フリーランス月収80万の手取りはいくら?税金・保険料・年収別の計算方法を解説
はじめに
フリーランスで月収80万円を達成すると、「年収にすると960万円だからかなり余裕がある」と感じやすい一方で、実際の手取りは税金・保険料・経費によって大きく変わります。会社員の給与と違い、フリーランスの月収80万円は「額面給与」ではなく、基本的には事業の売上です。そのため、所得税、住民税、個人事業税、国民健康保険料、国民年金保険料、場合によっては消費税まで自分で管理する必要があります。
結論からいうと、フリーランス月収80万円の手取りは、税金・保険料を月割りした後で約55万〜65万円がひとつの目安です。ただし、ここから事業経費を支払う場合、生活費に回せる実質的な手残りは40万円台後半〜50万円台前半になることもあります。この記事では、フリーランス月収80万円の手取りを、税金・保険料・経費・年収別のシミュレーションを交えて解説します。
1. フリーランス月収80万円の手取りはいくら?
1-1. 月収80万円の手取り目安は約55万〜65万円
フリーランスの月収80万円は、年間売上にすると960万円です。税金や社会保険料を差し引いた後の手取りは、前提条件によって変わりますが、月55万〜65万円前後が目安になります。
ただし、この「手取り」は、売上から税金・保険料を差し引いた金額を月割りしたものです。パソコン代、通信費、外注費、交通費、会計ソフト代、自宅兼事務所の家賃按分などの経費をさらに支払う場合、自由に使える実質手取りは下がります。
たとえば、月収80万円でも経費が月5万円の人と月20万円の人では、課税所得も生活に残るお金も変わります。フリーランスの手取りを考えるときは、「税金・保険料を引いた後の手取り」と「経費も引いた後の実質手残り」を分けて考えることが重要です。
1-2. 年収960万円の場合の年間手取りシミュレーション
以下は、月収80万円・年収960万円のフリーランスについて、一定の前提を置いた概算シミュレーションです。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 年間売上 | 960万円 |
| 年間経費 | 120万円 |
| 青色申告特別控除 | 65万円 |
| 所得の目安 | 775万円 |
| 所得税・復興特別所得税 | 約80万円 |
| 住民税 | 約63万円 |
| 個人事業税 | 約28万円 |
| 国民健康保険料 | 約84万円 |
| 国民年金保険料 | 約22万円 |
| 税金・保険料合計 | 約277万円 |
| 税金・保険料差引後の手取り | 約683万円 |
| 月あたりの手取り | 約57万円 |
| 経費も差し引いた実質手残り | 約563万円 |
| 月あたりの実質手残り | 約47万円 |
このシミュレーションは、単身・扶養なし・40歳未満・東京都新宿区の国民健康保険料率を参考にし、青色申告特別控除65万円を使う前提です。所得税は課税所得に応じて5%〜45%の累進税率が適用され、令和8年分以後の基礎控除については所得金額に応じた改正後の控除額が適用されます。国民年金保険料は令和8年度で月額17,920円です。国税庁+2
国税庁+2
1-3. 会社員の月収80万円とフリーランス月収80万円の違い
会社員の月収80万円は、給与から所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などが天引きされた後に振り込まれます。一方、フリーランスの月収80万円は、多くの場合「売上」です。売上から経費を払い、確定申告を行い、所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料などを自分で納付します。
また、会社員は健康保険料や厚生年金保険料を会社と折半しますが、フリーランスは国民健康保険料と国民年金保険料を自分で負担します。法人化して役員報酬を受け取る場合は社会保険に加入することになりますが、個人事業主のままでは原則として国民健康保険と国民年金です。
会社員の額面80万円とフリーランスの売上80万円は、同じ「80万円」でも意味が違います。フリーランスの場合は、売上の全額を生活費に使えるわけではありません。
1-4. 手取り額が人によって変わる主な理由
