フリーランスは従業員になる?違い・契約形態・雇用時の注意点をわかりやすく解説
はじめに
「フリーランスに継続的に仕事を依頼しているが、従業員として雇用した方がよいのか」「フリーランスとして働いているけれど、実態は会社員に近いのではないか」と悩む企業担当者や個人は少なくありません。
フリーランスと従業員は、働く相手が同じ企業であっても、契約形態・指揮命令関係・報酬・社会保険・税金・労働法上の保護が大きく異なります。原則として、フリーランスは企業に雇用される「従業員」ではなく、業務委託契約などに基づいて仕事を請け負う個人事業主・外部パートナーです。
ただし、契約書に「業務委託」と書かれていても、実際の働き方が従業員に近ければ、労働基準法上の「労働者」と判断される可能性があります。厚生労働省も、労働者性は契約の形式や名称ではなく、実態を踏まえて総合的に判断されるとしています。厚生労働省+1
この記事では、フリーランスと従業員の違い、フリーランスが従業員と判断されるケース、企業がフリーランスを雇用する際の注意点、業務委託のまま取引する場合のポイントをわかりやすく解説します。
1. フリーランスは従業員になる?まず押さえたい結論
1-1. フリーランスは原則「従業員」ではなく個人事業主・業務委託先
フリーランスは、一般的に企業と雇用契約を結ぶのではなく、業務委託契約・請負契約・準委任契約などに基づいて仕事を受ける個人事業主です。そのため、会社の指揮命令を受けて働く従業員とは異なり、業務の進め方や働く時間、場所について一定の裁量を持つのが基本です。
従業員は、会社に雇用され、会社の指揮命令のもとで労務を提供し、その対価として給与を受け取ります。一方、フリーランスは、成果物の納品や特定業務の遂行に対して報酬を受け取る立場です。
つまり、「同じ会社の仕事をしている」だけでは従業員とはいえません。重要なのは、契約の名称だけでなく、実際にどのような働き方をしているかです。
1-2. 契約内容や働き方によっては「労働者」と判断される場合がある
フリーランスであっても、実態として企業の指揮監督下で働いている場合は、労働基準法上の労働者と判断される可能性があります。
厚生労働省は、労働基準法上の労働者性について、「他人の指揮監督下で労務を提供しているか」「報酬が指揮監督下の労働の対価として支払われているか」を中心に判断するとしています。さらに、仕事の依頼を断れるか、業務遂行上の指揮監督があるか、時間的・場所的拘束があるか、事業者性があるかなども総合的に見られます。厚生労働省
そのため、契約書上は「業務委託契約」となっていても、実際には会社員と同じように勤務時間を管理され、上司から具体的な指示を受け、労働時間に応じて報酬が支払われている場合は注意が必要です。
1-3. 企業がフリーランスを雇用する場合は契約形態の整理が重要
企業がフリーランスを従業員として迎える場合は、これまでの業務委託契約と雇用契約を明確に切り分ける必要があります。
業務委託契約のまま実態だけを従業員に近づけると、偽装請負や労働者性の問題が生じる可能性があります。一方で、正式に雇用契約へ切り替える場合は、労働条件の明示、給与計算、社会保険・労働保険、勤怠管理、就業規則の適用など、労務管理の体制を整えなければなりません。
特に、2024年4月からは労働条件明示のルールが改正され、すべての労働者に対して就業場所・業務内容の変更範囲などの明示が必要になっています。厚生労働省
1-4. フリーランス本人も従業員化によるメリット・デメリットを理解する必要がある
フリーランスが従業員になると、収入の安定、社会保険や福利厚生、労働法上の保護といったメリットがあります。一方で、働く時間や場所の自由度が下がり、副業や取引先が制限される可能性もあります。
従業員化は、単に「安定する」「会社員になる」という話ではありません。自分の働き方、収入目標、キャリアの方向性に合っているかを慎重に判断することが大切です。
2. フリーランスと従業員の違い
2-1. 契約形態の違い:業務委託契約と雇用契約
フリーランスと従業員の最も大きな違いは、契約形態です。
フリーランスは、企業と業務委託契約を結ぶのが一般的です。業務委託契約では、特定の業務や成果物に対して報酬が支払われます。たとえば、Webサイト制作、記事執筆、システム開発、デザイン制作、コンサルティングなどが該当します。
一方、従業員は企業と雇用契約を結びます。雇用契約では、従業員が会社の指揮命令のもとで労務を提供し、会社が給与を支払います。
