該当する場合、本人が国民年金保険料を個別に納める必要はありません。ただし、第3号被保険者になるには、原則として年収130万円未満などの要件があり、厚生年金の加入要件に該当する場合は第3号被保険者にはなりません。年金機構

フリーランスの場合、収入ではなく所得や継続的な収入見込みが判断に影響することがあります。扶養に入れるかどうかは、配偶者の勤務先や健康保険組合に確認しましょう。

9-5. 厚生年金に入れないフリーランスは何から始めるべき?

まずは、国民年金への加入手続きと保険料納付を確実に行いましょう。未納を防ぐことが、老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金の備えにもつながります。支払いが難しい場合は、免除や納付猶予制度を利用できるか確認してください。年金機構

そのうえで、少額から始めやすい付加年金、節税しながら老後資金を作れるiDeCo、退職金代わりになる小規模企業共済、流動性のある新NISAなどを検討しましょう。最初から完璧な老後資金計画を作る必要はありません。収入が増えたら掛金を増やす、家族構成が変わったら保障を見直すなど、段階的に整えていくことが大切です。

まとめ

フリーランスは、個人事業主として働く限り、原則として厚生年金に加入できません。基本的には国民年金の第1号被保険者として保険料を自分で納めることになります。会社員は国民年金と厚生年金の2階建てですが、フリーランスは国民年金のみの1階建てになりやすいため、老後資金への不安を感じやすいのは自然なことです。

ただし、フリーランスでも厚生年金に加入できるケースはあります。会社員として働きながら副業フリーランスをする場合、法人化して役員報酬を受け取る場合、一定条件を満たすパート・アルバイトとして勤務する場合などです。一方、配偶者の扶養に入る場合は厚生年金ではなく、国民年金第3号被保険者になる点に注意しましょう。

厚生年金に加入できない場合でも、老後資金対策は可能です。国民年金基金、付加年金、iDeCo、新NISA、小規模企業共済、個人年金保険などを組み合わせれば、国民年金だけでは足りない部分を補えます。

重要なのは、「フリーランスだから年金が少ない」と不安になるだけで終わらせないことです。まずは国民年金の未納を防ぎ、生活防衛資金を確保し、自分の収入や家族構成に合う制度を少しずつ取り入れましょう。年金制度は複雑ですが、早めに理解して対策を始めれば、フリーランスでも老後資金の不安を着実に減らせます。