フリーランス月収80万円の手取りが人によって変わる理由は、主に次のとおりです。
まず、経費の金額が違います。エンジニアやWebライターのように経費が少ない業種もあれば、広告費、外注費、仕入れ、機材費が多い業種もあります。経費が増えると所得は下がるため税金は減りますが、現金支出も増えるため、生活に残るお金が増えるとは限りません。
次に、所得控除が違います。扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除、iDeCoの掛金などによって課税所得が変わります。
さらに、住んでいる自治体によって国民健康保険料が変わります。たとえば東京都新宿区では、令和8年度の国民健康保険料は医療分・支援金分・介護分・子ども・子育て支援金分に分かれ、所得割率や均等割額、賦課限度額が設定されています。国民健康保険料は自治体や年齢、世帯人数によって大きく変わるため、手取り計算では特に注意が必要です。新宿区役所
2. フリーランス月収80万円の手取り計算に必要な項目
2-1. 売上・収入
フリーランスの手取り計算は、まず売上を把握するところから始まります。月収80万円なら、12か月継続した場合の年間売上は960万円です。
ただし、売上が毎月安定して80万円とは限りません。案件の終了、単価変更、稼働日数の増減、入金遅れなどによって、実際の年間売上は変動します。手取りを正確に見積もるには、月単位ではなく年単位で売上を把握することが大切です。
2-2. 経費
経費とは、事業のために必要な支出です。フリーランスの場合、通信費、サーバー代、クラウドツール代、会計ソフト代、打ち合わせ交通費、書籍代、セミナー代、外注費、自宅兼事務所の家賃・光熱費の一部などが代表例です。
ただし、生活費やプライベートの支出は経費にできません。家事上の費用は必要経費にならず、仕事と生活の両方に関係する家事関連費は、業務上必要な部分を明確に区分できる場合に限り、その部分だけを必要経費にできます。国税庁
2-3. 所得税
所得税は、売上から経費や青色申告特別控除、各種所得控除を差し引いた「課税所得」に対してかかる国税です。所得税は累進課税で、課税所得が大きくなるほど税率が上がります。国税庁の速算表では、課税所得に応じて5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%の税率が設定されています。国税庁
月収80万円・年収960万円のフリーランスでは、経費や控除の状況にもよりますが、課税所得が数百万円台後半になることが多く、所得税だけで数十万円から100万円前後になるケースがあります。
2-4. 住民税
住民税は、都道府県民税と市区町村民税を合わせた地方税です。所得割は前年の所得に応じて課税され、東京都の場合は都民税4%、区市町村民税6%の合計10%が基本です。均等割は定額で課税され、令和6年度からは森林環境税も個人住民税均等割とあわせて課税されています。東京都税務局
フリーランスの場合、住民税は確定申告後、翌年度に自治体から納付書が届くのが一般的です。会社員時代のように毎月給与天引きされないため、納付時期にまとまった資金が必要になります。
2-5. 個人事業税
個人事業税は、一定の法定業種に該当する個人事業主にかかる地方税です。東京都の場合、個人事業税には年間290万円の事業主控除があり、事業を行った月数が12か月の場合は290万円が控除されます。東京都税務局
多くのフリーランス業種では税率5%が使われることが多いですが、業種によって税率や課税対象が異なります。また、個人事業税の計算では、所得税の青色申告特別控除とは扱いが異なる点にも注意が必要です。
2-6. 消費税
消費税は、すべてのフリーランスが必ず納めるわけではありません。原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合は、一定の場合を除き消費税の納税義務が免除されます。ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは、基準期間が1,000万円以下でも納税義務が免除されないことがあります。国税庁+1
また、インボイス発行事業者として登録を受けると、課税事業者として消費税の申告が必要になります。月収80万円の場合、年間売上は960万円なので「売上1,000万円以下だから必ず消費税なし」と考えがちですが、インボイス登録の有無や過去の売上によって扱いが変わります。国税庁