業務委託契約は「仕事の完成」や「業務の遂行」に重点があり、雇用契約は「労務の提供」に重点があると考えると理解しやすいでしょう。
2-2. 指揮命令関係の有無
従業員は、会社の指揮命令を受けて働きます。上司から業務内容、優先順位、進め方、勤務時間などについて指示を受けることが一般的です。
一方、フリーランスは独立した事業者であるため、企業は業務の目的や成果物の条件を示すことはできても、従業員と同じように日々の働き方を細かく指揮命令することは適切ではありません。
たとえば、「この仕様で成果物を納品してください」という依頼は業務委託でも自然ですが、「毎日9時に出社し、上司の指示どおりに作業してください」という運用は雇用に近くなります。
2-3. 勤務時間・勤務場所の自由度
フリーランスは、原則として勤務時間や勤務場所を自分で決められます。納期や打ち合わせ時間を守る必要はありますが、どの時間帯に作業するか、どこで作業するかは本人の裁量に委ねられるのが基本です。
従業員の場合は、会社が定めた勤務時間や勤務場所に従う必要があります。出社時間、退勤時間、休憩時間、休日なども会社の就業規則や雇用契約に基づいて管理されます。
ただし、近年はリモートワークやフレックスタイム制を導入する企業も増えており、従業員であっても柔軟な働き方が可能な場合があります。それでも、労働時間管理や業務命令の有無という点では、フリーランスとは異なります。
2-4. 報酬の考え方:成果報酬・業務報酬と給与
フリーランスの報酬は、成果物や業務内容に対して支払われるのが一般的です。たとえば、「記事1本あたり〇円」「月額〇円で運用業務を担当」「プロジェクト完了時に〇円」といった形です。
従業員の報酬は給与です。月給、時給、日給などの形で、労働時間や雇用条件に応じて支払われます。残業が発生した場合は、法令に基づき割増賃金の支払いが必要になることもあります。
報酬が成果ではなく、勤務時間に応じて支払われている場合は、フリーランス契約であっても労働者性を判断する要素の一つになります。
2-5. 社会保険・労働保険の加入条件
従業員として雇用される場合、勤務条件に応じて健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの対象になります。
日本年金機構は、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は厚生年金保険の被保険者になるとしています。また、パート・アルバイトでも通常の労働者の4分の3以上の所定労働時間・所定労働日数で働く場合は被保険者となります。短時間労働者についても、企業規模や週所定労働時間などの要件を満たす場合は健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。年金ネット+1
一方、フリーランスは原則として自分で国民健康保険や国民年金に加入します。雇用保険や労災保険も、従業員と同じ形で当然に適用されるわけではありません。
2-6. 税金の扱い:確定申告と年末調整
フリーランスは、事業所得や雑所得などを自分で計算し、原則として確定申告を行います。経費の計上、帳簿付け、請求書管理、消費税の確認なども本人の責任で行う必要があります。
従業員は、会社から給与を受け取り、会社が源泉徴収や年末調整を行うのが一般的です。国税庁は、大部分の給与所得者は給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了すると説明しています。ただし、副業所得がある場合や一定の条件に該当する場合は、従業員でも確定申告が必要になることがあります。国税庁
2-7. 労働基準法などの保護対象になるか
従業員は、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関係法令による保護を受けます。労働時間、休憩、休日、残業代、有給休暇、解雇などについて、会社は法令に沿った対応をしなければなりません。
フリーランスは独立した事業者であるため、原則として従業員向けの労働法上の保護はそのまま適用されません。ただし、実態として労働者と判断される場合は、労働関係法令の保護対象になる可能性があります。
3. フリーランスが従業員と判断されるケース
3-1. 企業から具体的な指揮命令を受けている