2-7. 国民健康保険料
フリーランスの国民健康保険料は、前年所得、世帯人数、年齢、自治体の料率によって決まります。会社員の健康保険と違い、会社負担分はありません。
月収80万円クラスのフリーランスでは、国民健康保険料が年間70万〜100万円前後になることもあります。40歳以上65歳未満の場合は介護分も加わるため、40歳未満より高くなります。自治体ごとの計算方法を必ず確認しましょう。
2-8. 国民年金保険料
国民年金保険料は、所得に関係なく原則として定額です。令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円で、年間では215,040円です。付加保険料を納める場合は、月額400円が追加されます。年金ポータルサイト
会社員の厚生年金と比べると、国民年金だけでは将来の年金額が少なくなりやすいため、iDeCo、小規模企業共済、国民年金基金などで老後資金を補うことも検討したいところです。
3. フリーランス月収80万円の手取り計算方法
3-1. 売上から必要経費を差し引く
最初に行うのは、年間売上から必要経費を差し引くことです。
たとえば、月収80万円で年間売上960万円、経費が月10万円なら、年間経費は120万円です。この場合、売上から経費を引いた金額は840万円です。
計算式は次のとおりです。
年間売上960万円 − 年間経費120万円 = 事業利益840万円
ここでいう事業利益は、税金計算の出発点になります。
3-2. 所得控除を差し引いて課税所得を出す
青色申告をしている場合、要件を満たせば最大65万円の青色申告特別控除を使えます。65万円控除を受けるには、複式簿記などの要件に加え、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存が必要です。国税庁+1
先ほどの例では、事業利益840万円から青色申告特別控除65万円を差し引くと、所得は775万円になります。
さらに、所得税の計算では基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などを差し引きます。令和8年度税制改正では、所得税の基礎控除の引上げが行われ、令和8年分以後の所得税に適用されます。国税庁+1
3-3. 所得税・住民税を計算する
所得税は、課税所得に税率をかけ、速算表の控除額を差し引いて計算します。復興特別所得税もあわせて計算します。
住民税は、所得税とは控除額が異なる場合があります。おおまかには、前年の所得から住民税の所得控除を差し引き、所得割10%と均等割などを加えて計算します。
所得税と住民税は似ていますが、計算時期と控除額が異なります。所得税はその年の所得に対して確定申告で精算し、住民税は前年所得をもとに翌年度に課税されます。
3-4. 保険料・年金を差し引く
次に、国民健康保険料と国民年金保険料を差し引きます。月収80万円クラスでは、国民健康保険料の負担が大きくなりやすいです。
国民年金保険料は定額ですが、国民健康保険料は所得に連動します。自治体によって所得割率や均等割額、上限額が違うため、同じ年収960万円でも住んでいる地域によって手取りが変わります。
3-5. 最終的な手取り額を算出する
最後に、売上から税金・保険料を差し引くと、税金・保険料控除後の手取りが出ます。さらに経費を差し引くと、生活費や貯蓄に回せる実質手残りがわかります。
月収80万円・経費月10万円の例では、税金・保険料を差し引いた手取りは月約57万円、経費まで差し引いた実質手残りは月約47万円です。
フリーランスの手取り計算では、「売上」「所得」「課税所得」「手取り」「実質手残り」を混同しないことが大切です。
4. 経費別に見る月収80万円フリーランスの手取りシミュレーション
4-1. 経費が月5万円の場合の手取り
月収80万円、年間売上960万円、経費が月5万円の場合、年間経費は60万円です。この場合、所得が高くなるため税金・保険料も増えます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 年間売上 | 960万円 |
| 年間経費 | 60万円 |
| 税金・保険料合計 | 約302万円 |
| 税金・保険料差引後の月手取り | 約55万円 |
| 経費も差し引いた月の実質手残り | 約50万円 |
経費が少ないと事業効率は高い一方で、課税所得が大きくなるため税負担も重くなります。
4-2. 経費が月10万円の場合の手取り
経費が月10万円の場合、年間経費は120万円です。月収80万円フリーランスの標準的なシミュレーションとしては、このあたりがイメージしやすいでしょう。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 年間売上 | 960万円 |
| 年間経費 | 120万円 |
| 税金・保険料合計 | 約277万円 |
| 税金・保険料差引後の月手取り | 約57万円 |
| 経費も差し引いた月の実質手残り | 約47万円 |
税金・保険料を引いた後の手取りは約57万円ですが、経費も含めて考えると、生活費に回せる金額は約47万円です。
4-3. 経費が月20万円の場合の手取り
経費が月20万円の場合、年間経費は240万円です。外注費や広告費、機材費が多い業種では、この程度の経費になることもあります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 年間売上 | 960万円 |
| 年間経費 | 240万円 |
| 税金・保険料合計 | 約224万円 |
| 税金・保険料差引後の月手取り | 約61万円 |
| 経費も差し引いた月の実質手残り | 約41万円 |
経費が増えると税金・保険料は減りますが、実際の支出が増えるため、生活に残るお金は少なくなります。「経費を増やせば節税になる」と考えるだけでなく、キャッシュが残るかどうかを重視しましょう。
4-4. 経費率によって手取りがどれくらい変わるか
月収80万円のフリーランスでは、経費率が低いほど所得が高くなり、税金・保険料が増えます。一方、経費率が高いほど税金は減りますが、支出そのものが増えるため、実質手残りは減ることがあります。
重要なのは、「税金を減らすこと」ではなく「手元に残るお金を増やすこと」です。不要な支出を経費にして税金を減らしても、支出額以上に節税できるわけではありません。月収80万円を安定して維持するには、経費の使い方を投資と浪費に分けて考える必要があります。
4-5. 経費にできるもの・できないもの
経費にできるものは、事業に直接関係する支出です。たとえば、仕事用PC、モニター、ソフトウェア、通信費、取材交通費、打ち合わせ費、事業用書籍、セミナー代、外注費、広告宣伝費などは経費になりやすい項目です。
一方、生活費、プライベートの食事代、趣味の買い物、家族旅行、自分への給与は原則として経費にできません。自宅兼事務所の家賃や光熱費、通信費などは、事業利用分を合理的に按分できる場合に限って経費計上します。国税庁も、家事関連費については業務上必要な部分を明確に区分できる場合に限り必要経費になるとしています。国税庁
5. 年収別に見るフリーランスの手取り早見表
5-1. 年収600万円の手取り目安
年収600万円のフリーランスの場合、経費率15%、青色申告65万円、単身・扶養なしの前提では、税金・保険料差引後の手取りは年約467万円、月約39万円が目安です。経費も差し引いた実質手残りは年約377万円、月約31万円前後です。
5-2. 年収800万円の手取り目安
年収800万円では、同じ前提で税金・保険料差引後の手取りは年約593万円、月約49万円が目安です。経費も差し引いた実質手残りは年約473万円、月約39万円前後です。
5-3. 年収960万円の手取り目安
年収960万円、つまり月収80万円の場合、経費率15%の前提では、税金・保険料差引後の手取りは年約694万円、月約58万円です。経費も差し引いた実質手残りは年約550万円、月約46万円前後です。
5-4. 年収1,000万円の手取り目安
年収1,000万円になると、税金・保険料差引後の手取りは年約719万円、月約60万円が目安です。経費も差し引いた実質手残りは年約569万円、月約47万円前後です。
年収1,000万円を超えると消費税の課税事業者になる可能性を意識する必要があります。基準期間や特定期間の課税売上高、インボイス登録の有無によって消費税の扱いが変わるため、売上が1,000万円前後になったら早めに確認しましょう。国税庁+1