フリーランスであっても、企業から日々の作業内容、手順、優先順位、進め方について細かく指示されている場合は、従業員に近い働き方と見られる可能性があります。
たとえば、上司にあたる社員が毎日作業を割り振り、進捗を細かく管理し、本人に業務の進め方を選ぶ余地がほとんどない場合は注意が必要です。
業務委託では、依頼内容や成果物の条件を明確にすることは重要ですが、労務提供そのものを管理するような指揮命令は避けるべきです。
3-2. 勤務時間や勤務場所が厳格に決められている
「毎日9時から18時まで勤務」「必ず会社のオフィスで作業」「休憩時間も会社が指定」といった形で、勤務時間や勤務場所が従業員と同じように管理されている場合、労働者性を判断する要素になり得ます。
もちろん、セキュリティ上の理由で一定の場所で作業する必要がある場合や、打ち合わせ時間を指定する場合もあります。しかし、常に会社が時間と場所を拘束している場合は、業務委託としての独立性が弱くなります。
3-3. 業務の進め方に裁量がほとんどない
フリーランスは、専門性や経験をもとに業務を遂行する独立した事業者です。そのため、業務の手順や方法について一定の裁量があることが通常です。
一方、会社が細かな作業手順を指定し、本人が方法を選べない場合は、従業員に近い働き方と判断される可能性があります。
たとえば、デザイナーに成果物の要件やブランドガイドラインを伝えることは問題ありません。しかし、作業順序、使用ツール、毎日の作業時間、確認の頻度まで細かく管理する場合は、指揮命令に近づきます。
3-4. 報酬が成果ではなく労働時間に対して支払われている
業務委託契約でも、時間単価や月額固定報酬を設定することはあります。ただし、その報酬が実質的に「働いた時間への対価」となっている場合は、労働者性の判断材料になります。
たとえば、成果物の有無にかかわらず、会社に拘束された時間に応じて報酬が支払われている場合、給与に近い性質を持つ可能性があります。
業務委託の場合は、報酬の対象が「どの業務」「どの成果物」「どの範囲」に対するものなのかを契約書で明確にすることが重要です。
3-5. 他社案件の受注が制限されている
フリーランスは独立した事業者であり、複数の取引先と仕事をすることが一般的です。
企業が合理的な理由なく他社案件の受注を広く制限したり、専属的に働くことを強く求めたりすると、従業員に近い関係と見られる可能性があります。
もちろん、競業避止や秘密保持の観点から一定の制限を設けることはあります。ただし、制限する場合は、目的・範囲・期間を必要最小限にし、契約書で明確に定めることが大切です。
3-6. 業務に必要な設備や道具を企業側が用意している
業務に必要なパソコン、ソフトウェア、作業場所、備品などをすべて企業側が用意し、本人が事業者としての設備を持たない場合も、従業員性を補強する要素になることがあります。
ただし、情報セキュリティや機密情報管理のために、会社指定の端末や環境を使うケースもあります。その場合でも、業務委託であること、成果物や業務範囲、管理方法を明確にしておくことが必要です。
3-7. 契約書上は業務委託でも実態が雇用に近い場合
最も注意すべきなのは、契約書の名称だけを業務委託にしているケースです。
契約書に「業務委託契約」と記載していても、実態として会社の指揮命令下で働き、勤務時間を拘束され、報酬が労働時間に対して支払われている場合は、労働者と判断される可能性があります。
労働者性は、契約の名称ではなく実態で判断されます。企業は、契約書と実際の運用が一致しているかを定期的に確認する必要があります。厚生労働省
4. フリーランスを従業員として雇用する主な契約形態
4-1. 正社員として雇用する
フリーランスを長期的に自社の中核人材として迎えたい場合は、正社員として雇用する方法があります。
正社員は、一般的に期間の定めのない雇用契約を結び、会社の組織の一員として継続的に働きます。責任ある業務を任せやすく、社内ノウハウの蓄積や長期的な育成にも向いています。
一方で、企業側には人件費、社会保険料、労務管理、評価制度、配置転換などの責任が発生します。フリーランス本人にとっても、自由度が下がる可能性があります。
4-2. 契約社員として雇用する
契約社員は、期間の定めがある雇用契約です。特定のプロジェクトや一定期間の業務に合わせて雇用したい場合に向いています。
たとえば、新規サービスの立ち上げ、システム移行、広報体制の強化など、一定期間に専門人材が必要な場合に活用しやすい形態です。