5-5. 年収1,200万円の手取り目安
年収1,200万円では、経費率15%の前提で税金・保険料差引後の手取りは年約849万円、月約71万円が目安です。経費も差し引いた実質手残りは年約669万円、月約56万円前後です。
この水準になると、所得税率、住民税、国民健康保険料、消費税、法人化の検討など、税務上の論点が増えます。節税策も複雑になるため、税理士に相談する価値が高くなります。
5-6. 月収80万円前後の手取り比較
| 月収 | 年収 | 税金・保険料差引後の月手取り | 経費差引後の月実質手残り |
|---|---|---|---|
| 70万円 | 840万円 | 約52万円 | 約41万円 |
| 80万円 | 960万円 | 約58万円 | 約46万円 |
| 90万円 | 1,080万円 | 約64万円 | 約51万円 |
この表は、経費率15%、青色申告65万円、単身・扶養なし、40歳未満を前提にした概算です。実際の手取りは、経費、所得控除、自治体、年齢、インボイス登録、扶養家族の有無によって変わります。
6. フリーランス月収80万円で注意すべき税金・保険料
6-1. 所得税は累進課税で増える
所得税は累進課税です。所得が増えるほど、税率の高い部分が増えていきます。月収80万円のフリーランスは、経費や控除によっては所得税率20%または23%のゾーンに入ることがあります。
ただし、所得税は所得全体に一律で高い税率がかかるわけではありません。課税所得の階段ごとに税率が変わり、速算表では税率と控除額を使って計算します。国税庁
6-2. 住民税は翌年に請求される
住民税は前年の所得をもとに翌年度に課税されます。フリーランスになった初年度に「思ったより税金が少ない」と感じても、翌年に住民税の納付書が届いて驚くことがあります。
月収80万円を達成した翌年は、住民税だけで数十万円規模になる可能性があります。特に、会社員から独立した直後は、前年の給与所得に対する住民税と、フリーランスとしての税金・保険料が重なることがあるため注意が必要です。
6-3. 国民健康保険料は自治体によって異なる
国民健康保険料は自治体ごとに計算方法が異なります。所得割、均等割、平等割、賦課限度額などの設計が地域によって違うため、同じ所得でも保険料が変わります。
東京都新宿区の令和8年度の国民健康保険料率を見ると、医療分、後期高齢者支援金分、介護分、子ども・子育て支援金分に分かれ、それぞれ所得割率や均等割額、賦課限度額が設定されています。40歳以上65歳未満は介護分も加わるため、保険料が上がります。新宿区役所
6-4. 個人事業税が発生する業種がある
個人事業税はすべてのフリーランスに必ずかかるわけではありません。法定業種に該当する場合に課税されます。デザイナー、コンサルタント、請負業など、実務上は対象になりやすい業種もあります。
東京都では個人事業税の事業主控除が年間290万円とされているため、事業所得が一定額を超えると個人事業税が発生しやすくなります。東京都税務局
6-5. インボイス制度により消費税負担が増える場合がある
インボイス発行事業者として登録すると、課税事業者として消費税の申告が必要になります。売上1,000万円以下の免税事業者であっても、取引先との関係でインボイス登録を選ぶと、消費税の納税や帳簿管理の負担が発生します。国税庁+1
月収80万円の年収は960万円なので、売上だけを見ると1,000万円未満です。しかし、単価アップや副収入によって年収1,000万円を超えると、将来的に消費税の課税事業者になる可能性が高まります。
6-6. 予定納税・中間申告に備える必要がある
所得税には予定納税があります。予定納税は、前年分の所得金額や税額などをもとに計算した予定納税基準額が15万円以上となる人が、所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する制度です。国税庁
月収80万円のフリーランスでは、予定納税の対象になる可能性が高いです。確定申告時だけでなく、年の途中にも納税資金が必要になるため、毎月の売上から税金用の資金を分けておきましょう。
7. フリーランス月収80万円の手取りを増やす方法
7-1. 青色申告特別控除を活用する