ただし、有期雇用契約の場合は、契約期間、更新の有無、更新基準、更新上限などを明確にする必要があります。2024年4月以降、有期契約労働者については更新上限などの明示事項も強化されています。厚生労働省
4-3. パート・アルバイトとして雇用する
業務量が限定的な場合や、週数日・短時間で働いてもらいたい場合は、パート・アルバイトとして雇用する方法もあります。
パート・アルバイトであっても、雇用契約を結ぶ以上、労働基準法などの対象になります。勤務条件によっては、社会保険や雇用保険の加入対象になる場合もあります。
「短時間だから簡単に雇える」と考えるのではなく、労働条件の明示、勤怠管理、休憩、休日、有給休暇などを適切に管理する必要があります。
4-4. 副業・兼業人材として雇用する
フリーランス本人が他の仕事を続けながら、企業の従業員として一部の業務を担うケースもあります。たとえば、週2日だけ雇用契約で働き、他の日は個人事業主として別案件を行うような形です。
この場合、雇用契約の範囲と業務委託・副業の範囲を明確に区別することが重要です。勤務時間、業務内容、秘密保持、競業避止、成果物の権利帰属などを整理しておかないと、トラブルにつながる可能性があります。
4-5. 業務委託契約から雇用契約へ切り替える
すでに業務委託で取引しているフリーランスを、途中から従業員として雇用することも可能です。
この場合は、既存の業務委託契約を終了するのか、一部だけ残すのかを明確にする必要があります。業務委託契約と雇用契約が同時に存在する場合、どの業務がどちらの契約に基づくものかを分けなければなりません。
曖昧なまま切り替えると、報酬、労働時間、知的財産権、経費、社会保険などの扱いで混乱が生じます。
4-6. 契約形態ごとの向いているケース
正社員は、長期的に自社の中核業務を任せたい場合に向いています。契約社員は、期間やプロジェクトが決まっている場合に適しています。パート・アルバイトは、短時間・限定的な業務に向いています。副業・兼業人材としての雇用は、専門性を活かしながら柔軟に関わってもらいたい場合に有効です。
重要なのは、「どの形態が一番よいか」ではなく、業務内容、必要な関与度、働き方、本人の希望、労務管理体制に合った契約形態を選ぶことです。
5. フリーランスが従業員になるメリット・デメリット
5-1. メリット:収入が安定しやすい
フリーランスは案件単位で収入が変動しやすく、契約終了や発注減少によって売上が大きく下がることがあります。
従業員になると、毎月の給与が支払われるため、収入が安定しやすくなります。住宅ローン、賃貸契約、家計管理、将来設計の面でも安心感が高まります。
特に、継続案件に依存しているフリーランスにとっては、従業員化によって収入リスクを下げられる可能性があります。
5-2. メリット:社会保険や福利厚生を受けられる
従業員になると、勤務条件に応じて健康保険や厚生年金保険に加入できます。企業によっては、通勤手当、健康診断、育児・介護制度、休暇制度、研修制度などの福利厚生も利用できます。
フリーランスは、保険や年金、休業時の備えを自分で整える必要があります。そのため、社会保険や福利厚生を重視する人にとって、従業員化は大きなメリットです。
5-3. メリット:労働法上の保護を受けやすい
従業員は、労働基準法などの保護対象になります。労働時間、休憩、休日、残業代、有給休暇、解雇などについて、会社は法令に基づいて対応しなければなりません。
フリーランスの場合、契約上のトラブルは民事上の問題として扱われることが多く、労働者と同じ保護を受けられるとは限りません。
安心して働ける環境を重視する場合、従業員になるメリットは大きいでしょう。
5-4. デメリット:働き方の自由度が下がる
フリーランスの大きな魅力は、働く時間、場所、案件、取引先を自分で選びやすいことです。
従業員になると、会社の勤務時間、就業規則、業務命令に従う必要があります。リモートワークやフレックス制度があっても、完全に自由に働けるわけではありません。
自分の裁量で仕事を進めたい人にとっては、従業員化によって窮屈さを感じる可能性があります。
5-5. デメリット:収入の上限が決まりやすい
フリーランスは、単価交渉、複数案件の受注、事業拡大によって収入を伸ばせる可能性があります。もちろん収入が不安定になるリスクもありますが、成果次第で大きく増やせる点は魅力です。
従業員になると、給与テーブルや評価制度に基づいて収入が決まることが一般的です。安定する一方で、短期間で大きく収入を伸ばすのは難しくなる場合があります。
5-6. デメリット:副業や取引先の制限が生じる場合がある
従業員になると、会社の就業規則や副業規程に従う必要があります。副業が認められている企業でも、競合企業との取引、会社の機密情報を利用する業務、長時間労働につながる副業などは制限されることがあります。
フリーランス時代の取引先と継続して仕事をしたい場合は、入社前に副業・兼業の可否を確認しておくことが重要です。
5-7. 従業員化が向いているフリーランスの特徴
従業員化が向いているのは、収入の安定を重視したい人、ひとつの企業や事業に深く関わりたい人、チームで働きたい人、社会保険や福利厚生を重視する人です。
一方で、複数の取引先と自由に働きたい人、自分の事業を拡大したい人、働く時間や場所を自分で決めたい人は、フリーランスを続ける方が合っている場合もあります。
6. 企業がフリーランスを雇用するメリット・デメリット
6-1. メリット:優秀な外部人材を継続的に確保できる
フリーランスとして実績のある人材を従業員として雇用できれば、専門性の高い人材を継続的に確保できます。
業務委託では、他社案件との兼ね合いや契約終了のリスクがあります。雇用することで、より長期的に自社の事業へ関わってもらいやすくなります。
特に、事業成長に不可欠な役割を担っているフリーランスについては、雇用によって組織の安定性を高められます。
6-2. メリット:ノウハウや業務品質を社内に蓄積できる
業務委託では、成果物は得られても、業務プロセスやノウハウが社内に残りにくいことがあります。
従業員として雇用すれば、業務の進め方、判断基準、改善ノウハウを社内に蓄積しやすくなります。また、他の従業員への教育や仕組み化にもつなげやすくなります。
6-3. メリット:情報管理や業務管理をしやすくなる
フリーランスに機密情報や社内システムへのアクセスを許可する場合、情報管理が課題になります。
従業員として雇用すれば、就業規則、情報セキュリティ規程、社内ルールを適用しやすくなります。業務報告、勤怠管理、権限管理、評価制度にも組み込みやすくなり、組織として管理しやすくなります。
6-4. デメリット:人件費や社会保険料の負担が増える
フリーランスへの報酬は外注費として扱われることが一般的ですが、従業員として雇用すれば給与、社会保険料の会社負担分、福利厚生費、教育費などが発生します。
単純に月額報酬だけを比較するのではなく、総人件費としてどれだけの負担になるかを試算する必要があります。
6-5. デメリット:労務管理の責任が発生する
従業員を雇用する場合、企業には労働時間、休憩、休日、残業、有給休暇、健康管理、安全配慮などの責任が発生します。
フリーランスとの業務委託では不要だった勤怠管理や評価制度、労務手続きも必要になります。管理体制が整っていないまま雇用すると、労務トラブルにつながる可能性があります。
6-6. デメリット:契約条件の見直しや社内体制の整備が必要になる
業務委託から雇用に切り替える場合、報酬、業務範囲、責任、勤務時間、勤務地、知的財産権、秘密保持、副業可否などを見直す必要があります。
また、社内の受け入れ体制も重要です。配属部署、上司、評価基準、業務フロー、使用ツール、権限設定などを事前に整えておくことで、スムーズな移行ができます。
6-7. 雇用するべきか業務委託を継続するべきかの判断基準
雇用するべきかどうかは、以下の観点で判断するとよいでしょう。
継続的に自社の業務へ深く関わってもらう必要がある場合、指揮命令や勤怠管理が必要な場合、社内情報へのアクセスが多い場合、長期的に育成・評価したい場合は、雇用が向いています。
一方、成果物単位で依頼できる業務、専門性を一時的に借りたい業務、本人の裁量で進めてもらう方が成果につながる業務は、業務委託のままでもよいでしょう。
7. フリーランスを従業員として雇用する際の注意点
7-1. 雇用契約書を作成し労働条件を明示する
フリーランスを従業員として雇用する場合は、雇用契約書や労働条件通知書を作成し、労働条件を明示します。
明示すべき内容には、契約期間、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、休憩、休日、賃金、退職に関する事項などがあります。2024年4月以降は、就業場所・業務内容の変更の範囲なども明示事項に加わっています。厚生労働省