手取りを増やす基本は、青色申告特別控除を活用することです。青色申告では、要件を満たせば最大65万円の控除を受けられます。65万円控除を使うには、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付し、期限内に申告することに加え、e-Taxまたは電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。国税庁+1
月収80万円クラスでは、65万円の控除による税負担軽減効果は小さくありません。白色申告のままなら、早めに青色申告へ切り替える価値があります。
7-2. 経費を正しく計上する
必要な経費を漏れなく計上することも重要です。通信費、クラウドツール代、書籍代、セミナー代、打ち合わせ費、仕事用備品などを正しく記録しましょう。
ただし、節税目的で不要な支出を増やすのは本末転倒です。経費を使えば税金は減りますが、支出そのものも増えます。手取りを増やすには、売上につながる投資と不要な浪費を分けることが大切です。
7-3. 小規模企業共済を活用する
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業経営者のための退職金制度です。掛金は月額1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、掛金の全額を所得控除できます。共済サポート navi+1
月収80万円のフリーランスは会社員の退職金がないため、将来資金を準備しながら節税できる制度として検討する価値があります。
7-4. iDeCoを活用する
iDeCoは、老後資金を自分で積み立てる私的年金制度です。フリーランスなどの国民年金第1号被保険者も加入対象です。iDeCo公式サイト
掛金は所得控除の対象になるため、所得税・住民税の負担軽減につながります。ただし、原則として老後まで引き出せないため、生活防衛資金を確保したうえで活用しましょう。
7-5. ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、寄附金控除を活用できる制度です。自己負担2,000円で返礼品を受け取れる仕組みとして知られていますが、実際の控除上限額は所得、家族構成、社会保険料、他の控除によって変わります。
フリーランスの場合、所得が年末まで確定しにくいため、上限額を多めに見積もりすぎないことが重要です。確定申告が必要な人は、ワンストップ特例ではなく確定申告で寄附金控除を申告します。
7-6. 家族への給与・専従者給与を検討する
家族が実際に事業を手伝っている場合は、青色事業専従者給与を検討できることがあります。青色事業専従者給与として認められるには、生計を一にする配偶者その他の親族であること、一定期間を超えて事業に専ら従事していること、届出書を提出していることなどの要件があります。国税庁
実態がない給与や、業務内容に見合わない高額な給与は認められません。家族に給与を支払う場合は、仕事内容、勤務実態、金額の妥当性を記録しておきましょう。
7-7. 税理士に相談して節税漏れを防ぐ
月収80万円になると、税金・保険料・消費税・法人化・経費計上・控除制度など、判断すべき項目が増えます。自己流で申告すると、控除漏れや経費計上ミスが起きることがあります。
税理士に相談すれば、青色申告、消費税、インボイス、法人化のタイミング、小規模企業共済やiDeCoの活用などを総合的に検討できます。顧問契約までは不要でも、年1回の申告相談やスポット相談を活用するだけで、手取り改善につながることがあります。
8. 月収80万円のフリーランスは法人化すべき?
8-1. 法人化を検討する年収の目安
月収80万円、年収960万円は、法人化を検討し始める水準です。ただし、年収だけで判断するのは危険です。見るべきなのは、売上ではなく利益、所得、経費、今後の売上見込み、消費税、社会保険料、家族構成です。
一般的には、利益が安定して800万〜1,000万円を超えるようになったら、法人化の試算をしてみる価値があります。月収80万円でも経費が多く利益が少ない場合は、法人化しても手取りが増えないことがあります。
8-2. 個人事業主と法人の税金の違い
個人事業主は、所得税が累進課税で、住民税、個人事業税、国民健康保険料などがかかります。法人は、法人税、法人住民税、法人事業税などがかかり、代表者に役員報酬を支払うと、代表者個人には給与所得として所得税・住民税・社会保険料がかかります。
中小法人の法人税率は、年800万円以下の所得部分について15%の軽減税率が適用され、年800万円超の部分は23.2%です。中小企業庁+1
8-3. 法人化で手取りが増えるケース
法人化で手取りが増える可能性があるのは、利益が安定して高いケースです。役員報酬を適切に設定し、法人に利益を残すことで、個人の所得税率上昇を抑えられる場合があります。
また、法人では経費計上の幅が広がることがあります。出張旅費規程、役員報酬、退職金設計、生命保険、社宅制度など、個人事業主とは違う設計が可能です。
8-4. 法人化で手取りが減るケース
法人化すると、社会保険加入の負担が発生します。株式会社などの法人事業所は、事業主のみの場合を含めて厚生年金保険の強制適用事業所となります。健康保険・厚生年金保険の加入手続きが必要になり、法人と個人で保険料を負担します。年金ポータルサイト+1
また、法人住民税の均等割、税理士報酬、会計処理の複雑化、登記費用、社会保険手続きの手間も発生します。利益がそれほど大きくない段階で法人化すると、かえって手取りが減ることがあります。
8-5. 法人化する前に確認すべきポイント
法人化する前には、少なくとも次の点を確認しましょう。
売上が今後も安定するか、利益がどれくらい残るか、消費税の課税タイミングに影響があるか、役員報酬をいくらにするか、社会保険料がどれくらい増えるか、法人に残す利益をどう使うか、税理士費用を払ってもメリットがあるかを試算する必要があります。
月収80万円は法人化を検討する入口ですが、必ず法人化すべき水準とは言い切れません。個人事業主のまま節税制度を整えたほうが有利な場合もあります。
9. フリーランス月収80万円で資金管理するコツ
9-1. 税金・保険料分を毎月分けておく
月収80万円のフリーランスは、売上が入った時点で税金・保険料分を別口座に移すのがおすすめです。目安として、売上の25%〜35%程度を税金・保険料用に分けておくと、確定申告や住民税、国民健康保険料、予定納税に対応しやすくなります。
月収80万円なら、毎月20万〜28万円程度を税金用口座に移すイメージです。経費が少ない人ほど税負担が重くなるため、多めに確保しておくと安心です。
9-2. 手取りではなく可処分所得で生活費を考える
フリーランスは、入金額をそのまま生活費に使うと資金繰りが苦しくなります。生活費は、売上ではなく「経費・税金・保険料・将来積立を差し引いた後の可処分所得」から決めましょう。
月収80万円でも、実質手残りが月45万円なら、生活費を45万円ぎりぎりに設定するのは危険です。売上変動や納税、病気、案件終了に備えて、生活費は余裕を持って設計する必要があります。
9-3. 売上変動に備えて生活防衛資金を確保する
フリーランスは、会社員より収入変動リスクが高い働き方です。月収80万円が続いていても、契約終了や単価ダウン、体調不良で収入が下がる可能性があります。
最低でも生活費6か月分、できれば1年分の生活防衛資金を確保しましょう。月の生活費が30万円なら180万〜360万円、生活費が40万円なら240万〜480万円が目安です。
9-4. 確定申告前に慌てない帳簿管理を行う
手取りを正確に把握するには、日々の帳簿管理が欠かせません。レシートや領収書を年末にまとめて整理すると、経費漏れや記帳ミスが起こりやすくなります。
会計ソフトと事業用口座、事業用クレジットカードを連携し、毎月1回は売上、経費、利益、税金見込みを確認しましょう。月収80万円規模になると、帳簿管理の質がそのまま資金繰りに影響します。
9-5. 将来の年金・退職金対策をしておく
個人事業主のフリーランスは、会社員のような厚生年金や退職金がありません。国民年金だけでは老後資金が不足しやすいため、小規模企業共済、iDeCo、国民年金基金、NISAなどを組み合わせて将来資金を準備しましょう。
月収80万円の段階で生活水準を上げすぎると、将来の備えが後回しになります。手取りが増えたタイミングほど、老後資金と事業継続資金を先に確保することが大切です。
10. フリーランス月収80万円の手取りに関するよくある質問
10-1. 月収80万円のフリーランスは高収入?