口頭だけで条件を決めると、入社後に認識違いが生じやすくなります。必ず書面や電磁的方法で条件を残しましょう。
7-2. 業務委託契約との違いを明確にする
業務委託契約から雇用契約へ切り替える場合は、従来の契約をどのように終了するのか、どの業務を雇用契約に移すのかを整理します。
業務委託時代の成果物、未払い報酬、経費、知的財産権、秘密保持義務なども確認しておく必要があります。
特に、雇用開始日以降も一部業務を業務委託として残す場合は、契約ごとの業務範囲を明確に分けることが重要です。
7-3. 労働時間・休日・残業の管理体制を整える
従業員として雇用する以上、企業は労働時間を適切に管理する必要があります。
フリーランス時代は成果物ベースで仕事を依頼していたとしても、雇用後は始業・終業時刻、休憩、休日、時間外労働を管理しなければなりません。残業が発生する場合は、就業規則や36協定、割増賃金の支払いなども確認が必要です。
7-4. 社会保険・雇用保険の加入手続きを確認する
雇用契約に切り替える場合は、勤務条件に応じて社会保険や雇用保険の加入手続きが必要になります。
正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトでも要件を満たせば加入対象になります。特に短時間労働者については、企業規模、週所定労働時間、賃金、雇用見込みなどの要件を確認する必要があります。年金ネット+1
7-5. 給与計算・源泉徴収・年末調整に対応する
フリーランスへの支払いは報酬として処理していた企業でも、雇用後は給与として計算します。
給与計算では、基本給、手当、残業代、社会保険料、雇用保険料、源泉所得税、住民税などを管理する必要があります。また、年末には年末調整の対応も必要になります。
フリーランス時代の請求書払いとは大きく異なるため、経理・人事労務部門と連携して準備しましょう。
7-6. 就業規則や副業ルールを確認する
フリーランスを雇用する際は、自社の就業規則が適用されます。勤務時間、服務規律、情報管理、懲戒、休職、退職、副業・兼業などのルールを事前に説明することが重要です。
特に、フリーランス本人が既存の取引先や副業を継続したい場合は、会社の副業ルールと整合するかを確認します。
7-7. 偽装請負や労働者性の問題に注意する
業務委託契約のまま実態だけが雇用に近い場合、偽装請負や労働者性の問題が生じる可能性があります。
「契約書には業務委託と書いているから大丈夫」と考えるのは危険です。実際の働き方が、会社の指揮命令下での労務提供になっていないかを確認しましょう。
労働者性の判断は個別具体的に行われます。判断が難しい場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談することも有効です。
7-8. 秘密保持・知的財産権・競業避止の取り扱いを整理する
フリーランス時代に作成した成果物と、従業員として作成する成果物では、知的財産権の扱いが異なる場合があります。
また、雇用後は会社の機密情報に触れる機会が増えるため、秘密保持義務や情報管理ルールを明確にする必要があります。
競業避止についても、必要以上に広い制限はトラブルの原因になります。対象業務、期間、地域、取引先の範囲を合理的に設定しましょう。
8. 業務委託のままフリーランスと取引する場合の注意点
8-1. 業務範囲・成果物・納期を契約書に明記する
業務委託のままフリーランスと取引する場合は、業務範囲、成果物、納期、検収方法を契約書や発注書に明記します。
曖昧な依頼は、追加作業、修正範囲、報酬トラブルの原因になります。「何を」「いつまでに」「どの状態で」納品するのかを具体的に定めることが重要です。
8-2. 指揮命令にならないよう業務依頼の方法に注意する
業務委託では、企業は成果物や業務の目的を示すことはできますが、従業員のように日々の働き方を細かく指示することは避けるべきです。
依頼時は、「この成果物を作成してください」「この範囲の業務をお願いします」といった形で、業務内容と成果基準を明確にします。一方で、勤務時間や作業手順を細かく拘束しすぎると、雇用に近い実態になりかねません。
8-3. 報酬額・支払期日・経費負担を明確にする
報酬額、支払期日、支払方法、消費税、振込手数料、経費負担は事前に明確にしましょう。