月収80万円のフリーランスは、高収入の部類に入ります。年収換算で960万円あり、会社員の平均的な給与水準と比べても高めです。
ただし、フリーランスの月収80万円は売上であり、会社員の額面給与とは違います。税金・保険料・経費・将来の退職金準備まで自分で負担する必要があるため、見た目の年収ほど自由に使えるとは限りません。
10-2. 月収80万円なら年収はいくら?
月収80万円が12か月続く場合、年収は960万円です。
計算式は、80万円 × 12か月 = 960万円です。
ただし、フリーランスは案件が途切れたり、稼働日数が変わったりするため、毎月80万円が必ず続くとは限りません。年収を見積もるときは、休暇、病気、契約終了、入金遅れも考慮しましょう。
10-3. 月収80万円で税金はいくらかかる?
月収80万円・年収960万円の場合、経費月10万円、青色申告65万円、単身・扶養なしの前提では、所得税・住民税・個人事業税の合計は約171万円が目安です。ここに国民健康保険料や国民年金保険料を加えると、税金・保険料の合計は約277万円になります。
実際の税額は、経費、所得控除、自治体、年齢、消費税の有無によって変わります。
10-4. 月収80万円で国民健康保険料はいくら?
月収80万円のフリーランスでは、国民健康保険料が年間70万〜100万円前後になることがあります。今回のシミュレーションでは、東京都新宿区の令和8年度料率を参考に、単身・40歳未満・経費月10万円の前提で年間約84万円としました。新宿区役所
40歳以上65歳未満の場合は介護分が加わるため、さらに高くなります。正確な金額は、住んでいる自治体のシミュレーションや納付通知で確認しましょう。
10-5. 月収80万円なら消費税の納税は必要?
月収80万円が12か月続くと年収960万円なので、売上だけを見ると1,000万円未満です。原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、一定の場合を除き消費税の納税義務は免除されます。国税庁
ただし、インボイス発行事業者に登録している場合は、課税事業者として消費税の申告が必要です。また、過去の売上や特定期間の売上によっても判定が変わります。国税庁
10-6. 月収80万円でも手取りが少なくなる理由は?
月収80万円でも手取りが少なくなる主な理由は、経費が多いこと、国民健康保険料が高いこと、住民税が翌年にかかること、予定納税が発生すること、消費税の納税があること、扶養控除などの所得控除が少ないことです。
特に、売上が増えた翌年は住民税と国民健康保険料が大きく増えるため、資金管理をしていないと「売上はあるのにお金がない」という状態になりやすいです。
10-7. フリーランスで月収80万円を維持するには?
月収80万円を維持するには、単価の高い案件を継続して獲得すること、取引先を分散すること、スキルアップを続けること、営業導線を持つことが重要です。
1社依存で月収80万円を達成している場合、その契約が終了すると収入が大きく落ちます。複数の取引先、紹介経路、ポートフォリオ、発信、営業パートナーを持つことで、収入の安定性が高まります。
また、税金・保険料の管理も月収維持の一部です。手取りを把握できていないと、必要な投資や営業活動にお金を回せなくなります。
まとめ
フリーランス月収80万円の手取りは、税金・保険料を差し引いた後で月55万〜65万円前後が目安です。ただし、経費まで考慮した実質手残りは月40万円台後半〜50万円台前半になることがあります。
月収80万円は年収960万円に相当しますが、フリーランスの場合は売上から経費、所得税、住民税、個人事業税、国民健康保険料、国民年金保険料、場合によっては消費税を自分で負担します。会社員の月収80万円とは仕組みが違うため、額面だけで判断しないことが大切です。
手取りを増やすには、青色申告特別控除を活用し、経費を正しく計上し、小規模企業共済やiDeCoなどの所得控除を検討しましょう。月収80万円を超えて安定してきたら、法人化の試算や税理士への相談も視野に入ります。
フリーランスで月収80万円を達成した後は、売上を伸ばすだけでなく、税金・保険料・経費・将来資金を管理することが重要です。手取りを正確に把握し、無理のない生活費と事業投資のバランスを取ることで、安定したフリーランス生活を続けやすくなります。