フリーランス・事業者間取引適正化等法では、発注事業者に対し、業務委託時の取引条件の明示や、給付を受領した日から原則60日以内の報酬支払いなどが義務付けられています。2024年11月1日に施行された同法は、フリーランスに業務委託を行う事業者にとって重要なルールです。厚生労働省+1
8-4. 再委託や他社案件の可否を確認する
フリーランスが再委託を行う可能性がある場合は、事前に可否を決めておきます。再委託を認める場合でも、秘密保持、品質管理、納期管理、個人情報の取り扱いについて条件を定めることが必要です。
また、他社案件の受注可否についても確認しましょう。原則としてフリーランスは複数の取引先と仕事をする立場ですが、競合案件や機密情報の観点から一定の制限が必要な場合もあります。
8-5. フリーランス保護新法など関連ルールを確認する
フリーランス保護新法と呼ばれるフリーランス・事業者間取引適正化等法では、取引条件の明示、報酬支払期日の設定、禁止行為、募集情報の的確表示、ハラスメント対策などが定められています。
発注事業者は、契約書を作るだけでなく、発注、検収、支払い、契約解除、ハラスメント対応まで含めて実務を整備する必要があります。
8-6. 契約更新・解除条件をあらかじめ定める
業務委託契約では、契約期間、更新方法、解除条件、中途解約時の報酬、成果物の扱いを明確にしておきます。
特に、長期間継続している取引では、契約終了時にトラブルが起きやすくなります。自動更新の有無、更新しない場合の通知期限、解除理由、引き継ぎ方法を契約書に定めておくと安心です。
8-7. トラブルを防ぐために定期的に契約内容を見直す
業務内容や取引実態は、時間とともに変化します。最初は単発案件だったものが、いつの間にか常駐に近くなっている場合もあります。
定期的に契約内容と実態を確認し、業務範囲、報酬、納期、作業体制、指揮命令の有無を見直しましょう。実態が雇用に近づいている場合は、契約形態の変更も検討する必要があります。
9. フリーランスから従業員へ切り替える手続きの流れ
9-1. 現在の契約内容と業務実態を確認する
まず、現在の業務委託契約書、発注書、請求書、業務内容、報酬体系、作業実態を確認します。
契約上は業務委託でも、勤務時間の拘束や具体的な指揮命令がある場合は、すでに雇用に近い実態になっている可能性があります。
9-2. 本人と雇用条件をすり合わせる
次に、本人と雇用条件を話し合います。給与、勤務時間、勤務地、雇用形態、業務内容、役職、評価制度、副業可否、入社日などをすり合わせます。
フリーランス本人にとっては、収入構造や働き方が大きく変わります。企業側の都合だけでなく、本人のキャリアや希望も確認することが大切です。
9-3. 業務委託契約を終了または変更する
雇用契約へ切り替える場合、既存の業務委託契約を終了するのか、内容を変更して一部残すのかを決めます。
終了する場合は、未納品の成果物、未払い報酬、経費、秘密保持、知的財産権などを整理します。契約終了の合意書を作成しておくと、後日のトラブル防止に役立ちます。
9-4. 雇用契約書・労働条件通知書を作成する
雇用開始にあたり、雇用契約書や労働条件通知書を作成します。
労働条件は、口頭ではなく書面や電磁的方法で明示します。特に、業務委託時代と条件が変わる部分は丁寧に説明しましょう。
9-5. 社会保険・労働保険の加入手続きを行う
雇用条件に応じて、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの手続きを行います。
加入要件は雇用形態や労働時間によって異なります。正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトでも対象になる場合があるため、事前確認が欠かせません。
9-6. 給与支払い・勤怠管理・評価制度に組み込む
雇用後は、給与支払い、勤怠管理、休暇管理、評価制度、社内システムの権限設定などに組み込みます。
フリーランス時代のように請求書払いを続けるのではなく、給与として適切に処理します。また、業務の成果だけでなく、勤務態度、チーム貢献、役割期待なども評価対象になります。
9-7. 入社後の業務範囲や責任を再確認する
入社後は、業務範囲や責任を改めて確認します。フリーランス時代と同じ業務を担当する場合でも、従業員としての責任や関わり方は変わることがあります。
上司、同僚、関係部署との役割分担を明確にし、期待値のズレを防ぎましょう。
10. フリーランスと従業員に関するよくある質問
10-1. フリーランスは会社の従業員として働ける?
働けます。フリーランスとして活動していた人が、企業と雇用契約を結び、正社員、契約社員、パート・アルバイトなどの従業員になることは可能です。
ただし、雇用契約に切り替える場合は、労働条件の明示、社会保険・労働保険、給与計算、就業規則の適用などが必要になります。
10-2. フリーランスを業務委託のまま常駐させても問題ない?
常駐そのものが直ちに問題になるわけではありません。ただし、勤務時間や勤務場所を厳格に拘束し、会社の指揮命令下で働かせている場合は、労働者性が問題になる可能性があります。
業務委託のまま常駐してもらう場合は、業務範囲、成果物、裁量、報酬、指揮命令の有無を明確にする必要があります。
10-3. フリーランスに勤務時間を指定すると違法になる?
勤務時間を指定しただけで直ちに違法とは限りません。打ち合わせ時間や納期管理のために一定の時間を指定することはあります。
ただし、毎日の始業・終業時刻を会社が管理し、遅刻や早退を従業員のように扱う場合は、雇用に近い実態と見られる可能性があります。
10-4. フリーランスを雇用すると社会保険は必要?
雇用形態や勤務条件によっては必要です。正社員はもちろん、契約社員、パート、アルバイトでも、所定労働時間や所定労働日数、企業規模などの要件を満たせば健康保険・厚生年金保険の対象になります。年金ネット+1
雇用前に、加入要件を確認しておきましょう。
10-5. フリーランスと契約社員の違いは?
フリーランスは、企業と業務委託契約を結ぶ独立した事業者です。契約社員は、企業と有期の雇用契約を結ぶ従業員です。
契約社員は会社の指揮命令を受け、労働法上の保護を受けます。一方、フリーランスは原則として自分の裁量で業務を行い、労働法上の従業員向け保護は当然には適用されません。
10-6. フリーランスが正社員になると確定申告は不要?
正社員としての給与だけであれば、多くの場合は会社の年末調整で所得税の精算が完了します。ただし、副業収入、事業所得、不動産所得、医療費控除、ふるさと納税の控除申告などがある場合は、確定申告が必要になることがあります。国税庁
フリーランス時代の売上がある年に正社員へ切り替えた場合は、その年の確定申告が必要になる可能性が高いため注意しましょう。
10-7. 業務委託から雇用へ切り替えるタイミングは?
業務委託から雇用へ切り替えるタイミングは、業務の継続性が高くなったとき、会社の指揮命令が必要になったとき、社内情報へのアクセスが増えたとき、本人が安定した働き方を希望したときなどです。
また、実態がすでに従業員に近い場合は、早めに契約形態を見直すべきです。契約書と働き方のズレを放置すると、労務トラブルにつながる可能性があります。
まとめ
フリーランスは、原則として企業の従業員ではなく、業務委託契約などに基づいて仕事を行う個人事業主・外部パートナーです。
しかし、契約書上は業務委託であっても、実態として会社の指揮命令下で働き、勤務時間や場所を拘束され、労働時間に対して報酬が支払われている場合は、労働者と判断される可能性があります。
企業がフリーランスを従業員として雇用する場合は、雇用契約書や労働条件通知書の作成、社会保険・労働保険の手続き、給与計算、勤怠管理、就業規則の適用などを整える必要があります。
一方、業務委託のまま取引を続ける場合は、業務範囲、成果物、納期、報酬、支払期日、契約更新・解除条件を明確にし、指揮命令関係にならないよう注意することが大切です。フリーランス・事業者間取引適正化等法への対応も欠かせません。
フリーランスと従業員の違いを正しく理解し、契約内容と実際の働き方を一致させることが、企業と働き手の双方にとって安心できる関係づくりにつながります。

